ポエブクロウ

自由詩_Azukizawa

241002_自我〈仕事〉

2024-10-02 15:01:20 | 

241002_自我〈仕事〉

               午後5時

 飯塚はいつも仕事中に考え込んでしまう癖があった。その日も、午後4時ごろになり少
しでも眠気が去ってくると──彼は2時ごろから眠気がさし、このころに目覚めるのだ、
頭の中から自然と言葉が送り出されてきた。冷房がしてあるとはいえ、3階の工場の中
はそうとうな温度だった。とくに彼が座っている所は暑かった。冷たい空気が出る口は彼
の頭上にあるにはあったがみんな左右に平行に出てしまうので彼にあたることはなかった。
 飯塚の属している班は、その工場の中央にあったのだ。そして中央を冷気を導く四角い
管が走っていた。その管の横腹には等間隔に冷気噴射口があって、まるで飛行機の翼のよ
うな気流を左右へ送り出していた。しかしその噴射口に付いている数本の冷気流の流れる
角度を変える羽根はせいぜい下に四十五度ぐらいしか送ることが出来なかった。したがっ
てその管の真下あたりにいた者たちは冷気の恩恵をあまり受けることはなかった。おまけ
に午後四時半ともなると、真昼の太陽に熱せられ充分に熱気を吸い込んだ屋上のコンクリ
ート天井から肌で感じられるぐらいの熱射があった。それはまるで遠赤外線のように降り
そそぎ、彼の緑色の作業机をなま暖かくした。しかし仕事疲れが出はじめた彼には、もう
そんな事どうでもよかった。なんとなく暑さに酔ったようになり、どんどん言葉が頭の中
からわき出して来るのだった。

----------------------省略------

これは47年前の私の記憶だ。短編風に書いた最初の部分だ。つまり私の自我の一部だ。
電気メーターなど製造していたKW電気で3年間だけ働いていた。
会社は家族的であたたかい雰囲気のところだったが、私はどうしても馴染めず、一月に
十日ぐらいは休んでいた。今だったらすぐに解雇されていたろう。
この怠けがこれからえんえんと続き郷里の家族からは行方不明者にされていた。
やっとまともに働き始めたのはTK社に入ってからだ。

KW社からTK社までの間に二十年間もある。この間に私は「自己の確立」とかなんとか
言ってひたすら思索を行っていた。
どこからどうみてもひどい自我だったので、確立もくそもないのだ。
ただ悪いことには興味がなかったので、不良にだけはならなかったし、そういった友達も
いなかった。

今までのことをまとめて本にすれば、何千ページにもなるだろう。しかし、路上の馬糞の
一部にされてしまうだろう。

『路上の馬糞』といえば、私の子供の頃の風景だ。馬が荷物を運んでいた時代もあったのだ。
鉄路には蒸気機関車が走り……

 

 

 

 

 

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