旧・鮎の塩焼キングのブログ

80年代を「あの頃」として懐かしむブログでしたが、子を亡くした悲しみから立ち直ろうとするおじさんのブログに変わりました。

冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第1話 その18

2024-12-22 10:36:00 | 小説
亡き次男に捧げる冒険小説。アメブロからの転載です。

一八

 伏兵の《ウォーグ》は目を見開いていた。嫌な予感が当たった。こいつらは普通じゃない。武術とかいうやつを使う人間が、仲間を殴り殺した勢いのまま、俺に向かってくる。伏兵の《ウォーグ》は恐怖で立ち竦む。駆け寄って来たナーレは躊躇なく伏兵の《ウォーグ》に蹴りを入れた。その動きは正に神速であった。蹴りは《ウォーグ》の顎に命中した。ダメージは思ったほどではなかったが、《ウォーグ》の闘争心は完全に折れた。《僧兵》の勢いに駆られて、目の前のテーリと呼ばれる人間が大きく振りかぶる。石が飛んでくる。そう思った瞬間、《ウォーグ》の顔がひしゃげた。テーリの投げた石は、寸分違わず《ウォーグ》の顔面を撃ち抜いたのだ。流血に耐えて《ウォーグ》がよろよろと立ち上がる。まだ戦える、しかしこれ以上戦っても生き残れる見込みはない。《ウォーグ》は傷つくことを覚悟の上でナーレの横を駆け抜けた。逃亡を試みたのだ。そんな隙をナーレが見逃すはずがなかった。ナーレの手刀が《ウォーグ》の背中を強かに打つ。《ウォーグ》は大きくよろめくも、そのまま森の奥に駆けていく。テーリたち三人が追いかける理由はなにもなかった。三人は魔獣の群れに勝ったのだ。



【第1話 一九に続く】

次回更新 令和6年12月24日火曜日


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用語解説

なし


冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第1話 その17

2024-12-20 18:14:00 | 小説

一七

 回復したテーリが《ウォーグ》の噛みつきをかわすのを見て、ハーラは胸を撫で下ろした。今度は自分がいいところを見せる番だ。ハーラはナーレの言葉を思い出した。

「やれる気がするんだ、テーリ、ナーレ!」

テーリもナーレも《竜》状の輝きを放っていた。ハーラには自分にもそんな力が眠っている様な気がしたのだ。《緑毒の湿原》の荒涼とした風景が脳裏をよぎった。《年降る緑色竜》がこちらに顔を向けている。祖父と父の仇め、と《緑色竜》への憎しみを両の手にこめる。途端に手にしたグレートソードが緑に輝き始めた。《緑色竜》の形をしたオーラが吹き出す様を見て、ハーラは不適な笑みを浮かべた。僕だってやる時はやるんだ、と言わんばかりに緑に光るグレートソードを振り上げた。間を置かずにナーレに噛みついた《ウォーグ》に力一杯振り下ろす。切先は真っ直ぐに《ウォーグ》の脳天を割り、そのまま地面も割った。断末魔を上げる暇もなく、《ウォーグ》は絶命し崩れ落ちた。傷口が緑色に腐っていく。ハーラの剣は猛毒を纏う呪いの刃と化していた。



 腕が痛み、生命の危険を感じる。それでもナーレは止まらない。自分が傷ついたお返しをハー兄が討ってくれた。今度こそしくじりはしない。腕の傷を庇うこともなく、ナーレは雄叫びを上げて、テーリから吹き飛ばされたもう一匹の《ウォーグ》に殴りかかった。先ほどの間抜けな空振りが嘘の様に、正拳突きが《ウォーグ》の眉間を打ち砕く。メキメキと乾いた音が響いた。ハーラが切り倒した《ウォーグ》と同じく、ナーレの拳を喰らった《ウォーグ》もまた音もなく崩れ落ちた。


【第1話 一八に続く】

次回更新 令和6年12月22日日曜日


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用語解説

なし


amebloからの転載です。

初めから読みたい方は以下のリンクからどうぞ。


https://ameblo.jp/metasususu/entry-12874399833.html?frm=theme






冒険小説 ハテナの交竜奇譚第1話16 更新しました!

2024-12-16 18:58:00 | 小説
ダンジョンズ&ドラゴンズのリプレイ風小説です。

第1話その15までのあらすじ
 裸で川に沈んでいた青年・テーリ。川から顔を出すと魔獣に追いかけられる。追い詰められたテーリが死を覚悟した時、空から二人の青年・ハーラとナーレが現れた。
 初対面の3人は何故か名前を呼び合えてしまう。2人の協力と不思議な《竜》の力でテーリは魔獣へ反撃を始めた!



魔獣《ウォーグ》


その16

初めから読みたい方はこちらから!
その1

とてもお久しぶりです 新しい活動の報告です

2024-12-15 00:35:14 | 小説
こんばんは。
大昔におもちゃを紹介していた鮎の塩焼キングと申します。

約3年前に次男を亡くし、失意のどん底から這い上がるべく、ジタバタと過ごしておりました。

今はアメブロで活動しています。

最近は子供の頃「あの頃」にはまったテーブルトークRPGの始祖ダンジョンズ&ドラゴンズ(以下D&D)関連の作品を心の支えになんとか
生きている状況です。

私自身も子を亡くしたショックで生きるか死ぬかの精神状態でしたがそんな私の心を支えてくれた一つがD&Dでした。

次男に似た人物が活躍する世界を想像することで、暗い気持ちとなんとか折り合いをつけてきました。

そんな私の命を繋いでくれた世界が消えてしまわないように、ただいま小説化してアメブロで連載しています。

旧ブログの存在を思い出したため、こちらにも更新のたびにリンクを貼って行きたいと思います。

こちらのブログも毎日どなたかが訪問してくれたようで、嬉しく思っています。

では、今後ともどうぞよろしくお願いします。
因みに今年から正式に職場に復帰してばんばん働けるようになりました!

冒険小説 ハテナの交竜奇譚 あらすじ
 川底で目覚めた青年・テーリ。息苦しさから水面に顔を出すと、魔獣の顔が目の前にあった。素っ裸のテーリはただ逃げることしかできない。テーリの運命や如何に?

冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第1話 その1(ただいまその15まで掲載済み)
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D&D私的解釈のドラゴン大辞典
https://ameblo.jp/metasususu/entry-12764689090.html