タイトルにある「境界線」についてまずは書きます。「境界線」は「領域」「価値感」と言い換えてもいいのですが、今回の話では「自分の世界」という言い方のほうがわかりやすいかもしれません。
この「自分の世界」はすごく重要なので、常に人はこの「自分の世界」を守るために生きていると言っても過言ではありません。そしてこの「自分の世界」というのは、自分にとっては「とても心地よい安住の地」つまり、コンフォートゾーンと言えるものですから、その領域への侵入者・攻撃する者に対して警戒し、防衛しようとします。
で、この「自分の世界」が、みんな同じ中身であれば、難しくありませんが、人の個性は十人十色、考え方も様々ですから、警戒・防衛ラインも人それぞれ十人十色でさまざまです。しかもかなりの種類がありますから、すべてを把握することはできません。なので、知らず知らずのうちに警戒防衛ライン、つまり「境界線を越えて領域に侵入したりされたり」ということが起こります。これが人間関係のトラブルや「いじめ」などの一因というわけです。
自分は悪気はなかったのに、自分の言ったことで相手がすごく傷ついた
自分は何も悪いことしたつもりはないのに、相手にすごく怒られた
自分は当たり前だと思っていたことが、相手にとっては嫌なことだった
などは、典型例だと思います。
この「自分の世界」~境界線を越えて侵入されないためには、どういうときにこの境界線を踏み越えてしまうのかを知ることがポイントになります。
「自分の世界」はとても心地よく、安心できる領域です。つまりそこには、自分自身が信じていること、正しいと思っていること、自信をつけたこと、気をつけていること、などがいっぱい詰まっています。
例えば、「私は赤い色が好き」という好みがあるとします。もし相手が、
「あなたはこれから好きな色を青にしなさい。」
と言ってきたとしたら、明らかに境界線を踏み越えて、自分の世界に侵入し、しかもめちゃくちゃにしているような言動です。一方的に相手に自分の価値観を押し付けているからです。これは「評価」の極端な例です。
あるいは、
「あなたは赤い服を着るより、青い服の方が似合うよ。」
と言われたとします。一見、やさしく「アドバイス」をしているかのように見えます。しかし、これも「赤が好き」という相手の世界に侵入して、青い服への変更を要求しているとも取れますから、場合によっては関係悪化のもととなります。なので、「アドバイス」は慎重であるに越したことはありません。「アドバイス」は「評価」の典型例でもあります。
ところが、同じ「青い服が似合うよ」と指摘するとしても言い方を変えるだけで、相手の境界線を侵入しなくても済みます。例えば、
「あなたの今日着ている赤い服ステキね。でも、私は青い服もすごく似合うと思うよ。」
という言い方なら、相手の領域(赤い服を好む)に侵入することなく、自分の考え(領域:青い服も似合うと思う)を伝えていることになり、対立の可能性がぐっと減ります。
これは、「お互いをリスペクト」している1つの例で、【アサーション】というコミュニケーション方法を使っていますが、このコミュニケーションが自然にできるようになる社会が理想的だと私は思っています。ですが、今の社会でも、アサーションを意識してコミュニケーションすることで、かなり対立を防ぐことが可能になります。
そこで、次の話ですが、
「私は一度引き受けたことは、必ずあきらめずに責任をもってやり遂げる」
という信念を持っているとします。そこに例えば、すごくいい加減でいったん始めたこともすぐ飽きてやめてしまうような人を目の当たりにするとどうなるでしょうか?もしかしたら、
「あの人はいい加減な人」
「あの人は責任感のない人」
「あの人は打たれ弱い人」
「あの人はダメな人」
と、相手を「評価」してその評価のフィルターで「決めつけて」相手を常に見るようになるかもしれません。
しかし、「飽きっぽくて始めたことをすぐやめてしまう」相手が、実は「柔軟性があって決断力があり行動が素早い」人である可能性もあります。つまり自分がしている相手に対する評価は、あくまでも「自分の世界」での話であって、その評価で相手に接すると、相手にとっては「境界線に侵入して相手の価値観を押し付けられている」と解釈される可能性があります。そうすると相手は自分を守るために「防衛」をしますから、場合によっては対立することになるかもしれません。「自分の正しさ」「自分の価値観」をいくら正論で主張しても、なかなか相手に理解してもらえないことがあるのは、このためです。
それから、相手を「評価」するということは、その評価をすることによって自分の世界を守っていることになります。つまり自分の世界の中にある「こうあるべき」という基準に従って相手を評価し、その基準に合う人であれば、自分の世界は守られて安心できますが、基準に合わないと、自分の世界に侵入されてしまう危険性があるので、「評価」をして相手に変化を強要したり、相手を避けたりして自分の世界を守ろうとするわけです。
ということは、相手を「評価」する人は、自分の世界への侵入を「怖れている」人ということになります。侵入されるのが「怖い」ということは、本当の意味での自信がない人なのです。「怖い」から「守る」。「守る」ために相手を「攻める」。なので、「評価」を手放すということは、「怖れ」を手放すということになり、逆に「安心」を手に入れることができるわけです。
実は、自己肯定感が高い人は、この十人十色・多種多様な「自分の世界」、つまり自分の中に「境界線」をしっかりと引くことができています。そして相手の「境界線」を侵すことなく、「お互いをリスペクト」することもできます。
■参考図書
自己肯定感、持っていますか? あなたの世界をガラリと変える、たったひとつの方法 ~水島広子
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