行きつけの書店の平積みでこの本を見つけた。ずいぶん以前にベストセラーに
なったことは知っているけれど奥付を見ると刊行されたのは昭和24年5月日比谷版
社から出版されて以来、1976年2月10日に文庫初版発行、版を重ねて今もなお、
読まれているらしい。満州で終戦を迎えて昭和21年9月に故郷諏訪に帰りつくまでの
いきさつに息もつけずに読み続けた。平成7年に書かれたあとがきで著者は当時
5歳であとがきが書かれたときには35歳になられ、一児の父でもあるご長男につい
て、引き揚げの話に触れると、黙って席を立ってしまう。五歳の心に、あの苦しは、
それほど鮮烈に焼き付いているのかと思うと、あわれにも思う。と書いておられる。
そのくだりを読んで、私は自然に熱い涙がこみ上げてくるのを覚えた。
そしてそのころ住んでいたS市で御近所に同じころ満州から御夫婦と小学生だった
息子さん二人を連れて引き揚げてこられてその後うちが東京に戻ると間もなくやは
り上京なさって以来、御主人はずいぶん早く亡くなられたが奥様と母は長い交友を
続けていたKさんを思った。2005年に母が逝った後も私に思い出したように便りを
下さって、私もその都度自分で撮った花の写真をはがきにしてお便りしていた。
それが今年に入ってお便りがなかった。気になって入っていらしたホームに電話
して問い合わせると、昨暮に亡くなられたそうである。心に穴があいたような寂しさ
を覚えて御冥福を祈った。
なお、2週間くらいお休みします。