撮り旅・ヨーロッパ

ハンガリーを拠点にカメラ片手に古い教会を主に写真撮影の旅を楽しみ、そこで拾った生活、文化情報を紹介します。

ブダペストの市(いち)

2019-11-10 13:48:37 | 海外生活

 古今東西、町の成り立ちと発展には、シルクロードの街道沿いに栄えた前例を引き合いに出す

までもなく、いち(市)が重要なファクターであったことは言うに及ばないことだが、ブダペスト

にはそのような場所が何処にあったのだろうか、探してみることにした。

ブダペストの街の発展に寄与した市(いち)というものは、国王が与える特権によって開設され

ており、規制と開催日を定めた13世紀中頃にベラ四世がペシュト市に与えた特許状が始まりで

あった。...蛇足ながら織田信長がそれに似た楽市楽座を、当時の鎖国状態に近い希薄な情報量の

     世の中で実践したという先見性には改めて驚愕してしまう。


1.13~15世紀にペシュトに存在した市場

 ① 干し草市場

 街が市壁に囲まれる以前は市教区教会前の広場にあった。         Mar. 03 2019

 

  市壁が出来た(1255年)後、現在のカールヴィン広場に移された...市内に干し草や藁を

 入れることを嫌った為。                        Nov. 09 2019

   国立博物館前に市(いち)は移された。

 <当時の市場>

 

 <13~15世紀のペシュト市街地図>

 

 ② 小麦市場

  市教区教会の隣なりにあった市庁舎前の広場に市(いち)は開催されていたが、エルジェー

 ベト橋を建設する為に、市庁舎を取り壊した(1890年代)。

 因って、現在は全く跡形もない。

 

                                    Aug. 29 2018

    

 ③ 家畜市場

 ハッキリした場所は明確ではないが、13世紀半ばにフランシスコ教会の裏手にあったらしい。

 家畜市場も後年、市壁の外に移された。                 Aug. 17 2019

 

 ④ 荷揚げ市場

  現在、くさり橋の対面に建っているフォーシーズンズホテルの辺りに荷揚げ市場があった。

 この場所はフォーシーズンズホテルがブダペスト市から2001年に買収したが、その前は

 ロンドンの生命保険会社グレシャムが1906年にアールヌーボー様式で建てた宮殿があった。

 第2次世界大戦後はソ連赤軍が住居として使っていた。

 グレシャム宮殿の前は、1827年に新古典派建築で建てられたナーコー家の邸宅であったので

 それ以前は、平地で荷揚げ市場が開かれていたと推定される。

                                      Nov. 09 2019

        

 ⑤ 木材市場

 国会議事堂の建設が始まったのが1885年(完成は1904年)であるので、それ以前は

 前述の荷揚げ市場と同時期に、この辺に木材市場があったようだ。     Nov. 09 2019

 

 ⑥ 石炭市場

  ペシュト市壁のすぐ外のデアーク広場の中にあって、ドナウ川の舟橋から市壁に沿って

 石炭を運んで商売が行われていた。 後にこの地にはルター派の教会が1799年から建築が

 始められ1811年から宗教活動が開始されるまで市場は続いた。     Nov. 09 2019

 

 ⑦ 新市場

  石炭市場は姿を消し、それに隣接する形で18世紀後半に、現在のエルジェーベト広場に

 ヨーロッパで最も大きな市場が登場した。 この場所はヴァーツィ門の外にあった墓地で、

 エルジェーベト広場と呼ばれるようになったのは1856年以降であり、それ以前は新広場

 (Uj-tér) 又は新市場 (Uj-vásár) と呼ばれていた。           Nov. 09 2019

 <当時の新市場>

 

2.ブダにあった中世の市場

 <15世紀のブダ市のロケーション>

 

 

 ⑧ 日常市場(現在のマーチャーシュ教会横の三位一体像辺り)

  三位一体広場と呼ばれるようになったのは19世紀からで、それ以前は「市(いち)広場」

 と呼ばれていた。                      May 06 2018

  

 

 ⑨ 土曜市広場

 ウィーン門横にあるカピストラーン広場の中に市(いち)が開かれていた。

 公文書館前にある公園                        May 06 2018

 

 ⑩ 聖ジェルジ市場

 ケーブルカーで登った所にある聖ジェルジ公園に市(いち)は建てられていた。

 当時は聖ジェルジ教会がここにあった。               

                                    Nov. 09 2019

 

 <参考文献> 

  写真以外のイラストマップ、古い画像は、南塚信吾氏著「ブダペスト史」(2007発刊)

  より拝借致しました。

          

        これにて「ブダペストの市(いち)」は、お終いです。

   本ブログをご拝読下さり、ありがとうございました。

 

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