昨日の大会、最もドラマがあったのは10番、5年生だった。
新たな環境へと送り出せると、心から思えた。
それぞれに個性があるのが今年であるが、彼女もまた、なかなかこの世界に存在しない人間性を持っている。
2年前、3年生で入部した彼女は、1人だけ試合に出られず泣いていた。
頑張っているけど、活躍はできなかった。
当時「頑張れる」という領域の選手は僅か3人だったことを今でも覚えている。
彼女と、現小6の4番と7番。
それでも、10人にも入れなかったことは彼女にとって応えたことだろう。
彼女よりずっと頑張ってない子が試合に出て、自分は出られない…
でも出たからといって、負けた試合が勝ちになったかといえばそうではなかった。
「下手だから出られない」
それだけの事実がそこにはあって、それでも「頑張れる」を続けたことはすごいと思っていた。
4年生になって、新たな仲間と出会う。
今はもう、新たなチームで頑張っている旧10番。
彼女もまた、すごい選手。
何がすごいかといえば、成長速度。
とにかく吸収がはやくて、スラッシャーの気質もあった。
10与えれば8.9ができる子だった。
それでも俺は、なるべく彼女をゲームに出した。
人間性が実力を越えたからだ。
そして5年生になり、10番に先を越されてしまう。
5年生になってからの時間、9番は着実に力をつけていた。しかし10番はその遥か先へと進んだのだ。
スコアシートには歴然の差があらわれ、とうとう10番は大会でもMVPになるほど成長を遂げた。
優秀選手は4番と7番、彼女の名前はそこにもなく…
3年生からの努力は、この場所で実らなかったと捉えてしまうこともできる。
それがあったからこそ、あの大会は手放しで喜びきれなかった。
10番は本当にすごい、しかし4番と7番はMVPになれず、そして9番はそのどちらにも選ばれなかったから。
それでも、あの日からも、今も戦い続けている。
10番との別れの先に、得たものは大きかったと思う。
「彼女がいたであろう世界よりも、彼女がいない今という世界をより良くすること」
これは俺が女子全体にかけた言葉。
別れを、寂しさではなく一歩進む勇気と捉えることだ。
10番がいなければ、7番も病欠となった世界。
誰であれ、勝つことが難しいと感じてもおかしくはない。
俺は彼女ら、特に9番がどんな世界を見せるか楽しみだった。
そしてこの2.3年の旅路の先に、7点も取ったという「成長の事実」と、敗北という「一歩進むための事実」が残った。
抑えきれない彼女の涙の意味は、この旅路への悔しさとやるせなさ。
本当にここまでよく戦っていると思う。
シュートが届かないという次元から、自分でクリエイトするシューターになる場面もあり、スリーだって入る。
しかしそれだけの成長があっても、負けるという事実は残酷だ。
だから俺は泣いた。
俺はそれをよく知っている。
彼女の姿を見て、高校時代の俺を思い出したんだ。
自分で言うのも変だが、あの時間は相当練習した。
誰よりもやった。
誰よりもやったから、悔しくて仕方なく、その道のりで交わした約束までも果たせなかったことがやるせなかった。
あの子は、きっとあの日の俺と同じだったんじゃないかな。
だから、次に進むべき道も知っているはずなんだ。
あの日負けたということだけが、俺がここへ来た理由。
バスケットへの夢は諦めきれなかった。
大学生は自分が楽しむことよりも、高校までの時間でやり切れなかったことをやり切ると決めたから。
このミニバスでやりきれなかったから流した涙は、きっと彼女がこれからも進み続ける理由になると俺は信じている。
俺が世界で1番好きなこの曲の歌詞は、彼女にピッタリだ。
「破り損なった 手作りの地図
印をつける現在地
ここが出発点 踏み出す足は
いつだってはじめの一歩」
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