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平成の世に復刻された、少年漫画月刊誌「少年画報」昭和35年度正月号の紹介シリーズも、もうこれで13回目。
付録紹介シリーズとしては、その「11」。
このシリーズも、終わりに近づいてきた。
この号には、全部で12の付録が付いていたが、そのうち10は別冊付録であった。
なので、この号についていた別冊付録の紹介は、これが最後になる。
ちなみに、付録自体は、もう1種類あるので、その紹介はまた後日。
てなわけで、この別冊付録について、書いていこう。
作品名は「とんちゃん」。
作者は浦山しげおさん。
私はこの復刻版「少年画報」を入手するまで、「とんちゃん」という作品名も、浦山しげおさんという漫画家のことも、全く知らなかった。
なので、このネタを書くにあたって、浦山さんのことを調べてみたのだが・・これは困った。
「とんちゃん」という別冊付録の出品関係のページはあっても、作品に触れた記事や、浦山さんという漫画家に触れた記事は、見つからなかった。
なので、なんの知識も持ち合わせていない。
復刻された少年画報を紹介するにあたって、最後の難関かもしれない・・。
そんな私に、この作品について書く資格などあるのだろうか。
とりあえず、この復刻版によって、浦山さんの「とんちゃん」という作品だけは1冊、目の前にある。
そう思い、とにもかくにも、読んでみた。
この別冊付録の表紙の絵柄からも大体推察できるように、これはユーモアファミリー漫画である。ギャグというより、ユーモア。
とんちゃんと、とんちゃんを取り巻く家族や友人たちが、正月に引き起こす小さな珍騒動の数々。
お年玉やお菓子をめぐって、羽つきやカルタで勝負するが、中々思うようにはいかない・・・・そんな内容。
珍騒動とはいえ、今読むとのどかなもんである。
絵柄も、時代の違いを感じさせられる。
現代の刺激に富んだコミックになれていると、多少の物足りなさと同時に、ホッとさせられる作品ではある。
あの時代の風の一部は感じとることはできる。
毒は無く、平和な作品であるといえるし、リラックスして読める作品でもある。
全体的には、ちょっと地味かなという印象はある。
キャラたちはそれなりに暴れているが、もう少しいくつかのキャラに華があれば、印象も変わったかもしれない。
「少年画報」にとっては、看板作品というほどではなかったかもしれないが、ボリュームたっぷりの「本誌+付録」のセットの中で、ボリューム感の一環は担っていたことだろう。
今となっては、「とんちゃん」や「浦山しげお」というワードで検索しても、中々資料らしきものが見当たらないことから、作品も作者も埋もれてしまっている作品であろう。
本誌と付録が完全な形で復刻されたからこそお目にかかれる作品・・・そんな感じだ。
今も昔もコミック界には多数の作品があり、多数の漫画家がいる。
その中では、大ブレイクして、広く世間に認識され、長く覚えられてゆく作品もあれば、逆に埋もれてゆく作者や作品もある。
むしろ、割合的には後者の方が多いであろう。埋もれていった作品の中には、作品の出来や質に対して正当な評価をされなかったまま埋もれていった不運で不遇だった作品もあるのではないか。
埋もれていった作品は、こういう形で復刻されないと、中々お目にかかれないのだ。
実際には、埋もれたまま復刻される機会もないまま、忘れさられたり、消えていったりしている作品の方が多いことを考えると、この「とんちゃん」は、たまたま「少年画報」のこの号が復刻誌として選ばれたからこそ、再び漫画史の地層の中から発掘されたのだ。
そういう意味では、幸せな作品であるだろう。
地層の中に埋もれたままの作品は膨大な量に及ぶだろうから。中には、私のことも復刻しておくれ・・などと思っている作品もあるかもしれない。
そういう意味では、タイムカプセルから取りだされたようなこの作品には「よかったね」と言ってあげたい。
↑ 別冊付録「とんちゃん」の裏表紙。
いやあ、シンプル!