財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

ブログ開設950日のご挨拶とHappy Holloween!

2012-10-30 15:08:46 | 私が作家・芸術家・芸人
 語り部のアヴァンです!

 「閉じ籠もり」騒動などあり、気がついたらブログ開設から955日も経っていました。恒例のご挨拶が遅くなってすいません。おかげさまで950日時点での累計訪問者90805人、一日当たりの平均訪問者数も95.5人で、もう少しで累計訪問者数10万人突破、1日当たりの平均訪問者数100人も手が届きそうなところまで来ました。本当に、つたないブログを読んでいただいている読者の方には感謝です!

 明日10月31日は、ハロウィーンですね~。この日はケルト人の1年の終りで、夜に死者の霊が家族を訪ねたり、精霊や魔女が出てくると信じられていました。これらから身を守るために人々は仮面を被り、魔除けの焚き火を用意しました。これに因んで、その夜に、カボチャ(本来、スコットランドではカブの一種の「スィード (swede) 」を用いる)をくりぬいた中に蝋燭を立てて「ジャック・オー・ランタン (Jack-o'-lantern) 」を作り、魔女やお化けに仮装した子供達が近くの家を訪ねて「トリック・オア・トリート(Trick or treat. おもてなしないとイタズラしちゃうぞ~)」と唱えるのがハロウィーンです。



 日本でも、だんだんダークファンタジーをこの時期に楽しむ風習が出来てきたのか、ここ最近、「旅するマーメイドの神話」第三部第4章のご訪問者の数もおかげさまで好調です。第3章は、自分で書いていても「ここまで暗くするんかい!?」という感じでご訪問者の方の数も、着実に減っていました(涙)。でも、乗って書いた第4章になってからご訪問者の方がまた増えだしたので、「やはり読んでいる人にもわかるんだな~」と不思議な感じです。第5章は、まだ書きかけのため、第4章が終わったらしばらくイメージソング集のアップになります。冬から始まる後半部分にも、どうか請うご期待!


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モンゴルのご報告

2012-10-23 15:05:53 | 私が作家・芸術家・芸人
 語り部のアヴァンです!

 お約束からずいぶん時間がすぎてしまったのですが、モンゴルのご報告です。
 モンゴルは、草原地帯というイメージだったのですが、現在では資源バブルに湧いており、韓国資本、中国資本がどんどん入ってきて、経済が本当に活気づいているという印象です。
 料理は、肉料理が多く、お肉が苦手な人にはちょっとツライかもしれません。いわゆるジンギスカン鍋のような料理は、そうしたお店を探さなくてはいけないくて、どんどんいろいろな種類のお肉を焼いて食べるというスタイルのお店が多かったような気がします。
 でも、空気が乾燥していたらしく、ホテル2泊目に喉をやられてしまって帰ってしばらく風邪気味でした。さらに、ご報告のように免疫が落ちていたらしく、その後、「はやり目」にまでなってしまいました。
 朝青龍がタレントになっていて、ジンギスカンに扮してTVコマーシャルに出演していて驚きました。
 現地では、日本人と結婚した白鵬の人気がないという話は少し残念でしたが、概して、日本人には親切にしてくれる人が多く、また行ってみたいと思いました。
 ウランバートル空港の売店で買ったモンゴルの美少女戦士の壁掛けです!


     


 いつかこんな衣装の登場人物も「旅するマーメイドの神話」に登場させてみたいと思います! どうか請う、ご期待!


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アストロラーベのご紹介によるオリオン座流星群♪

2012-10-21 11:44:00 | 私が作家・芸術家・芸人
 我が名は、アストロラーベ。

 なに、誰だと!
 ゴホン、ゴホン・・・
(気を取り直して)そうか、最近、出番がなかったからな・・・
 冥界最大のネクロマンサーであり、冥界親衛隊の軍師である。
 なに、それでもわからない?
 しかたない。第二部の主人公、冥界の元最高位の神官マクミラの兄である。それなら、わかるだと! 我がプ、プ、プライドが砕け散る・・・

          

(再び気をとりなおして)大サービスで、オリオン座流星群の解説におりて来てやったぞ。
 深夜まで月齢6の月が西の空にあるので、オリオン座が昇るのもやや遅い時間になる。月の光を目に入れないようにしながら、空を広く見渡すがよい。

     

 オリオン座右腕あたりに放射点を持つオリオン座流星群の活動が、ピークになるはず。ハレー彗星の通り道を毎年この時期に地球が通過し、残されていたちりが地球の大気にとびこんで、100km前後上空で発光して見える。

 愚かな人間たちよ、今から願い事を用意して、夜起きていられるように昼寝の準備をせよ! 


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大分、回復しました

2012-10-18 18:16:47 | 私が作家・芸術家・芸人
 語り部のアヴァンです!

 先日、かかった「はやり目」ですが、ほとんどハレが引きました。明日、眼科の先生に会って許可が出れば、来週からは仕事復帰です。

 本当は、モンゴル出張時の飛行機の中で見た映画などご報告したいのですが、1987年のロサンゼルスを舞台にした「ロック・オブ・エイジス」、若き日のリンカーン大統領が吸血鬼を狩る映画「エイブラハム・リンカーン:ヴァンパイア・ハンター」など、見たのですがすべて中途半端でご報告ができません(涙)。ウランバートルと成田は直行便もあるのですが、月水金と週3回しか飛んでいないため、成田からソウル、ソウルからウランバートルと飛行時間が短すぎて、全部見ることができませんでした。

 「旅するマーメイドの神話」第三部は第4章で一区切りとなるので、その後は前半部分のイメージソング集をしばらくアップさせていただいて、また冬に戻って来ることも考えています。どうか請うご期待!


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引きこもり、ならぬ閉じ籠り!?

2012-10-15 16:33:54 | 私が作家・芸術家・芸人
 語り部のアヴァンです!

 最近、「旅するマーメイドの神話」第三部第3章思いっきりダークなエピソードですいまっしぇん(なぜか武田鉄矢風に)!?  第2章の魔王たちのエピソードでかなり不安だったのですが、第3章の“ドラクール”のエピソードでかなり訪問者数を減らしているのは私です・・・

 “ドラクール”のエピソードはマクミラが「一度、こっそりと覗き見て以来、二度と覗くまいと決心した」父親の生き地獄なので、かなり暗いです。ただし、ここは全体の中でも核心に触れる部分なので、飛ばすことはできません。さらに第4章でまだ暗いエピソードが続きますので、あまりダークファンタジーがお好きでない方は飛ばして第5章から読んでいただいた方がよいかも? 第5章からは、ナオミが再登場して以前のトーンに戻ります。第6章以降は、まだ書いていないのでトーンがわかりません。ただし、プロットは作ってあります。

 実は、昨日すごい目やにが出たので、今日、眼科に行ったところ「はやり目」なので1週間、仕事に行くな!と言われてしまいました・・・ トホホ状態ですが、最近、2週間とか3週間とか休み無しで働いていたので、神様がくれた休暇だと思って、ここで身体を休めたいと思います。

 皆さんも働き過ぎにどうかご注意を!

     


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第三部孔明篇序章と第一・二・三章へのリンク集

2012-10-14 12:34:33 | 私が作家・芸術家・芸人
 語り部のアヴァンです。

 「旅するマーメイドの神話」第三部孔明篇のこれまでのバックナンバーのリンクを作ってみました。よろしければ、ご利用ください。

(序章)
(第1章-1 茨城のパワースポット・トライアングル)
(第1章-2 洪門)
(第1章-3 「海底」の秘密)
(第1章-4 アポロノミカンの予言)
(第1章-5 太古の龍)
(第1章-6 神獣たちの闘い)
(第1章-7 龍神対赤龍)
(第1章-8 龍が再び眠る時)
(第1章-9 精神世界に紛れ込む魔性たち)
(第2章-1 3つの鏡)
(第2章-2 3人の魔王)
(第2章ー3 プルートゥの提案)
(第2章-4 パンドラの箱は二度開く)
(第2章-5 ゲームは変わる)
(第2章-6 魔界の気まぐれ)
(第2章-7 ヤヌスの鏡を閉じる)
(第2章-8 冥界の会議)
(第3章-1 絶対悪)
(第3章-2 ヴラド・“ツェペシュ”・ドラクールの名)
(第3章-3 パラケルススの名)
(第3章-4 アポロノミカン)
(第3章-5 ヴラドとラドウ)
(第3章-6 ヴラド・“ドラクール“・ツェペシュの誕生)
(第3章-7 地獄によって地獄を救う)
(第3章-8 血の契りの儀式)
(第3章-9 エリザードの誕生)



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祝、山中伸弥教授ノーベル医学生理賞受賞!

2012-10-09 08:10:05 | 私が作家・芸術家・芸人
 語り部のアヴァンです!

 山中先生、やりましたね~。お祝いに、「旅するマーメイドの神話」第一部人魚ナオミ篇第7章のドクトール・マッド登場のエピソードを再送させていただきます。アメリカ留学中に、利根川進先生がノーベル賞を受賞して、元気をいただいたことを思い出します。
 本当に、今回は日本全体が元気をいただきました。心からお祝いを申し上げます。

________________________________

 その日、マクミラはミシガン州に出かけた。
 まだ30才代半ばの若さでゾンビーランド責任者に就任した、魔道斉人(まどう・さいと)博士と話し合いを持つためだった。かつては日本のある旧帝国大学で将来を嘱望される天才医学者だったが、「フランケンシュタイン計画」として知られる禁断のプロジェクトをおこなって大学を追われることになったのであった。
 彼は、学内の倫理委員会の許可なしに、脳死患者の肉体で人体実験を繰り返した。もっとも脳死は人間の死であると主張して、それは「人体実験」とは言えないと自己弁護したらしいが・・・・・・

 魔道は、中央棟の理事長室で待っていた。
 ジェフとマクミラは、三匹の盲導犬、キルベロス、カルベロス、ルルベロスを連れて、エレベータを出るとドアをノックした。
「プリーズ、カムイン! 」
 男が、完璧な英語で答える。
「おそくなってごめんなさい。こちらから遅い時間を指定しておいて」
 マクミラのハスキーボイスが、日本語で答えた。
 黒革のハーフコートに、レザージーンズを着た男が振り返った。

第7章―2 魔道とマッド

 うっかりすると殺し屋と間違われかねないアウトフィットだったが、知的な顔立ちを見ればカレッジプロフェッサーのように見えないこともなかった。
「こちらこそ、辺鄙な山奥にご足労願って恐縮です。日本語がお上手ですね。一度、早い時期に貴方に会っておきたかったもので」
魔道を一目見た3匹が、うなり始めた。
「ヌーヴェルバーグ嬢は、どこにいらっしゃるにも3匹の盲導犬(盲導犬はSeeing Eye dog)をお連れと聞いていましたが、どうやらどう猛犬(seemingly excited dog)の間違いでしたか?」
「いいえ、盲導犬はつねに『親愛なる犬』ですわ。どうぞ、マクミラとお呼びください」
「わかりました。マクミラ、ここからは英語でお話ください。以前、ボルチモアで5年研究生活を送ったので、私もいちおうのコミュニケーションには困りません」
「いちおうのコミュニケーションですか・・・・・・」
 一瞬、マクミラは冥界での神官時代を思い出した。
 静かにするよう指示されて、今はおとなしくしているが、3匹はうなるのを止めただけでいつでも飛びかかれる姿勢を取っている。

「さっそく聞き難いことを伺いますが、アカデミックの世界を追われることになったいきさつをお聞かせいただければと思います」
「ご遠慮なく。長い話で、あなたが退屈しなければよろしいのですが」
「いいえ、これ以上興味深い話はないはずですわ・・・・・・フランケンシュタイン計画」
 マクミラの口調が急に変わって、言った。
「だけどその前に、あなたの本当の人格に出てきてもらいましょうか」
「私の本当の人格とは?」
「わたしの心眼はごまかせないわ。他人の節穴はごまかせてもね。それにキル、カル、ルルもわかっているようだわ」
 再び、うなり始めた3匹の盲導犬がだんだんと興奮していく。
「何をおっしゃっているのか、私にはわかりかね・・・・・・ウッ、頭が痛い・・・・・・」
 突然、苦しみだした魔道の顔がゆがむ。
フッフッフッ! 最初からわかっていたな、とさっきとは別人の声が答えた。
 整えられていた髪が逆立ち、両眼が鬼火のように燃え上がったかと錯覚するほど、力に満ちあふれた男がそこにいた。
「儂が魔道の影の人格、ドクトール・マッドじゃ!」
「こうこなくては。ミシガンくんだりまで来たかいがないわ。さあ、革フェチさん。いったい魔道とマッドとどちらがフェッチ(註、fetchは、死の直前に現れるといわれる生き霊)か教えてもらおうかしら」
 青白い顔のまま、みるみるマクミラの唇に赤みが射してくる。
 その時だった。キル、ルル、カルの周りに小さい爆弾でも破裂したような音がして、3匹が1匹の強大な魔犬ジュニベロスに変化した。

第7章―3 ネクローシスとアポトーシス

「儂の力を試してみるか?」
「あなた、不思議な波動ね。やさしさや憐れみを持たないくせに、悪意や傲慢さもない。そのくせ、とてつもない凶暴さを秘めている。上陸寸前の台風、爆発寸前の活火山、あるいはメルトダウンが始まりかけた原子力発電所とでも言えばよいかしら?」
「マクミラよ、気をつけて口を聞くがよい。今の儂は、脳髄のパワーが全開になっておる。かつて冥界の神官だったかどうか知らぬが、最高の英知を獲得した儂に対して気安い物言いではないか」
「気をつけるのはどちらの方? どちらにしても、人間の英知などたかが知れているのではないかしら」
 そう言いながら、マクミラが背中から真っ赤な二条の鞭を取り出した。
 彼女とマッドは、一触即発の雰囲気だった。
 ジュニベロスの三首の口からもゆっくりと、だが着実に瘴気(しょうき)がはきだされて周りにただよっていく。
 ジェフが、毅然と言う。「ドクトール、無礼ではないか? 初対面のレディに。これ以上、失礼があるなら私とケルベロスの息子たちが相手をするぞ」
 今にも飛びかからんばかりのジュニベロスに気圧されたのか、マッドが言う。
「ふん、久しぶりに表に出たところにケンカ腰で、カッとなっただけじゃ。お転婆娘が鉾を収めるなら、儂にも、大人げない態度をとる理由はない」
「いいでしょう。わたしは、本性を隠して様子を見ようとする態度が気に入らなかっただけ。納得できるプランを提示するなら、ヌーヴェルバーグ財団は望むとおりの支援をしましょう。お互い駆け引き無しと、いこうじゃないの」
 ジェフは、やれやれという心境だった。大切なマクミラに、こんなところでケガでもされては冥主プルートゥに会わせる顔がない。
「よかろう。話してやろうではないか。フランケンシュタイン計画、ふざけた名前がマスコミによってつけられたものだが。あれは今から11年前だった・・・・・・」

第7章―4 フランケンシュタイン計画

 儂が目指していたのは、死人を別の存在として生き返らせることだったのじゃ。雷の晩につなぎ合わせた死体に電流を流すといった、非科学的方法ではない。
 儂が目をつけたのは、アポトーシスと呼ばれるいらなくなった細胞が消えて、新しい細胞に取って変わられる過程じゃった。たとえば、オタマジャクシのしっぽが無くなってカエルの足が生えたり、醜い芋虫が美しい毒蛾に変態するのがそうじゃ。
 人間も例外ではない。
 胎児も、子宮の中で数千万年の人類の進化の歴史を繰り返す。受精した卵は、まず海洋生物に近い姿から、魚、両生類、爬虫類の姿を経て、だんだんとカバのような哺乳類の姿を経て、やっと人間らしい形になっていく。
生物の細胞は、アポトーシスと呼ばれる死を繰り返している。ネクローシスという病気によって細胞群の集団内で起こる受動的な崩壊過程と違って、アポトーシスは、細胞群の中で散発的に起こる古い細胞が新しい細胞に取って代わられる「積極的な細胞死」の自壊過程と考えられる。なぜなら身体は、細胞が別の形態に変化するのでなく、新たな細胞にとって変わられることでしか変態できないのじゃ。ほとんどの学者は、そのため不要になった細胞が自発的に死んで、きちんと除去されることが必要だと考えた。
 しかし、儂は、これを本末転倒ではないかと疑った。
 細胞死を発生させるのは、内部、まして外部からの誘因ではなく、変態パターンの必然性があるのではないかと考えた。ネクローシスが、エネルギーを長い時間をかけて漸次進行するのに対して、アポトーシスは、短期間に段階的に進行するしエネルギーを必要とする。必要な新細胞が生まれるために、古いじゃまな細胞を除去する一つの連続したプロセスこそアポトーシスなのではないか。それは単なる細胞死でなく、新旧細胞交代の一つのつながったプロセスではないのか? たとえば、カエルに足が生えるにはオタマジャクシのしっぽがなくならなければいけない理由があるのではないか?
この新旧細胞の交代メカニズムを解明すれば、人間を人間以前だった形態に戻したり、さらに人間を次の段階に変態させることが可能ではないかと考えたのじゃ」

第7章―5 ゾンビーソルジャー計画

「人間の身体は60兆個の細胞からなっているが、細胞の種類はたったの二百種類しかない。それが連絡を取り合って、秩序の取れた状態を生みだしている。
 不要になったり、身体に害を与えるため「死ね」という指令を受けた細胞は、あらかじめ増殖や分化と同じように、すでに遺伝子に書き込まれている「自殺」のプログラムを起動させる。
 身体自体が一つの組織で、組織のトップにいて指令を出すのが脳だとしたら、まだ我々の知らない指令系統が存在するのではないか? なぜなら人間の脳で、使われているのは10から30パーセントにすぎないと言われている。
 もし残りのプログラムを活用できるように、かかっているプロテクターをはずせれば・・・・・・人間を従来の科学では想像もできない存在に作り替えられるのではないか?
 まさに神の業の領域だ。
 若かった儂は、このアイディアに夢中になった。
 儂は何日も大学病院に泊まり込んでは、寝食を忘れてアポトーシスのコントロールに取り組んだ。研究は、遅々として進まなかった。仲間たちからも、そんなものが見つかればノーベル医学賞ものだよ、と冷やかされた。
 あっという間に5年が過ぎていた。
 嘲笑った学者の中には、30億あるDNAの遺伝子情報を読み込む「ヒトゲノム計画」を提唱する愚か者もいたが、あんなものは砂漠にまぎれこんだ一粒のダイヤを捜すのにも等しい。だいたい、ヒトゲノムの内、95パーセントはがらくたで、遺伝子を司るのは5パーセントほどしかないし、あいつらには読み込んだDNAをどのように操作するかの指針さえもない。
 だいたい60兆もの細胞のどこを、どの程度まで差し替えることができると思っているのか? 早い時期の病気の診断や予防が可能になるというが、あんなものは保険業界や医療業界が得をするだけの代物に、巨額の税金をつぎ込むという暴挙を国家レベルで競っておるだけではないか。
 そんな時だった。ヌーヴェルバーグ財団が資金を出すから、米国の名門私立大学の医学研究所にこないかと誘われたのは。儂は、天にも昇る心地だった。すでに日本の徒弟制度的な人間関係の中で独創的な研究を続けるのには疲れ果てていた。
 開闢以来の秀才だった儂に、大学院時代こそ周りも期待したが、いつまでたっても出口どころか入り口さえ見えてこない研究に没頭する儂を、彼らは陰でマッド・サイエンティストと呼んでいたのじゃ」

第7章―6 転機

「6年前に魔道が、ニューヨーク州アルバニーの邸宅でヌーヴェルバーグ・シニアに会ってから儂の人生が始まった。
 彼は、魔道に生命のすべての謎を解き明かす神導書アポロノミカンを見せようと言った。ヌーヴェルバーグが神導書を開いた瞬間、彼の頭の中のプロテクターが吹っ飛んで脳髄が100パーセントの割合で機能しだした。しかし、それは一人の人間が受けとめられる限度を遙かに超えていた。
 その瞬間、誰かが叫んでいた。
 だが、その叫びは、魔道自身のものじゃった。
知ってしまった知識の重みに耐えかねて、魔道は倫理や道徳心といったくだらない感傷を越えた存在、第二の人格であるこの儂、ドクトール・マッドを生みだした。儂は、魔道が寝静まっては起き出して脳死状態の死体を使っては、さまざまな実験を続けた。儂は、一度、活動停止した脳を再起動させて、ねらった命令を細胞に与えるさまざまな薬品や手術を試した。
 もう少しで、研究の糸口がつかめそうになった時じゃった。学内から情報が漏れて、儂は身を隠さねばならなくなって、今お主の目の前にいるというわけじゃ。
 マクミラよ、これがここまでの経歴に関する話よ。
 研究の目的?
 儂が研究したいのは、ゾンビーソルジャー計画じゃ。
 人体をさまざまに変化させたゾンビ戦闘員を作ってみたいのじゃ。思考しないから恐れも知らず、傷ついても戦闘能力を失わず、最初から死んでいるから殲滅されるまで闘い続ける。彼らは、理想的なコンバッタントだとは思わないかね?
 すでに気づいているのだろうが、人類の最大の脅威は人口問題だ。資源、難民、環境、国境を巡る問題さえそうだが、現代社会がかかえる重要な問題は、突き詰めればすべて人口が原因になっている。
 必死になって寿命を延ばそうとしている先進国をよそに、途上国では内戦、貧困、飢餓、伝染病によって毎日数千、数万の人間たちが死んでいる。ゾンビーソルジャーは、期待通りに世界に混乱を招いてくれるだろう。人間が死ねば死ぬほど彼らの潜在的なメンバーが増えるとなれば、一石二鳥だとは思わないかね? 
 これ以上、あなたに協力するにはひとつ条件がある。
 なに、実験結果の公表は無理だと?
 バカを言っては困る。世俗的な名誉に対する興味など、とうに失っておるわ。儂が興味を持っているのは、自分の理論が正しいのか否かを検証することだけだ。
 研究には完璧を期したい。ついては、中西部の極右団体を使ってパイロット・スタディを行いたい。アポロノミカンには、こんな一節があった。

 ・・・・・・こころざしをおなじゅうする者
 南風の地につどいて戦いの宴に身をささげよ
 十字架の戦士たちと競う瞬間
 炎がすべてを包み
 死への旅路が終わりをつげ
 はじまりの旅が幕を切って落とされる・・・・・・

 どうじゃ、カンザス州のどこぞの大学のキャンパスで試してみては?」


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モンゴルに来ています!

2012-10-05 01:56:35 | 私が作家・芸術家・芸人
 語り部のアヴァンです!

 今日は、仕事でモンゴルに来ています。木曜日は直行便がなくて、ソウル経由だったのですが、少し疲れました。ここで半分だけ完成している「旅するマーメイドの神話」第三部第5章を完成させる皮算用です。モンゴルについては、ご報告できるほどまだ見ていないので、お話はまた後で。

 ところで、昨日はアヴァンの物語の館「旅するマーメイドの神話」
ブログの開設から 930 日でしたが、以下のように2回目の訪問者数200名を達成することができました。はげみになります。読んでいただいている皆様、本当にありがとうございます。

 ヴラドが"ドラクール"に変わるエピソードは、実はかなり乗って書いたので本当にマンモスうれぴ~です、って今頃、のりピー? この部分は、第3章と第4章でじっくり書いていますので、どうか請うご期待!

10月4日のアクセス数
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「超心理学ー封印された超常現象の科学」を読みました!

2012-10-02 14:49:26 | 私が作家・芸術家・芸人
 語り部のアヴァンです!
 
 先日、ちょっとしたきっかけで石川幹人著『超心理学ー封印された頂上現象の科学』(紀伊国屋書店)を読みました。
 
     

 第I部 超心理学の実態
  第1章 テレパシーの証拠をつかんだ
  第2章 米軍の超能力スパイ作戦
  第3章 超能力の実在をめぐる懐疑論争
 第II部 封印する社会とメディア
  第4章 奇術師たちのアリーナ
  第5章 超能力と称する人々
  第6章 マスメディアの光と影
 第III部 封印は破られるか
  第7章 心の法則をもとめて
  第8章 予知ー物理学への挑戦
  第9章 意識に共鳴する機械
  第10章 霊魂仮説について考える

 上記のような構成になっているのですが、ちょうどヴラドとラドウのエピソードで世界霊魂に書いたばかりだったので、第10章に関して興味深く思いました。
 表紙カバーの裏に、「証明なくしては何物をも容認せず。アプリオリーに何物をも否定せず」という宮城音弥先生『神秘の世界』からの引用があり、なつかし~と思いました。
 アヴァンは、科学を肯定してオカルトを否定するよりも、両者には実はあまり本質的な違いはないのではないか?、あるいは両者はどこかでつながっているのではないか?と考えている方なので、そうしたことも「旅するマーメイドの神話」の登場人物たちのセリフを通じていつか考えみたいと思っています。


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