ドナウ川の北岸に拡がるブルジョウニィ (Börzsöny) 山脈を西回りで迂回する国道
12号線は隣接する国スロヴァキアに沿って北上することになる。
スロヴァキアに事務所があった日本の友人が時々、使うという路線のようだ。
こんな牧歌的な駅が残っていることに心が癒される。
Kismaros 駅(終点がブダペストの西駅)
ここから振り向くとドナウ川を見越して、14~15世紀に栄華を極めた
ヴィシェグラード (Visegrád) の砦がすぐそこである。
ブルジョウニィ (Börzsöny) 山脈と云っても標高800m 程度で日本のような山国
からみたら丘のようなものである。 向こうはスロヴァキア。
Jun. 06 2007 撮影
今回の教会は、13世紀頃に鉱山の町として栄えたナジブルジョウニィ (Nagybörzsöny)
にある教会と少し内陸部にあるテレシュケ (Tereske) とノーグラードシャープ (Nógrádsáp)
の教会である。 いずれも外観が美しく内部の壁画(フレスコ画)が素晴らしい。
尚、この地域の他の古い中世の教会(下図のマップに朱丸で示した)は、本ブログの
2013/03/12, 13 でも投稿しておりますのでご参照を。
<ロケーション>
1.聖イシュトヴァーン教会 (Szt. István templom)
建国時のアルパード時代のロマネスク様式が残されており、13世紀前半の建立
と推定されているが明確でない。
<スケッチ>
祭壇側の外壁に12個の人や犬の顔彫刻が飾ってあり、この時代には
モンゴル人の襲撃が多発しており、モンゴル人を処刑した印として彼等からの
襲撃を防ぐ目的があったと言われている。
顔はたいがい鼻が削ぎ落ちており、威嚇する為という説もあるが、長い風雪で
劣化したものかも知れない。 ハンガリーも東部地方(トランシルヴァニア地方
含む)へ行くと古い教会には同じような目的の石彫が見られるがモンゴル人の
進出ルートと結びつくような気もする。
● 内陣(祭壇部)
2.ノーグラードシャープ教会 (Nógrádsáp templom)
教会は14世紀の終り頃にゴシック様式で建立され、塔の西側部分にゴシック
様式の窓を上下に配し、近隣の人達からは「騎兵の塔」の愛称で呼ばれている。
ローマカトリック教会である。
<スケッチ>
タマネギ型の塔は美しく、塔の屋根は Zsindely 方式と呼ばれる中世の教会で
流行った木を重ねたような作風が特徴である。
● 内陣(祭壇部)
祭壇部の側壁に15世紀の教会再建時に描かれた壁画(フレスコ画)がある。
◆ タイトル「聖イシュトヴァーンの聖母マリアへの宣誓」
◆ タイトル「キリストの磔」(左)と「聖マドンナのガウン姿」(右)
3.テレシュケ教会 (Treske templom)
教会は13~14世紀の間にロマネスク様式で建てられたが、その後15世紀に
ゴシック様式で、18世紀にはバロック様式で再建された。
現在の外観は中世の教会からは遠くなっているが、内部や壁には昔の姿を残している。
● 内陣
ルネッサンス風の説教台は15世紀に再建された時の物で、北壁には
美しいフレスコ画の一部が残っている。
◆ タイトル「聖ラスローの伝説」
壁にはプロテスタント教徒が刻んだと思われるカルヴィン派聖書の中からの引用文
が残されているので、昔はローマカトリックとプロテスタントによって使われて来た、
このことが教会の建築様式が時代によって変えられてきた理由であろう。
<追加>
9月1日と移ろい、我が家の庭から一足先に、夏を終えてしまった花たちをスケッチ。
● 合歓の花
Jul. 05 2020 最盛期
● 秋明菊
Jul. 17 2020 最盛期
これにて「ハンガリー北部の教会スケッチ」は、お終いです。
本ブログへのご訪問、有難うございました。