子供の頃に、くれよんで絵を描いた人は多いはず。
そして、くれよんと言えば!
なんといっても、ぺんてるくれよんの世話になった方は多いのではないだろうか。
私もそうだった。
ペンてるくれよんといえば、真っ先に思い浮かぶのは、あのパッケージイラストである。
男の子と女の子が、川沿いの土手、もしくは原っぱみたいなところに向かい合って座って絵を描いている、あのお馴染みのイラスト。
私はこのパッケージイラストが大好きだった。
この絵は元々は、ペンてるの画材で描かれた背景に、宮永岳彦画伯に描かれた少年・少女の絵が合成されたイラストだったらしい。
ぺんてるくれよんは、セットに入っているくれよんの本数によって、パッケージのサイズは違った。
私が一番好きで、なおかつ記憶に残っているのは、横に細長いパッケージだった。
その他、12色くらいしか入っていない、小さなサイズのパッケージもあった。
パッケージのイラストは、小さなサイズのものよりも、横長のサイズのほうが圧倒的に素敵だった。
なにやらそのイラストを見てると、絵の中に自分が吸いこまれていくような気分になった。
ぺんてるのくれよんは、最初に発売されたのは昭和22年らしい。
ただし、その時は、今のようなパッケージイラストではなかったようだ。
その後くれよんは改良を加えられ、やがて昭和30年に、今に続くパッケージイラストに変更され、その後その魅力的なイラストは基本的に変わることなく、今に至っているようだ。
今のペンてるくれよんのパッケージイラストを見ても、確かに昔ながらのイラストを大事に守っているのはわかる。
だが・・・よく見ると、同じ構図、同じ内容のイラストではあっても、微妙に変化はしている。
私がぺんてるくれよんで遊んでいた頃のパッケージイラストでは、子供たちの向こうに広がる青空の青い色が非常に鮮やかで、濃かったと思う。
雲もちゃんと浮かんでいたが、雲の切れ目に見える青空の青色は、雲との対比で余計くっきりと青が引きたっっていた。
写真や資料などで見るよりも、私の印象の中では現物のパッケージの空の青は、濃かった。
一方、今のペンてるくれよんのパッケージのイラストの空は、淡い青色になっている。
私はなんといっても、あの鮮やかで濃厚な青空の青色が大好きだったし、その青空の濃い青には、なぜかなにやら宇宙的なものも感じていた。
なぜそういう感覚を持ったのだろう。当時はそういうことへの探求心は持たなくて、ただただあの青空を直感的に好きでいただけだったが、今改めて、ぺんてるくれよんをここで取り上げるにあたって、少し考えてみた。
すると、すぐに思い当たるものがあった。
私がぺんてるくれよんで遊んでいた頃のパッケージイラストの世界の青空は、あそこまで鮮やかであるということは、当然よく晴れていたということだ。
そう、あのイラストで、子供たちはよく晴れたの空の下で、向かい合っていたのだ。
現実にも当然よく晴れた青空というものはある。
だが現実の空は、いくら青くても、あそこまで濃くはないように思えた。
また、快晴であるということは、天気が良くて、明るい空であるはず。ところが、あの当時のぺんてるくれよんの青空は、青が濃くて、さはど明るい感じはしなかったのだ。白い雲の存在が、全体的な世界感を暗くなるのを防いではいたけれど。
この辺が不思議な感覚だった。明るいはずなのに青空としては明るくない。でも、非常に美的に鮮やかで美しい。
それは、極論すれば、地球上では非現実的な世界にも思えた。
だからこそ・・・そこに私は宇宙的なものを感じていたのかもしれない。
宇宙的・・・とここまで書いてきたが、実は宇宙的であると同時に「深海的」にも思えていた。
となると、あの2人の子供たちは、宇宙的でなおかつ深海的な世界にいたことになる。
宇宙的で深海的・・・などというと、非常に矛盾した表現に思われるかもしれない。
だが、神秘的という言葉を使えば、そこに共通点は現れる。
そう、あれは、非常に神秘的な空の世界でもあった。
日常的なようで実は非日常的な世界で、なおかつ神秘的・・・という表現をしてしまえば、あのイラストに描かれた世界が、地球の大地でもあり、宇宙の中のどこかの惑星でもあり、なおかつ深海の世界であったとしても、少なくても私にとってはおかしくなかったのだ。
だからこそ、子供が宇宙や深海に憧れるように、あの神秘な世界に私は行ってみたくて仕方なかったし、あのイラストを見てると、なにやら吸いこまれそうな気もしていたのだ。
あの濃い青空・・・・当時私のまわりにあった「他の何か」にも通じるものがあった。
その「他の何か」とは何か。それは、考えてみれば、すぐに思い当たるものがあった。
それは、当時の丸美屋の「すきやきふりかけ」のパッケージイラストであった。
当時の「すきやきふりかけ」のパッケージイラストは、牧場に牛がいるイラストで、牧場を青空が覆っていたのだが、その青空が非常に濃い青空であった。しかも、極めて鮮やかな濃い青空。
ぺんてるくれよんのパッケージイラストの当時の青空の濃い青の鮮やかさは、丸美屋の「すきやきふりかけ」のパッケージイラストの濃い青空と共通しているものとして、私には感じられていたのだ。
ぺんてるくれよんのパッケージイラストが、あの「向かい合う少年少女」のイラストになって発売されたのは昭和30年・・と前述したが、実は、初代のそのイラストでは、青空はさほど濃くない。というか、晴れてはいるものの、雲が多い空だった。
むしろ空は雲に隠されがち・・・そんな、少しどんよりした曇り空に近い天気だった。初代から、よく晴れた青空イラストだったのかと思いきや、実はそうでもなかったのだ。
それがその後、より鮮やかな青空に変更され、そして今は淡い青空に代わっている。
今の淡い青空は、より現実的になったということなのかもしれない。
また、全体的なトーンを、明るくしたかったのかもしれない。
これはこれで悪くないし、なにより、少年と少女が向かいあって川べりの原っぱに座って、遠方にはくねる川と晴れた空が広がる・・・というイラストの基本形は一緒。
私が子供の頃に遊んだぺんてるくれよんのパッケージイラストは、さほど変わらぬデザインであり続けてくれている。
そんな「変わらぬ良さ」に、安堵感を覚えるし、親近感も、懐かしさも、覚える。
晴れた空の下に大きな川が流れ、そしてその川べりに立って見る風景は、私は好きだ。
手前味噌になるが、自分のCDアルバムジャケットの写真に川を入れたのは、もしかしたら幼い頃に遊んだぺんてるくれよんのパッケージイラストが今も私の心に残っているからなのかもしれない。
それも、12本入りのセットではなく、20色以上(?)のくれよんが入った、横長のぺんてるクレヨンのパッケージイラストが。
そして、その中では、今でもあの少年と少女が大人にならないままで向かい合い、絵を描き続けている。
きっと、その絵は・・・完成することはないのだろう。
いつまでも。
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