財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第10章—3 いざ、ミシガンへ!

2019-01-28 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 何これ? 
 意味不明にもほどがある。いったい全体、私にどうしてほしいの・・・・・・
 そう思った時、便せんの下にもう一枚便せんがあることに気づいた。
 便せんの下の便せんには、こうあった。

ナオミ殿
 孔明の祖父の青龍と申します。
 夢魔がこんなメモが残されていきおった。

コーネリアスはあずからせてもらったわ♥
ミシガン山中で会いましょう♡
どうぞお仲間もご一緒に♥
『惹き付けるもの』ミホシム

     

 コーネリアスとは、孔明のことじゃ。そして、この場所は魔女のマクミラが作った4つのテーマパークのことじゃと思う。
 どうか、孫の眠眠と一緒に孔明を助けてはくれまいか?     祭青龍

 ナオミに迷いはなかった。だが、パートナーには許しを請わなくては。
「決勝戦を辞退してミシガンに行きたいの!」手紙を見せてケイティに頼み込んだ。
「もちろん、かまわない。だけど条件が一つ」
「どんな条件でも飲むわ。それは何?
「私も一緒に行くわ」
「ケイティ・・・・・・私がトラブルに引きつけられるマーメイドとわかって言ってるの?」
「マクミラがらみなら、クリストフだっているでしょ?」
 そうか・・・それならケイティもおいてはいけない。ナオミは、しぶしぶ承諾した。
 全米ディベート選手権決勝戦の結果が棄権によって決まるなど、前代未聞の大事件になりそうだった。それでも、ナンシーがとってくれた飛行機チケットのおかげで、二人はすぐ旅立つことができた。
 デトロイト・メトロポリタン・ウェイン・カウンティ空港に降り立った瞬間、ナオミはマクミラの強い波動を感じた。
 マクミラも、同様だった。
 二人が同時につぶやいた。「あいつがいる・・・・・・」
 ナオミとケイティが気づくと、到着ゲートにはマクミラ、アストロラーベ、スカルラーベ、ジェフの四人が出迎えていた。
「久しぶりね。相変わらずの美しさね」ナオミが、マクミラに話しかける。
「ありがとう。でも、わたしは盲目だからお世辞は返せないと言わなかったかしら?」
「お世辞なら、ケイティに。前回、彼女は闘いの場に居合わせなかったから」
「カンザスの闘いから5年、精神世界の闘いから3年。時の経つのは早いものね」
「無駄話をしてる時間はないわ。わたしは、孔明を助けにあなたご自慢のミシガン山中のテーマパークに行きたいの? パスポートは、ここでいただけるのかしら?」
「条件次第ね」
「条件?」


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第三部闘龍孔明篇 第10章—2 孔明からの召集令状

2019-01-25 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「私たち、この試合勝てますよね?」ナオミが不安を隠すように言った。
 いつもなら、もちろんよと戻ってくる返事がなかった。
「マウスピークス先生、もしかしてあなたの判定では負けですか?」
「ナンシーと呼んで・・・・・・あなたに手紙が来ているの」
「手紙?」
 それは、不吉な真っ赤なエアメールだった。
「ナオミ、日本からのエアメールよ」
 もしかして、孔明! 
 ナオミは、ひったくるように手紙を受け取って封を切った。

ナオミへ
 元気か? 
 もしお前がこの手紙を読んでるなら、オレはちょっとトラブっているってことだ。じいちゃんがどうしても書いておけっていうもんで、しかたなくこの手紙を書いている。
 お前に黙って日本に戻ったことは悪かったと思っている。
 だが、誰もアポロノミカンの予言には逆らえないことは知っているだろ?

  白面の神が黒い龍と出会う刻
  呪われた風が生まれて、多くの命が失われ
  失われた多くの命が、新たな強大な国を生み出す
  黒い龍が青い龍を日が昇る国に送り出す刻
  三角形のパワースポットがその命を守り
  白い龍が生まれ、その家族の命は残酷な運命によって失われて
  青い龍が紅い龍を育てる刻
  操るものが、銀狼の夢に現れ
  天罰を与えるものが、雷獣の夢に現れ
  引きつけるものが、深紅の龍の夢に現れ
  踊り回るものが、目覚めたまま夢見る娘の夢に現れる刻
  鏡が反転して、闘いが始まり
  再び妃が現れ、五人の夢魔が無意識の底に消える刻
  『夢見るもの』が目覚めの刻を迎え
  祭一族の呪いが解ける

 例によって例のごとく、予言の意味はよくわからない。だけど、祭一族の一員としてオレは日が昇る国に戻らなくてはならなかった。
 心配するな。またお前に会える日まで、オレは絶対に負けない。  孔明


     


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第三部闘龍孔明篇 第10章—1 全米ディベート選手権決勝

2019-01-21 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 1996年3月24日の日曜日。ナオミとケイティのチームは聖ローレンス大学を代表して、ノースキャロライナの名門私立ウェイクフォレスト大学にいた。第50回記念全米ディベート選手権に参加していた。
 もしもその年の絶対的優勝候補ノースウエスタン大学を負かすチームがあるとするなら彼女たちだろうと、人々は噂した。他の強豪校もノースウエスタンや聖ローレンス大学と当たることがあれば、一泡吹かせてやろうと「隠し球」を用意していた。
 全米ディベート選手権の歴史上、最も有名な隠し球は、1979決勝で前年度の覇者ノースウエスタン大学と対戦したハーヴァード大学が“ニューケース”と呼ばれる、そのシーズンで一度も使っていない肯定側の案を提示した事件がある。想定外のケースを出された大本命のノースウエスタン大学は、5対0で決勝を落とした。それ以降、強豪チームは全米ディベート選手権でのニューケース対策もしなくてはいけなくなった。
 通常、ディベート大会は金土日曜日の3日をかけて週末に行われることが常である。金土曜日に各4試合の計予選8ラウンドが行われ、日曜日の決勝ラウンドに成績上位16チームが勝ち進む。
 しかしながら、シーズン最後であり同時に最高の権威を持つ全米ディベート選手権だけは異なったシステムを取る。まず木金曜日に各3試合が行われ、土曜日に2試合が行われた後、まず予選全体を通じて8戦全勝、7勝1敗、6勝2敗のチームを選抜し、さらに5勝3敗のチーム同士による追加予選1ラウンドを土曜日夕方に行い決勝に進む16チームを決定するのである。
 この年の予選ラウンドは、包括的な宇宙開発を進めるというケースで圧倒的な強さを誇ったテキサスの古豪ベイラー大学が8戦全勝、本命ノースウエスタン大学が7勝1敗、対抗馬の聖ローレンス大学が6勝2敗の成績を残した。
 ナオミとケイティは、日曜日の準々決勝で火星探検計画を提唱するジョージタウン大学をカウンタープランで下した。準決勝では、ダートマスカレッジとのアイヴィーリーグ対決を制したハーヴァード大学と対戦後、ヤキモキしながら審査結果を待っていた。
 ここで勝利すれば、別ブロックの準決勝カンザス大学対ノースウエスタン大学の勝者との決勝戦に駒を進めることになるのであった。
 ついに、ここまで来たわ。
 ショーン、ジョーディ、待ってて。最高の試合で私たちの4年間を締めくくってみせる。ナオミは、心の中でつぶやいた。
 その時、コーチのナンシー・マウスピークスが青ざめた顔で近寄ってきた。

     


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第三部闘龍孔明篇 序章と第1〜9章のバックナンバー(第二部も読めます)

2019-01-18 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 財部剣人です! 第三部も順調に第9章が終わりました。久し振りにアストロラーベとアフロンディーヌを巡り合わせることができてハッピーです! なお、タイトルは第三部のバックナンバーとなっていますが、下の方に第二部のバックナンバーもありますので、ストーリーが分からなくなっている方はそちらもご覧ください。

「第三部闘龍孔明篇 序章」

「第1章−1 茨城のパワースポット・トライアングル」
「第1章−2 チャイニーズフリーメーソン 洪門」
「第1章−3 「海底」の秘密」
「第1章−4 アポロノミカンの予言
「第1章ー5 太古の龍」 
「第1章-6 神獣たちの闘い」
「第1章-7 龍神対孔明」
「第1章-8  龍が再び眠る時」
「第1章-9 精神世界へ紛れ込む魔性たち」

「第2章−1 四次元空間エリュシオンのゆがみ」
「第2章−2 3つの鏡」
「第2章−3 ヤヌスの鏡と3人の魔王」
「第2章−4 ゲームは変わる」
「第2章−5 パンドラの筺は二度開く」
「第2章−6 魔界の気まぐれ」
「第2章−7 ヤヌスの鏡を閉じる」
「第2章−8 冥界の会議」

「第3章−1 絶対悪」
「第3章− 2 ヴラド・”ドラクール”・ツェペシュの名」
「第3章−3 パラケルススの名」
「第3章−4 神導書アポロノミカン」
「第3章−5 ヴラドとラドウ」
「第3章−6 ヴラド・”ドラクール”・ツェペシュの誕生」
「第3章−7 地獄によって地獄を救う」
「第3章−8 血の契りの儀式」
「第3章−9 エリザードの誕生」

「第4章−1 エリザードの愛と死」
「第4章−2 エリザードの野望」
「第4章−3 愛ゆえに」
「第4章−4 "ドラクール"対エリザード」
「第4章−5 冥主プルートゥの決定」
「第4章−6 ドラクールの願い」
「第4章−7 海神界の議論」
「第4章−8 王子トリトンの決意」

「第5章−1 ナオミの夢」
「第5章−2 ナオミの誕生日」
「第5章−3 ディベートの審査哲学」
「第5章−4 ディベートの審査哲学に関する論争」
「第5章−5 宇宙開発を巡るディベート」
「第5章−6 『地球外知的生物探索』というプラン」
「第5章−7 なぜディベートの試合で勝てないんでしょう?」
「第5章−8 利益と不利益の比較」
「第5章−9 奇跡的リバタルの秘密」

「第6章−1 孔明たちへの襲撃」
「第6章−2 夢の続き」
「第6章−3 青龍と夢魔サマンザ」
「第6章−4 眠眠の夢」
「第6章−5 眠眠の戦い」
「第6章−6 三重の呪い」
「第6章−7 夢魔樹里の決断」
「第6章−8 孔明と眠眠」
「第6章−9 覚醒しながら眠り、眠りながら覚醒する娘」
「第6章−10 深層世界に入る」

「第7章−1 マクミラの不安」
「第7章−2 振り子の原理」
「第7章−3 アウトサイダー」
「第7章−4 アメリカの悪夢」
「第7章−5 冥界の神々降臨」
「第7章−6 輪廻の蛇ウロボロス」
「第7章−7 逃げ出した魔性と魔獣たち」
「第7章−8 魔神スネールの告白」
「第7章−9 ダニエルの復活?」
「第7章−10 ヒエラポリス神殿」

「第8章−1 黒龍対七色の神の化身たち」
「第8章−2 十八般の第二の武器対ドリームカリバー」
「第8章−3 天使たちの夢に潜り込む」
「第8章−4 眠眠対夢魔ヒビキム」
「第8章−5 悪魔姫ドルガ降臨!」
「第8章−6 眠眠対夢魔オーシャム」
「第8章−7 子宮への届く扉」
「第8章−8 惨劇の夜」
「第8章−9 母娘の闘いの末に」
「第8章−10 ミシガン山中への誘い」

「第9章−1 アストロラーベ対さかさまジョージ」
「第9章−2 さかさまジョージの攻撃」
「第9章−3 アフロンディーヌとの再会」
「第9章−4 堕天使ダニエルの復活」
「第9章−5 ダニエル猛攻」
「第9章−6 コールド・デー・イン・ヘル」
「第9章−7 ウロボロスが凍り付く刻」
「第9章−8 絶対悪とは?」
「第9章−9 アズラエルとザキエル」
「第9章−10 善と悪の相対性」


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 第一部と第二部がお読みになりたい方は、以下のリンクをクリックしてください。

  

「第一部 神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ

「第二部 序章」

「第二部 第1章−1 ビックアップルの都市伝説」
「第二部 第1章−2 深夜のドライブ」
「第二部 第1章−3 子ども扱い」
「第二部 第1章−4 堕天使ダニエル」
「第二部 第1章−5 マクミラの仲間たち」
「第二部 第1章−6 ケネスからの電話」
「第二部 第1章−7 襲撃の目的」
「第二部 第1章−8 MIA」
「第二部 第1章−9 オン・ザ・ジョブ・トレーニング」

「第二部 第2章−1 神々の議論、再び!」
「第二部 第2章−2 四人の魔女たち」
「第二部 第2章−3 プル−トゥの提案」
「第二部 第2章−4 タンタロス・リデンプション」
「第二部 第2章−5 さらばタンタロス」
「第二部 第2章−6 アストロラーベの回想」
「第二部 第2章−7 裁かれるミスティラ」
「第二部 第2章−8 愛とは何か?」

「第二部 第3章−1 スカルラーベの回想」
「第二部 第3章−2 ローラの告白」
「第二部 第3章−3 閻魔帳」
「第二部 第3章−4 異母兄弟姉妹」
「第二部 第3章−5 ルールは変わる」
「第二部 第3章−6 トラブル・シューター」
「第二部 第3章−7 天界の議論」
「第二部 第3章−8 魔神スネール」
「第二部 第3章−9 金色の鷲」

「第二部 第4章−1 ミシガン山中」
「第二部 第4章−2 ポシー・コミタータス」
「第二部 第4章−3 不条理という条理」
「第二部 第4章−4 引き抜き」
「第二部 第4章−5 血の契りの儀式」
「第二部 第4章−6 神導書アポロノミカン」
「第二部 第4章−7 走れマクミラ」
「第二部 第4章−8 堕天使ダニエル生誕」
「第二部 第4章−9 四人の魔女、人間界へ」

「第二部 第5章−1 ナオミの憂鬱」
「第二部 第5章−2 全米ディベート選手権」
「第二部 第5章−3 トーミ」
「第二部 第5章−4 アイ・ディド・ナッシング」
「第二部 第5章−5 保守派とリベラル派の前提条件」
「第二部 第5章−6 保守派の言い分」
「第二部 第5章−7 データのマジック」
「第二部 第5章−8 何が善と悪を決めるのか」
「第二部 第5章−9 ユートピアとエデンの園」

「第二部 第6章−1 魔女軍団、ゾンビ−ランド襲来!」
「第二部 第6章−2 ミリタリー・アーティフィシャル・インテリジェンス(MAI)」
「第二部 第6章−3 リギスの唄」
「第二部 第6章−4 トリックスターのさかさまジョージ」
「第二部 第6章−5 マクミラ不眠不休で学習する」
「第二部 第6章−6 ジェフの語るパフォーマンス研究」
「第二部 第6章−7 支配する側とされる側」
「第二部 第6章−8 プルートゥ、再降臨」
「第二部 第6章−9 アストロラーベ、スカルラーベ、ミスティラ」
「第二部 第6章ー10 さかさまジョージからのファックス」

「第二部 第7章ー1 イヤー・オブ・ブリザード」
「第二部 第7章ー2 3年目のシーズン」
「第二部 第7章ー3 決勝ラウンド」
「第二部 第7章ー4 再会」
「第二部 第7章ー5 もうひとつの再会」
「第二部 第7章ー6 夏海と魔神スネール」
「第二部 第7章ー7 夏海の願い」
「第二部 第7章ー8 夏海とケネス」
「第二部 第7章ー9 男と女の勘違い」

「第二部 第8章ー1 魔女たちの二十四時」
「第二部 第8章ー2 レッスン会場の魔女たち」
「第二部 第8章ー3 ベリーダンスの歴史」
「第二部 第8章ー4 トミー、託児所を抜け出す」
「第二部 第8章ー5 ドルガとトミー」
「第二部 第8章ー6 キャストたち」
「第二部 第8章ー7 絡み合う運命」
「第二部 第8章ー8 格差社会−−上位1%とその他99%」
「第二部 第8章ー9 政治とは何か?」
「第二部 第8章ー10 民主主義という悲劇」

「第二部 第9章ー1 パフォーマンス開演迫る」
「第二部 第9章ー2 パフォーマンス・フェスティバル開幕!」
「第二部 第9章ー3 太陽神と月の女神登場!」
「第二部 第9章ー4 奇妙な剣舞」
「第二部 第9章ー5 何かが変だ?」
「第二部 第9章ー6 回り舞台」
「第二部 第9章ー7 魔女たちの正体」
「第二部 第9章ー8 マクミラたちの作戦」
「第二部 第9章ー9 健忘症の堕天使」

「第二部 第10章ー1 魔女たちの目的」
「第二部 第10章ー2 人類は善か、悪か?」
「第二部 第10章ー3 軍師アストロラーベの策略」
「第二部 第10章ー4 メギリヌ対ナオミと・・・・・・」
「第二部 第10章ー5 最初の部屋」
「第二部 第10章ー6 ペンタグラム」
「第二部 第10章ー7 ナオミの復活」
「第二部 第10章ー8 返り討ち」
「第二部 第10章ー9 最悪の組み合わせ?」

「第二部 第11章ー1 鬼神シンガパウム」
「第二部 第11章ー2 氷天使メギリヌの告白」
「第二部 第11章ー3 最後の闘いの決着」
「第二部 第11章ー4 氷と水」
「第二部 第11章ー5 第二の部屋」
「第二部 第11章ー6 不死身の蛇姫ライム」
「第二部 第11章ー7 蛇姫ライムの告白」
「第二部 第11章ー8 さあ、奴らの罪を数えろ!」
「第二部 第11章ー9 ライムの受けた呪い」

「第二部 第12章ー1 ライムとスカルラーベの闘いの果て」
「第二部 第12章ー2 責任の神の娘」
「第二部 第12章ー3 リギスの戯れ唄」
「第二部 第12章ー4 唄にのせた真実」
「第二部 第12章ー5 アストロラーベの回想」
「第二部 第12章ー6 勝負開始」
「第二部 第12章ー7 逆襲、アストロラーベ!」
「第二部 第12章ー8 スーパー・バックドラフト」
「第二部 第12章ー9 さかさまジョージの魔術」

「第二部 最終章ー1 魔神スネール再臨」
「第二部 最終章ー2 ドルガのチョイスはトラジック?」
「第二部 最終章ー3 ナインライヴス」
「第二部 最終章ー4 ドルガの告白」
「第二部 最終章ー5 分離するダニエル」
「第二部 最終章ー6 ドルガの回想」
「第二部 最終章ー7 ドルガの提案」
「第二部 最終章ー8 ドルガの約束」
「第二部 最終章ー9 ドルガの最後?」

「第二部 エピローグ 神官マクミラの告白」

第三部闘龍孔明篇 第9章—10 善と悪の相対性

2019-01-14 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「完全な悪とは、社会など気にせず欲望を押し通せる存在だ。本来、自由が人間にとって最も大切なはずだ。天真爛漫、自由奔放というやつだ。しかし、世の中を見てみろ。やれ生まれだ、育ちだ、権利だ、義務だと意味のわからないものでがんじがらめにされた上、国同士もルールを押しつけ合って、戦争をする自由さえない。挙げ句の果てに貧困と戦争があふれる世界で人間は苦しんでいる。おいらは、人間たちを救済したいんだ。おいらが絶対悪として『死の天使アズラエル』になった時に目指すのは2つしかルールがない世界だ」
「2つのルール?」
「1つ目は『なんでもやりたいことはやり放題』。2つ目は『その機会は全員に公平でないといけない』。
人間が大好きなルールだろ? 機会均等だけど結果は自己責任。善と悪の概念が入れ替わっても、何にも変わらないはずだ。逆に、よろこぶ奴がふえるんじゃないのか」
「2つ目のルールが保証されるなら、1つ目のルールも悪くないわね。だけど、人間はこうも言うわ。世の中のすべては不公平(Everything is unfair in this world.)。結局は、力がすべてに優先すれば『マッド・マックス』の世界が出現するだけじゃない?」
「ほう、思ったより頭がいいな。おいらは闘いたい奴同士が闘えて、盗みたい奴が盗める世界にしたいだけだ。だけど、おいらは慈悲深い。弱い者イジメは、2番目のルールに抵触する。だから、どちらかと言えば『北斗の拳』みたいなもんか? 絶対悪を目指せば、それは善になってしまう。今の嘘で固めた不公平な善が支配する世界より絶対悪が支配する世界の方が、人間は幸せになれる。脱出した魔性たちだ。あいつ等は、魔界でさえ受け入れられなかったはみ出しものだ。だから絶対悪としてのおいらを新世界の神として抱くことで、自らの信念を認めさせたいのだ」
「信念? 魔性たちにそんなものがあるの。気に入らないわ。ダニエルからお前のような詭弁家が生まれるなんて」
「勘違いするな。おいらは、天使ペリセリアス、堕天使ダニエル、神官マクミラの血、アポロノミカンの魔力、粉々になったさかさまジョージと輪廻の蛇の生粋の部分から生まれたんだ」
「やっと分かったわ、あなたが虫の好かない理由が。私の一番イヤな部分を受け継いでいるのね」
「わかってないな。おいらは、最高の部分を受け継いだのさ。すべての存在の生粋部分だけを抽出してブレンドしたと言っただろう? さあ、もうサービスタイムは終了だ。魔性たちの呼ぶ声が聞こえている。おいらもゲームの一部だ。じゃあ、ミシガン山中に行くことにする。これが、本当の最後のサービスだ。いいか、命が惜しいなら追いかけてくるな。太古の戦士たちが、集合的無意識の中で目覚めつつある。さらに現世の勇者たちが新たなゾンビ戦士になるなら、お前たちにもはや戦う術などない」そう言うと、絶対悪は姿を消してしまった。
 なぜ、最後にこんなことを・・・・・・
 不思議そうな顔をしているマクミラを見て、アストロラーベがつぶやいた。裏の裏は表と言うことか。

     

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第三部闘龍孔明篇 第9章—9 アズラエルとザキエル

2019-01-11 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「ずいぶんと大きく出たものね。でも、怒り、ねたみ、そねみ、中傷に専念しながら自称善を気取る悪党共と無力な偽善者が、無益な争いを続ける人間たちの世界にあなたに何ができるというの?」
「逆に聞くが、人間にとって人生とは何だ? 人生など、自由でありたいという主体とそれを縛ろうとする社会とのあつれきがすべてじゃないか。おいらこそがすべてからの自由。悪を肯定する同士は、だましあい、裏切りあい、殺し合えばいい。だが、同時に善を肯定する者にも偽善は許さない」
「そんなことが、あなた一人でできると思っているの?」
「それが、どうやらおいら一人じゃないようだ。すでに人間界には神界からお前たちが降臨してるし、精神世界にも魔界から魔性たちが来ている。おいらがどちらの側に付くかで、勝敗が決するとは思わないか? そもそも人間などに善悪の判断能力などあるか? あいつらの定義では善とは、悪とは何なのだ? 結局、やつらにあるのは自分に都合のよい判断基準だけではないか。例えば、人間はなぜウソ、おべっか、気休めを言うのだ? そして、なぜそれらを信じるのだ?」
「たしかに、人間はそんなことに頼るしかない弱い存在だが、お前、いったい何を考えている?」
「元冥界最高位の神官でも知らなかったか・・・・・・一度誕生すれば絶対悪には2つのチョイスがある。それこそが究極のチョイス。1つは、おいらが『平和の天使ザキエル』となる道だ。その場合、正義感あふれるものと合体し助け合いとレスペクトにあふれた世界を目指す。だが、こっちは選びたくない。実質的なおいらにとっての死だからな。もう1つは、おいらが『死の天使アズラエル』になる道だ。その場合、おいらは目的のためには手段を選ばぬものと合体して、欲望と闘いにあふれた世界を目指す」
「私には、すでに後者の世界になってるように思えるけどね」
「そうかもしれないな。だけど、現状と後者には大きな違いがある」
「それは?」
「善と悪なんて相対的なもんさ。究極の存在は自分を定義する必要はない。対極がおいらを定義してくれる。神々が自らを正しいと信じているように、おいらも自らを正しいと信じている。悩む必要さえない。対極にある存在がまちがっている限り、それに敵対するが故に自らは正しい」
「詭弁ね。自らの正義を自明として論を展開し、証明を放棄するなんて最低の人間がしていることと変わらない」
「心外だな、マクミラ。しかたない。頭の悪いお前のため説明してやろう。逆説的ではあるが、完全なる善を目指せば悪にならざるをえず、完全なる悪を目指せば善になってしまうんだ」
「おもしろいわね。もっと続けて」
「完全な善を目指そうとすれば、どんな過去の過ちも罰せよという理屈になる。例えば、物心つかない時期にしたことで誰かを死刑にできるか? 先祖がしたことで子孫を死刑にできるか? それができないなら、なあなあですますことになるが、被害者感情とかがおさまらないのが人間だ。だから人間の目指す善など、悪が存在する以上はすべてが中途半端になる。完全な善を目指せば、善を突き抜けて悪になってしまう宿命だ」
「それなら、完全な悪を目指したらどうなるの?」

      


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第三部闘龍孔明篇 第9章—8 絶対悪とは?

2019-01-07 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「おまたせ〜! やっと表に出てこられたぜ。いままでは眺めるだけだったからな。おいらは、絶対悪。名前はまだない」
 その姿は後ろが見えるほど透け透けで、その言葉はデジタルサウンドが奏でる楽器のように響いた。
「これが『切り裂かれた天使が純粋な悪を生み出し』の意味か」アストロラーベがつぶやく。
「おい、陰の薄い奴、誰もお前なぞ待ってはいなかったぞ。それはともかく、何をしたくて出て来た? 名前はまだないとか、野良猫じゃあるまいし。だいたい、絶対悪がお前の名前じゃないの?」冷静に戻ったマクミラが尋ねた。
「よくぞ聞いてくれた。おいらは絶対悪という名前というより、そういう存在なんだ。今、地上は中途半端な悪であふれてる。ついでに中途半端な偽善にも。このまま偽善者と善人の皮を被った悪人が諍いを続けても、何もいいことはない。だから天使の力と堕天使の力、ヴァンパイアの血、マクミラ、お前がおせっかいにも見せたアポロノミカンの力、トリックスターの力まで混ざったおいらがケリをつけてやる。神にも、悪魔にさえも想像出来なかった善と悪の両極を兼ね備えた存在だ。歴史上、これだけの何でも有りはどこにもないよ」
「輪廻の蛇を忘れてない?」
「フン、たしかにそうだ、ウロボロスも入っている」
「なかなか楽しそうじゃない」マクミラが続けた。「でも、どうやって諍いを終わらせるの?」
「お前が2年間もダニエルをほったらかしにしてくれたおかげで、考える時間はくさるほどあった。おいらも神々のゲームに参加させてもらう」
「2年間考えたって言うのも、まんざらはったりじゃなそうね」
「お前たちは知らないだろうが、絶対悪という存在は悪魔なんかじゃない。おいらはどちらかといえば天使の範疇に入る存在だ」
「ふ〜ん、私は冥界では聞いたことがなかったけどね。それじゃ、いったいお前は敵なの、それとも味方なの?」
「そんなもん、両方に決まっているだろ。正義とは、つねに自分が正しいと思う者の側にあるが、絶対悪の誕生は最高神たちにとってさえ極秘事項だ。あいつらはトリックスター誕生にさえ右往左往しかねない小心者ぞろいだ。何が、世界が作られ、線引きがされ、範疇が定義され、階層が建造されるやいなや、原始的パフォーマーが規範を破るため入り込み、タブーを犯し、すべてをひっくり返すだ? しょせんトリックスターなど天と地という二項対立世界を自由に行き来し既存秩序を破壊するだけの道化師にすぎない」
「トリックスター以上のことをしでかしてみせると?」
「言うまでもない。おいらの支配下では、これまでの理(ことわり)のすべてがひっくり返り、すべての存在が天国の到来に感謝するだろうさ。いいか、おいらこそがチョイス・イズ・トラジックの化身だ!」

     

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第三部闘龍孔明篇 第9章—7 ウロボロスが凍り付く刻

2019-01-04 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「よし、これで心置きなくコールド・デー・イン・ヘルを使える」

 紐育の精霊たちよ、しばしその歩みを止めよ
 紐育の精霊たちよ、しばし新しい波の筺の屋上に集え
 紐育の精霊たちよ、しばし聖バレンタインの世の冷気を集めたまえ
 紐育の精霊たちよ、奇跡の一夜の贈り物をさかさまジョージに与えん
 紐育の精霊たちよ、硫黄にまみれた地獄の業火が凍る日を顕わさん
 紐育の精霊たちよ、汝らが世紀の一瞬の参加者と目撃者たらんことを祈る
 コールド・デー・イン・へール!

 呪文が終わった瞬間、アストロラーベの吐く息が白くなった。
 みるみるうちにニューヨーク中の冷気がタワーの屋上に集まって、紐状に固まり始めた。まるで荒れ狂う吹雪が、自らの意思を持ったかのようになった。数十本の冷気の紐がさかさまジョージに絡みつき始めた。それは2匹の大蛇がもがけばもがくほど強くからんでいった。すべての紐が大蛇を包んだ次の瞬間、一気に紐が弾けて絶対零度の空間が生まれた。そこにあったのは氷の彫刻と化したウロボロスたちの姿であった。
「今だ、ダニエル!」アストロラーベが叫んだ。
「地獄で後悔しろ、ミックスト・ブレッシング!」
 右半身が金色の鷲ペルセリアス、左半身が暗黒の墮天使になったダニエルの右眼から単なる堕天使時代と比べて数十倍の威力の白い熱線が、左目からは黒い熱戦が発せられた。
 黒い熱戦が黒色火薬のようにさかさまジョージを幾重にも包むと、今度は白い熱戦が時限爆弾のように発火した。煙と暴風雨が渦巻く中、巨大な氷像と化していたウロボロスたちにまずヒビが入り、次に粉々に砕け散った。
 輪廻の蛇ウロボロスならば、魔術によるほとんどの攻撃にも耐えてしまう。だが、いったんコールド・デー・イン・ヘルにより絶対零度にまで冷やされた直後、ミックスト・ブレッシングによる高熱を浴びたため彼らの身体は膨張と収縮が短時間で繰り返されたために微細な亀裂が無数に生じていた。亀裂が入った身体に天使と悪魔の両方の破壊力を持つミックスト・ブレッシングを受けたことで、修復不可能なほどバラバラにちぎれてしまったのである。
「やったぞ! 皆、大丈夫か?」アストロラーベが声をかける。
「不覚を取り申し訳ない。もう影響はございませぬ」スカルラーベが答える。
「私も大丈夫。それより・・・・・・」
 マクミラが答えた後、ダニエルの姿を捜す。
 グ、グ、グア〜。空中でもがき苦しみダニエルがいた。
 金色の光と暗黒の固まりが絡み合い、ゆっくりと精神的存在であるアストラル・ライトの絶対悪と連続体で肉を持った存在のクリストフに分かれていった。クリストフはぐったりしているが、やたら元気な奴が空中に浮いていた。

     


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