平成の世に復刻された、少年漫画月刊誌「少年画報」昭和35年度正月号の紹介シリーズ、その5。
付録紹介としては、その3。
今回紹介するのは「ビリーパック」という別冊付録漫画で、作者は河島光広さん。
私は、この復刻本を入手するまで、河島さんのことはよく知らなかった。
河島さんは、当時の漫画界において、その画力や構成力でかなり優れた漫画家の1人であったようで、手塚先生もおおいに河島さんを意識していたらしい。
だが、河島さんは1961年に肺結核のために、30歳という若さで他界されてしまったらしい。
・・というと、生れは1931年前後ということになるので、もし長生きされていたら、今現在で80歳を超える年齢の方ということになる。
この「ビリーパック」という漫画も私はこの復刻本を入手するまで知らなかったので、この漫画について少しだけ調べてみた。
主人公ビリーは、少年探偵である。
ビリーとはどういう設定のキャラクターだったかというと・・・
戦前の日本で、アメリカ人ウィリアム・パックと、日本人女性との間に生まれた混血児。
青い瞳を持つ。
父はスパイ容疑で殺され、母は父が捕まる時に殺されている。
戦後ビリーはアメリカに渡り、少年探偵となる。
そして日本に帰国して、彼の活躍が漫画で描かれる・・・そんな設定だったようだ。
当時の時代性は色濃く反映されている設定・・・と言えるのでは。
今も昔も探偵ものは根強い人気がある・・・ということだろう。
この漫画は、探偵アクションものなのだ。
当時も、少年探偵ものはいくつもの作品があった。
まぼろし探偵しかり、鉄人の金田正太郎もそう。江戸川乱歩の小説には「少年探偵団」もあったし。
ただ、この「ビリーパック」を読んでて思ったのだが、主人公ビリーは、他の少年探偵ものほど少年っぽいイメージはない。
むしろ、大人びている。
背は高くてスラッとしているし、全体的にスマートで、等身も大人っぽい。
ファッションは、ハンチング帽とトレンチコートなのだが、その着こなしは「大人の着こなし」って感じで、決して少年っぽくはない。
当時これはかなりオシャレで、クールなキャラクターだったのではないか。
少年というよりも、若者・・という感じだ。
キャラもそうなら、全体的な絵柄も、当時の他の漫画よりも垢ぬけてモダンな感じ。
まあ、今読むとさすがにレトロな絵柄ではあるのだが、当時の漫画の中にあっては、異彩を放つ絵柄だったのではないか。
この「ビリーパック」は、不滅の名作とされている作品で、当時「少年画報」の看板作品の一つだったようだ。
「少年画報」に連載されてたのは、1954年10月号から1961年6月号までらしい。
なるほど・・・ならば私がこの作品を知らなかったのは仕方ない。
長生きされてれば、昭和の漫画界を引っ張ってゆく存在にもなられたことだろう。
その意味では、若くて他界されたのが惜しまれてならない。
あの時代にあって、日本とアメリカのハーフで、背が高くて、大人っぽくて、かっこよくて、「ビリーパック」という、アメコミっぽい名前・・・・当時の日本人が持っていたであろうアメリカへの憧れが、このキャラクターには投影されていた・・ということなのかな。
日本人少年とは思えぬ雰囲気だしね。
↑別冊付録「ビリーパック」の裏表紙。
「まぼろし探偵」「赤胴鈴之助」と共に、「ビリーパック」が少年画報の看板作品だったことが窺い知れる。
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