財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第1章−4 堕天使ダニエル(再編集版)

2020-04-27 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「う~ん、いいにおいがする。まずは腹ごしらえといくか」グリッドが突然気づいたように言った。
 他の二匹もうなずくと飛び跳ねるやいなやストリート・ギャングたちを頭からバリバリ食べ出す。メンバーたちはあまりの恐怖に腰が抜けている。
「おい、お前の相手はこっちだ!」ダニエルはヒードンに言い放つと、セラフィム(織天使)だけが持つ6枚の羽を広げて飛び上がった。ただし、羽は金色ではなく、暗い黒色だったが。
「なんだ、このオーラは! まさかセラフィムが地上に? なぜ黒い羽?」
 ダニエルは、マクミラを傷つけると言ったヒードンを許せなかった。
「地獄で後悔しろ! ミックスト・ブレッシング!」ダニエルの右眼から白い熱線が左目から黒い熱戦が発せられた。黒い熱戦は黒色火薬のようにヒードンの身体を幾重にも包むと、一瞬後に白い熱戦が時限爆弾のように発火した。
 ヒードンは丸焦げになって絶命した。
 今度はマクミラの番だった。
 真っ赤な鞭をグリッドに向け振り下ろすと鞭自体が巨大な炎を生み出した。サラマンダーの血を強く引く兄たちと比べて発火能力の弱いマクミラが編み出したピュリプレゲドン・フィップである。
 グリッドの甲羅にヒビが入り、次の瞬間、内部から地獄の劫火が吹き出した。グリッドはのたうち回りながらも、今度は殺してくれるのか? おお、お主に殺されるなら本望ではないか、とつぶやきながら燃え尽きていく。
 一人残されたダークブリッジをマクミラとダニエルが挟む格好になった。
「油断するなよ」ダニエルが声をかける。
「わかってる。待たせたわね。お前は簡単には殺さない。なんで冥界に閉じこめた魔物たちがこうも急に人間界に来るようになったかを教えてもらうよ」
「色男が一緒で強気になったか。もしこの星が消滅したとしてもお前になど何か教えてやるつもりはないわ」
 だが、すでにマクミラは手を打っていた。
 ジュニベロスの三首の口から瘴気(しょうき)がはき出されて立ちこめていた。瘴気を吸い込むと神々でさえ意識が失われて、魔界の狼よりも鋭い牙に噛みつかれ振り回され冥界親衛隊の前に引き出されてしまう。



 ワンブリッジもマクミラと話をしている内に自分の周りが瘴気で覆われていることに気づいた。「しまった! してやられたか」
「成長しない悪鬼だね。ジュニベロス、押さえつけて!」
 一声叫ぶとジュニベロスはワンブリッジの上に飛び乗って、首にするどい牙を押し当てた。巨大な悪鬼もジュニベロスの前には赤子のようであった。
「た、助けてくれ!」
「もしも秘密を話すのなら冥界の牢獄に送り返すだけで許してあげる。なぜ人間界に次々と魔物が現れるようになったの?」


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第1章−3 子ども扱い(再編集版)

2020-04-24 00:19:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 マクミラが一瞬の内にワイヤー入りの鞭を左右に振ると、右の鞭にナイフがからみとられ左の鞭に銃弾が取り込まれる。いつのまにか両方の鞭に炎が走っている。
「坊やたち、まだまだあまい」マクミラがつぶやくと鞭をさらに一振りする。
 燃える炎が二人のストリート・ギャング団リーダーの頬を一撫でする。
 アチッ、彼らが思わず声をあげる。
「次は火だるまだよ」
 脅しに二人がゾッとしたときだった。



 どこからかゴースト・トレーラーが突如として現れた。
 引っ越し荷物などを運ぶ「鉄の固まり」のようなトレーラーには普通なら牽引車がついている。このトレーラーには牽引車がなく、どこに進むかわからない頼りなさで当たるのを幸いになぎ倒していく。
 停めてあったギャングたちのバイクにトレーラーがぶつかると、激しい音を立ててバイクの車体を引き裂きランプをつぶしてぐるりと180度回転させながらフラフラとさらに進んでいく。
 棒立ちになったギャング団数人が巻きこまれる。他の連中もさっきまでの興奮を忘れてあっけにとられている。
 チッ、マクミラが舌打ちする。運が悪いね、坊やたち。
 ゴースト・トレーラーの後部ドアが開くと次々と悪鬼たちが現れる。
 さながらその動きは地獄のバネ仕掛け人形のよう。
 ゆっくりと、だが、山のような筋肉を左右にゆすっている。
「久しぶりだな。魔界の大王ダークブリッジ様がお礼参りに来たぞ」相手を退路のないところに追い込んでいたぶることで知られた牛のような姿の悪鬼がまだなれていない人間の言葉で話す。
「魔界の貴公子グリッド様を覚えているか? 相変わらずきれいな顔をしているな。お前に恋いこがれて、もう何千年過ごしたろうか?」とてつもなく醜い顔をした全身が甲羅でおおわれた悪鬼がからむような声で言った。
「ああ、またお前に会えるとは! 今日こそ、その美しい姿を魔界の恐怖ヒードン様がズタズタに引き裂いてやる」自尊心のかたまりで嫉妬しかできない猛禽類の姿をした悪鬼が感に堪えないようにつぶやく。
「お前たち、わたしの前にまた顔出しをするとはいい度胸だね。冥界ではまるで相手にならずに捕まえられたことをお忘れか?」闘いを前にして高ぶりを押さえられないマクミラが続けた。「坊やたち相手で欲求不満になっていたところだ。さあ、久しぶりに思い切り戦うとするか」
「いいのか、そんな強気で? ここにはお前の父親も兄弟もいないのだぞ」ヒードンが答える。
「ザコ相手にはわたし一人でおつりがくるわ」
「ドブ掃除は俺にまかせろ」ダニエルがマクミラを制して言った。
「ダメよ。わたしが一匹、あなたが一匹。一匹だけ残してつるし上げよう」


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第1章−2 深夜のドライブ(再編集版)

2020-04-20 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「マクミラ、今夜はどうするんだ?」ハーレーダビットソンFXSTSスプリンガ-・ソフテイルをフルスロットルで走らせる堕天使ダニエルが声をかける。
「セントラルパークに! 禍々しいオーラがふくれあがりつつあるわ」キルベロス、カルベロス、ルルベロスの3匹が合体した魔犬ジュニベロスにまたがったマクミラが深夜の幹線道路を逆走しながら怒鳴るように答える。
 このところマクミラはダニエルと一緒の真夜中の魔物狩りが日課になっていた。どうしたわけか、最近、冥界時代に牢獄に閉じこめたはずの魔物たちが人間界に下りてくるようになっていた。
 狩られるのは性に合わない、マクミラは狩られるより狩る側にまわろうと考えた。カンザスでの闘い以降、目覚めつつある力をもてあましており心と身体の両方が闘いを望んでいた。
 いったん闘いだすとザコ相手ではもの足りない反面、危険な連中が人間界に来ると困ったことになる予感もしていた。だが、最凶の囚人たちは最高度に厳重な牢獄に閉じこめられているはずであった。マクミラの後を継いで最高位の神官になった妹ミスティラを信用したいと思った。だが、冥界からの脱獄者が続く現状を考えると、結界がゆるまぬように祭祀をとりおこなうだけでなく残留思念で牢獄をきちんと維持できているか不安になった。

 二人が到着した時、目の前で十数人の若者たちが叫びながら殺し合っていた。ナイフを持った者もいれば拳銃を乱射している者もいた。生まれつき盲目のマクミラには彼らの肌の色はわからなかったが異人種ストリート・ギャング団どうしの争いだった。



 ジュニベロスにまたがったマクミラがパチーーンと指を鳴らした。
 命知らずだがまだ少年のあどけなさを残したギャングたちが振り返る。
「ケガしないうちにお家へお帰り」マクミラが、ハスキーボイスで叫んだ。「ここは、あぶないわ」
「何様のつもりだ?」一方のグループのボスらしいタイ系の少年が魔犬を見て震える声で答える。「仲間が抗争事件で五人も撃たれたんだぞ。そっちこそ引っ込んでいてもらおう」
「ジュニベロスを見てビビってるようじゃ、これから起こることに耐えられそうもないわね。夜遊びをやめてとっととお帰り!」
「こっちだって、はい、そうですかってわけにはいかないんだ。あんたらが噂の化け物コンビか?」イタリア系で整った顔立ちのやはり一方のリーダーらしい少年が答える。
「聞き分けのない坊やたち。狂気があぶない奴を呼び寄せるのがわかっていないんだから」マクミラは背中から真っ赤な二本の鞭を取り出した。「無知な子供たちを、鞭でビビらすとするか」(“Let me whipcrack crackpots.”)
「マクミラ、俺がやろうか?」ダニエルがバイクに乗ったまま尋ねる。「手加減できるか?」
「大丈夫よ。ただ、あまり時間がないけど・・・・・・」
 今度は指ではなく鞭をパチーンとならすとマクミラが言った。「めんどうだ。両方いっぺんにかかっておいで!」
「なめんじゃねー」イタリア系美少年が叫ぶとナイフが宙を飛んだ。
 タイ系の少年のマイクロ・ウージーからも同時に銃弾が発射された。


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第1章−1 ビックアップルの都市伝説(再編集版)

2020-04-17 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 カンザスの戦いから2年、ここは1993年初夏のニューヨーク。
 翌年に就任するルドルフ・ジュリアーニ市長の破れ窓理論*を応用した復興キャンペーンはまだ始まっておらず、経済は沈滞、治安は最悪で、文化も衰退していた。80年代中盤の株式ブームによって回復した経済も87年のブラックマンデーによってブームは終わりを告げ、その後の不況と比例するかのようにニューヨークでは凶悪犯罪、売春が増加し、人々の気持ちもすさみつつあった。
 マンハッタンで最も治安の悪いロウアーイーストサイドにいたってはスラム街と大差ない環境で、住民の40%が失業者で、アルコール中毒者、麻薬常習者、精神疾患者であふれかえっていた。異人種間のもめごともしょっちゅうであり建造物の四分の一は空き家同然であった。
 The Big Appleはまさに「強大な腐ったリンゴ」になりつつあった。



 アメリカはさまざまな顔を持っているがニューヨークこそ「人種のるつぼ」「モザイク社会」の縮図であった。19世紀後半から20世紀半ばまで移民のニューヨークへの玄関口となったのはエリス島であった。
 第二次大戦以前はイタリアを中心とするヨーロッパ系が多かった移民も、戦後はラテン系、アジア系、アラブ系と多様性を増していった。20世紀末時点のニューヨークは、約三分の一が白人、約四分の一がヒスパニック系、約四分の一弱が黒人、約一割がアジア系で、残りが雑多な人種という構成であった。
 チャイナタウンやリトルイタリー、スパニッシュハーレムといった有名どころに加えて、タイ系、メキシコ系、インド系、韓国系とほぼ人種の数と同じだけエスニックタウンがあった。ひとつには彼らが自文化や生活様式の保持を望んだこともあるが、ストリートギャングのような若い犯罪者集団にとって同胞が助け合うことは自衛の手段であった。同時に、同胞こそが最初で最後のよりどころとしての共同体の意味も持っていた。
 不死身の中国人ジミー、命知らずのイタリア人ロッコ、コリアン悪魔のカンなど腕自慢たちの逸話が都市伝説として残っていた。そんなニューヨークに新たな都市伝説が加わった。
 夜毎、魔犬に飛び乗ったゾッとするほど美しい魔女が水もしたたる美男子の堕天使を従えて幹線道路を疾駆する。出来の悪いホラー、それもとびきり出来の悪いホラー小説でもちょっと設定しないような話だった。
 ある晩は、ブルックリン橋からイーストリバー沿いにマンハッタンへ。別の晩は、ミッドタウンからルーズベルト島に。またある時は、ハドソンリバーを越えてニュージャージーへ向かって。
 コンビはミュージカル「オペラ座の怪人」から抜け出したような装束で深夜のニューヨークを走り抜けた。単なる夏の怪談で終わるような話にNYPD(ニューヨーク市警)が関わらざるおえなくなったのは市民からの通報があいついだからだった。
「あの逆走するアホウどもを、なんとかしろ!」

*1982年、政治学者ジェームズ・ウィルソンと犯罪学者ジョージ・ケリングが提唱した犯罪抑止理論。建物の窓を割れたままにしておくと、管理者がいないと思われ、ほかの窓も次々と割られて全体が荒廃する。同様に、小犯罪を見逃すと地域全体の治安が悪化していくので、軽犯罪の徹底取り締まりが、より重大な犯罪を抑止し地域の安全を守ることにつながるとする考え。


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マーメイド クロニクルズ 第二部 序章(再編集版)

2020-04-13 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人


ところで、女はいちごのような唇で
蛇が身を焦がすように、体をくねらせ
コルセットの骨の上から両の乳房を揉んで
麝香の香りがすっかりしみ込んだ言葉を、
流れ出るにまかせていた。 
――シャルル・ボードレール『悪の華』発禁の断章

恐れられたこの私の腕に一人の男をきつく抱くとき、
あるいは、内気なくせに淫蕩で、か弱いのにたくましい、
この胸を、噛まれる苦痛に委ねるとき、
感動を恍惚となった敷物の上で、
ああ、不能の天使だって、私を恋いこがれて堕ちていく!    
――同書同章

身も凍えるような恐怖に両眼を閉じ、
生き生きとした光で、また眼を開けたとき、
たっぷりと血を蓄えたらしい力強いマネキン人形にかわり、
両脇は雑然と震える骸骨のかけら。
それらがひとりでにたてるのは、冬の夜毎に、風がゆする、風見鶏か、細い鉄の棒の先の看板の叫びか。
――同書同章



プロローグ

 我が名はマクミラ。
 かつては冥界の神官だった。あるいは、人間から見れば魔女と呼ばれる存在なのかもしれぬ。冥界にいた頃には、もっとも縁遠いものが愛でもっとも身近な友人が孤独であった。だが、人間界に来てからは死がもっとも身近な存在となった。生きながら死んでいる、あるいは死にながら生きている不死者ヴァンパイアとして過ごしてきたからだ。
 最近、気がつけば神と悪魔のことを考えている。
 神とはいったい何か? 神学者共が答を出してきたが、満足ゆく答えは得られていない。あえて言えば、何かにすがらずにはいられぬ人間が生み出したもの。神こそ全知全能の存在という思いこみ。それが彼らに信仰を持たせている。
 しかして悪魔とは? その存在が、すべての宗教人に肯定されていないのは興味深い。基督教の聖職者を例にとっても悪魔の存在を否定するものは多い。全知全能の神の対極にマイナスの力があるのは許せないというわけか?
 「神」が人の信仰心の産物なら、「悪魔」は人のご都合主義の産物。その存在を信じることで、都合の悪いことは人をたぶらかしいたぶってよろこぶ悪魔のせいにすればすべて事足りるというのか? とんでもない!
 人間の本性こそ悪であり、同時に矛盾する善を持った存在。嫌いな相手にはいくらでも暴力的になれるくせに、好きな相手にはいくらでも愛をそそげる。
 なぜ人間をきらうかって? 神官だった頃、あまりにも多くのあさましい魂を見てきてしまったから。人間界に来てからあまりにも多くのあまのじゃくな者たちを見てきてしまったから。
 といって、わたしが悪魔の側に立っているわけではない。人間界に来てからは奴らから冥界時代のうらみをはらそうとねらわれているようだし・・・・・・
 本当かって? 別に信じてもらおうとも思わないし、あなたにそもそも神と悪魔の区別さえつくとも思えない。
 わたしのこれまでの体験談が聞きたいって? よいだろう。こんな闇夜は冥界を思い出してセンチな気分にもなる。わたしが人間嫌いになった訳を気まぐれに聞かせるとしよう。
 さあ、今宵の物語を始めようではないか。


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第一部 序章〜エピローグのバックナンバー

2020-04-10 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

  
 財部剣人です! おかげさまで第一部の再配信も終了しました。来週からは、第二部の再配信を始める予定です。さらに第三部の完結に向けてがんばっていきますので、どうか乞うご期待。

「マーメイド クロニクルズ」第一部 神々がダイスを振る刻篇あらすじ

 深い海の底。海主ネプチュヌスの城では、地球を汚し滅亡させかねない人類絶滅を主張する天主ユピテルと、不干渉を主張する冥主プルートゥの議論が続いていた。今にも議論を打ち切って、神界大戦を始めかねない二人を調停するために、ネプチュヌスは「神々のゲーム」を提案する。マーメイドの娘ナオミがよき人 間たちを助けて、地球の運命を救えればよし。悪しき人間たちが勝つようなら、人類は絶滅させられ、すべてはカオスに戻る。しかし、プルートゥの追加提案によって、悪しき人間たちの側にはドラキュラの娘で冥界の神官マクミラがつき、ナオミの助太刀には天使たちがつくことになる。人間界に送り込まれたナオミ は、一人の人間として成長していく内、使命を果たすための仲間たちと出会う。一方、盲目の美少女マクミラは、天才科学者の魔道斎人と手を組みゾンビー・ソルジャー計画を進める。ナオミが通うカンザス州聖ローレンス大学の深夜のキャンパスで、ついに双方が雌雄を決する闘いが始まる。

海神界関係者
ネプチュヌス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 海主。「揺るがすもの」
トリトン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ネプチュヌスの息子。「助くるもの」
シンガパウム ・・・・・・・・・・ 親衛隊長のマーライオン。「忠義をつくすもの」
ユーカ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 第一次神界大戦で死んだシンガパウムの妻
アフロンディーヌ ・・・・・・ シンガパウムの長女で最高位の巫女のマーメイド
アレギザンダー ・・・・・・・・・・ 同次女でユピテルの玄孫ムーの妻のマーメイド
ジュリア ・・・・・・・・ 同三女でネプチュヌスの玄孫レムリアの妻のマーメイド
サラ ・・・・・・・・・・ 同四女でプルートゥの玄孫アトランチスの妻のマーメイド
ノーマ ・・・・・・ 同五女で人間界に行ったが、不幸な一生を送ったマーメイド
ナオミ ・・・・・・・ 同末娘で人間界へ送り込まれるマーメイド。「旅立つもの」
トーミ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ナオミの祖母で齢数千年のマーメイド。
ケネス ・・・・・・・・・ 元ネイビー・シールズ隊員。人間界でのナオミの育ての父
夏海 ・・・・・・・・・・・・ 人間界でのナオミの育ての母。その後、ニューヨークに
ケイティ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ナオミのハワイ時代からの幼なじみ
ナンシー ・・・・・・・・・・・・・・・・ 聖ローレンス大学コミュニケーション学部教授

天界関係者
ユピテル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「天翔るもの」で天主
アスクレピオス ・・・・・・・ 太陽神アポロンの兄。アポロノミカンを書き下ろす
アポロニア ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アポロンの娘で親衛隊長。「継ぐもの」
ケイト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アポロンの未亡人。「森にすむもの」
シリウス ・・・・・・・・・・・・・・ アポロニアの長男で光の軍団長。「光り輝くもの」
               で天界では美しい銀狼。人間界ではチャック
アンタレス ・・・・・・・ 同次男で雷の軍団長。「対抗するもの」で天界では雷獣。
                            人間界ではビル
ペルセリアス ・・・・・・・ 同三男で天使長。「率いるもの」で天界では金色の鷲。
                         人間界ではクリストフ
コーネリアス ・・・・・・・・・・・・・ 同末っ子で「舞うもの」。天界では真紅の龍。
   人間界では孔明

冥界関係者
プルートゥ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「裁くもの」で冥主
ケルベロス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3つ首の魔犬。「監視するもの」で
  キルベロス、ルルベロス、カルベロスの父
ヴラド・“ドラクール”・ツェペシュ ・・ 親衛隊の大将軍。「吸い取るもの」で
       人間時代は、「串刺し公」とおそれられたワラキア地方の支配者
ローラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・“ドラクール”の妻で、サラマンダーの女王。
「燃やし尽くすもの」
アストロラーベ ・・・・・・・・・・・・・・ ヴラドとローラの長男で、親衛隊の軍師。
                            「あやつるもの」
スカルラーベ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同次男で、親衛隊の将軍。「荒ぶるもの」
マクミラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同長女で、人間界に送り込まれる冥界最高位の
神官でヴァンパイア。「鍵を開くもの」
ミスティラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同次女で、冥界の神官。「鍵を守るもの」
ジェフエリー・ヌーヴェルヴァーグ・シニア ・・・パラケルススの世を忍ぶ仮の姿
ジェフエリー(ジェフ)・ヌーヴェルヴァーグ・ジュニア … マクミラの育ての父

「第一部序章 わたしの名はナオミ」

「第一部第1章−1 神々のディベート」
「第一部第1章−2 ゲームの始まり」
「第一部第1章−3 シンガパウムの娘たち」
「第一部第1章−4 末娘ナオミ」
「第一部第1章−5 父と娘」
「第一部第1章−6 シンガパウムの別れの言葉」
「第一部第1章−7 老マーメイド、トーミ」
「第一部第1章−8 ナオミが旅立つ時」

「第一部第2章−1 天界の召集令状」
「第一部第2章−2 神導書アポロノミカン」
「第一部第2章−3 アポロン最後の神託」
「第一部第2章−4 歴史の正体」
「第一部第2章−5 冥界の審判」
「第一部第2章−6 "ドラクール"とサラマンダーの女王」
「第一部第2章−7 神官マクミラ」
「第一部第2章−8 人生の目的」

第一部 第3章−1 ドラクールの目覚め

第一部 第3章−2 仮面の男

第一部 第3章−3 マクミラ降臨

第一部 第3章−4 マクミラの旅立ち

第一部 第3章−5 海主現る

第一部 第3章−6 ネプチュヌス

第一部 第3章−7 マーメイドの赤ん坊

第一部 第3章−8 ナオミの名はナオミ

第一部 第3章−9 父と娘

第一部 第3章−10 透明人間

 

第一部 第4章−1 冥主、摩天楼に現る

第一部 第4章−2 選ばれた男

第一部 第4章−3 冥主との約束

第一部 第4章−4 赤子と三匹の子犬たち

第一部 第4章−5 一難去って・・・

第一部 第4章−6 シュリンプとウィンプ

第一部 第4章−7 ビッグ・パイル・オブ・ブルシュガー

第一部 第4章−8 なぜ、なぜ、なぜ

第一部 第4章−9 チョイス・イズ・トラジック

第一部 第4章−10 夏海の置き手紙 

 

第一部 第5章−1 残されし者たち

第一部 第5章−2 神海魚ナオミ

第一部 第5章−3 マウスピークス

第一部 第5章−4 マウスピークスかく語りき

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

第一部 最終章−6 悪夢の行方

第一部 最終章−7 アルゴス登場

第一部 最終章−8 死闘の終わり

第一部 エピローグ

 


  

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第一部 エピローグ

2020-04-06 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 

 こうして、わたしの聖ローレンス大学一年生の夏は終わった。

 マクミラが約束した通り、KKK団の講演会は中止になりキャンパスには静寂が戻ってきた。しかし、わたしと孔明、ビルとチャックは極左団体に加担するテロリストだったのではないかと疑いをかけられて、数日にわたる執拗な取り調べを受けた。

 マウスピークスがあの三人に限ってそのようなことはあり得ないと保証してくれたのと、FBIにアポロノミカンがらみであると伝えてくれたおかげで、今回の事件も膨大な「アポロノミカン・ファイル」の一つになったらしい。

 あの時のゾンビたちが心の平静を得ていればよいと思う。

 炎上したローデン・オーデトリアムは、数年後、近代建築の粋を極めたという殺風景なコンサート・ホールに建て替えられてしまった。

 仲間たちの、その後についても語っておこう。

 孔明は元気でLUCGの活動に参加している。龍に変身した夜以降、怒りをコントロール出来るようになったのかいままで以上に技の切れが鋭くなった。

 ビルは以前から考えていたらしいが、勉強に専念するようになった。

 チャックはあの夜にお声がかからなかったことを長い間すねていたが、最近ようやくいじけなくなった。

 クリストフだけはどれだけ探しても見つからなかった。

 いったい、あの戦いの後、何が彼に起こったのか?

 マウスピークスは胸のつかえが取れたせいか、いつものナンシーに戻って元気に学生たちを指導している。

 わたしとケイティは全米ディベート選手権大会を目指してがんばっている。ルーキー・イヤーを終えて経験不足とか、もう言い訳のきかないからと張り切っている。

 しかし、わたしたちは一年後、前回とは比較にならないほどの恐怖を体験することになるのだった。

 皆さんに、その物語を語る日まで「神々のゲーム」が続いていることを祈りつつ、今宵の物語に付き合ってくれたことに礼を言いたい。またお会いする時まで、どうかお元気で。

 わたしの名はナオミ。

 愛し合う相手にはめぐまれない。

 だが、教え導くものと仲間には恵まれる運命を持った人間界にたった一人送り込まれたマーメイドだ!

 

 

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第一部 最終章−8 死闘の終わり

2020-04-03 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 

 その時、孔明とナオミの帰りが遅いのを心配して、寮で待っていたチャックとクリストフがやってきた。

 車のドアを開けて飛び出しきた二人はあまりの惨状に声も出せない。もはや勝負はついてしまったのか・・・・・・

 ナオミはあきらめかけた。

「勝負は、まだついてない」

 皆が声のする方を振り返ると孔明が立ち上がっていた。

「ビル、雲から大地に向けて雷を落とせばいいな?」

 服がボロボロに破れて上半身裸になった孔明が言った。

「ああ、アルゴスは雷のエネルギーを利用できる」

「よし」

 演武を始めるために孔明が後ろを向いた。

 その背中に鮮やかな真紅の龍の入れ墨が浮き上がった。

 右手が振られると光りが生まれ足をあげると虹が空気を切り裂いた。彼が移動するにつれて闘気が渦を巻きだした。つむじ風が起きた瞬間、幻視ではなく孔明は巨大な龍に変容すると天に向かって昇りだした。

「いいぞ、もっと上がれ!」ビルが叫んだ。

「今日の天気なら雲間放電が起きてるはずだ。孔明が大地に向けて雷を落としてくれればアルゴスを再起動できるぞ」

 ゴロゴロと雷が鳴り出したかと思うと稲光が始まった。

「来た、来た、来た!」

 ビルが、舌なめずりしている。

「ゲッーート!」

 アルゴスから出た弱い雷撃が雲間から落ちてきた稲光とつながった。

 耳をつんざく大音響と共に雷撃が一度アルゴスに引き込まれた。コンマ数秒後、今度はアルゴスから巨大な雷撃が発せられるとビルが器用にコントロールする。

「渦雷三連発!」

 たちまちゾンビ三体が消し飛んだ。残りは、でかぶつ一体だけだ。

 だが、アルゴスと孔明との二重奏はまだ安定していなかった。ビルの手元が狂って、次の雷を取り込んだ強力な雷撃がナオミの方に落ちてきた。

 あれ、やばい。

 ナオミが思った時だ。

 黄金色の鷲が飛んできてナオミをかばって代わりに雷撃を受けた。鷲は一瞬にして焼け焦げた。

 ナオミは目の前のクリストフに駆け寄った。

「バカ、なんてことをするのよ」

「ナオミ・・・・・・無事か?」

「わたしは平気。だいじょうぶ?」

「意識が遠くなってきた・・・・・・まだまだ俺を待ってるお魚ちゃんたちは海にたくさんいるんだけどな。でもよかった。ナオミが無事で」

「おい、ナオミ、気をつけろ!」孔明が叫んだ。

 ナオミは襲ってきた最後のゾンビをアクアソードで一蹴した。

 気がつくとボロボロになった孔明がジャガーの前に倒れていた。

「孔明・・・・・・」

 自分もボロボロの姿になったナオミが声をかける。

「お二人さん、最後は雷坊やの手を借りたにしてもお見事だわ。ご褒美をあげなくては」

 マクミラは掌から火の玉を出すとローデン・オーデトリアムを爆発炎上させた。

「これで明日の講演会は中止ね。こちらのメンバーもあらかた殲滅されてしまったし。次に会う日を楽しみにしているわ。アディオス」

 アオーン! 

 ケルベロスの息子たちは一泣きすると三首の巨大な魔犬ジュニベロスに変身してマクミラを乗せてかなたへ去ってしまった。

 

 

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