亡き次男に捧げる冒険小説です。
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〇五
耳がプルプルと震えながら後ろ向きに折り畳まれ、尻尾がドリルのように小刻みに回る。取り乱したヴァッロから滲み出る愛くるしさに、ハーラとナーレはいつの間にか骨抜きになっていた。ただ一人テーリだけがヴァッロの小動物的な愛嬌に耐え、詰問を続けた。
「『チッチ様』の狙いはなんだ?言えヴァッロ!吐いて仕舞えば、オデは僕たちの役に立つんだぜ?」
オロオロとあたりを見回すヴァッロ。突然、ヴァッロの身体を抑える腕が生えてきた。テーリたちがギョッとしてよく見ると、金色の小さな塊がヴァッロの隣に座っていた。三人とも初めて出会う人種であった。《オートノーム》、機械仕掛けの《小人》であった。
【第2話 〇六に続く】
次回更新 令和7年2月3日月曜日
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食堂で不意に起こった夫婦喧嘩に首を突っ込むおかしな二人組。ことを荒立てなければ良いのだが。