旧・鮎の塩焼キングのブログ

80年代を「あの頃」として懐かしむブログでしたが、子を亡くした悲しみから立ち直ろうとするおじさんのブログに変わりました。

冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第1話 その17

2024-12-20 18:14:00 | 小説

一七

 回復したテーリが《ウォーグ》の噛みつきをかわすのを見て、ハーラは胸を撫で下ろした。今度は自分がいいところを見せる番だ。ハーラはナーレの言葉を思い出した。

「やれる気がするんだ、テーリ、ナーレ!」

テーリもナーレも《竜》状の輝きを放っていた。ハーラには自分にもそんな力が眠っている様な気がしたのだ。《緑毒の湿原》の荒涼とした風景が脳裏をよぎった。《年降る緑色竜》がこちらに顔を向けている。祖父と父の仇め、と《緑色竜》への憎しみを両の手にこめる。途端に手にしたグレートソードが緑に輝き始めた。《緑色竜》の形をしたオーラが吹き出す様を見て、ハーラは不適な笑みを浮かべた。僕だってやる時はやるんだ、と言わんばかりに緑に光るグレートソードを振り上げた。間を置かずにナーレに噛みついた《ウォーグ》に力一杯振り下ろす。切先は真っ直ぐに《ウォーグ》の脳天を割り、そのまま地面も割った。断末魔を上げる暇もなく、《ウォーグ》は絶命し崩れ落ちた。傷口が緑色に腐っていく。ハーラの剣は猛毒を纏う呪いの刃と化していた。



 腕が痛み、生命の危険を感じる。それでもナーレは止まらない。自分が傷ついたお返しをハー兄が討ってくれた。今度こそしくじりはしない。腕の傷を庇うこともなく、ナーレは雄叫びを上げて、テーリから吹き飛ばされたもう一匹の《ウォーグ》に殴りかかった。先ほどの間抜けな空振りが嘘の様に、正拳突きが《ウォーグ》の眉間を打ち砕く。メキメキと乾いた音が響いた。ハーラが切り倒した《ウォーグ》と同じく、ナーレの拳を喰らった《ウォーグ》もまた音もなく崩れ落ちた。


【第1話 一八に続く】

次回更新 令和6年12月22日日曜日


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用語解説

なし


amebloからの転載です。

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https://ameblo.jp/metasususu/entry-12874399833.html?frm=theme







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