外の工事の騒音で目が覚めた。
アパートから百メートル先で古い建物が壊されていた。
コンクリートの砕ける音がいやな目覚めを誘った。
財布の中から、昨日撮ったプリクラを取り出した。僕は全部口が半分開いていて、半笑いの同じ表情になっていて、一方とも子は満面の笑みでピースサインをしていた。
プリクラを眺めながら、昨日のデートのことを思い出していた。
場所は入念に下見をした雰囲気のあるイタリアンに決めた。
料理を食べた後は得意のビリヤードに誘い、何とか自分の弱い部分を見せずに済んだ。
僕なりに順調に思えていたし、会話は思いのほかスムーズに運べた気がする。とはいえ会話は彼女の質問攻めのようだった。
「博之くんは正社員とアルバイトの違いって何だと思う?」
「博之くんは彼女に何を求めたいの?」
「彼氏以外の男友達と遊んだりしたら、どうする?」
数ある質問を僕は考慮しながらも自分なりの答えは言えたと思う。
あと、驚いたことはビリヤードのときに気づいたのだが、彼女の背中に大きなバラのタトゥがあったことだ。
「ねぇ、とも子さん聞いてもいい?そのタトゥは本物?」
彼女は8番のボールに力強く当てた。
ビリヤード独特の乾いた音が響いた。キューを構えたまま彼女は僕に振り向いた。
「3年前くらいにね…色々あってさ。タトゥは嫌い?」
「別に好きでも嫌いでもないよ。初めて見たからさ。何でしたの?」
「秘密」
即答だった。
これ以上聞いて、機嫌を悪くさせたら嫌だったので、聞かないことにした。
人間には聞いてならないことはたくさんある。
ゲームを終えると帰りにプリクラを撮った。
「今日はたくさん質問しちゃたけど、何か私に聞きたいことある?」
帰りの駅のホームで彼女は別れ際に言った。
僕は少し考えて、はみかみながら聞いてみた。
「うーん…今日は楽しかった?」
「楽しかったよ」
「また遊んでくれる?」
「都合が合えばね」
黒のコートにピンクのマフラーのとも子の後姿は眺めていた。
とも子は時々振り返り何度も手を振った。僕も照れながら振り返るたびに手を振った。
アパートから百メートル先で古い建物が壊されていた。
コンクリートの砕ける音がいやな目覚めを誘った。
財布の中から、昨日撮ったプリクラを取り出した。僕は全部口が半分開いていて、半笑いの同じ表情になっていて、一方とも子は満面の笑みでピースサインをしていた。
プリクラを眺めながら、昨日のデートのことを思い出していた。
場所は入念に下見をした雰囲気のあるイタリアンに決めた。
料理を食べた後は得意のビリヤードに誘い、何とか自分の弱い部分を見せずに済んだ。
僕なりに順調に思えていたし、会話は思いのほかスムーズに運べた気がする。とはいえ会話は彼女の質問攻めのようだった。
「博之くんは正社員とアルバイトの違いって何だと思う?」
「博之くんは彼女に何を求めたいの?」
「彼氏以外の男友達と遊んだりしたら、どうする?」
数ある質問を僕は考慮しながらも自分なりの答えは言えたと思う。
あと、驚いたことはビリヤードのときに気づいたのだが、彼女の背中に大きなバラのタトゥがあったことだ。
「ねぇ、とも子さん聞いてもいい?そのタトゥは本物?」
彼女は8番のボールに力強く当てた。
ビリヤード独特の乾いた音が響いた。キューを構えたまま彼女は僕に振り向いた。
「3年前くらいにね…色々あってさ。タトゥは嫌い?」
「別に好きでも嫌いでもないよ。初めて見たからさ。何でしたの?」
「秘密」
即答だった。
これ以上聞いて、機嫌を悪くさせたら嫌だったので、聞かないことにした。
人間には聞いてならないことはたくさんある。
ゲームを終えると帰りにプリクラを撮った。
「今日はたくさん質問しちゃたけど、何か私に聞きたいことある?」
帰りの駅のホームで彼女は別れ際に言った。
僕は少し考えて、はみかみながら聞いてみた。
「うーん…今日は楽しかった?」
「楽しかったよ」
「また遊んでくれる?」
「都合が合えばね」
黒のコートにピンクのマフラーのとも子の後姿は眺めていた。
とも子は時々振り返り何度も手を振った。僕も照れながら振り返るたびに手を振った。