アマチュア無線局 JH0FHB

25年越しの14MHz SSB無線機の製作

誘導リアクタンスの測定

2017年06月10日 | アマチュア無線


【2017.06.10】
上掲の写真は、コイルと呼ばれる電気部品の一例である。
これらは、導線をぐるぐると巻いたもので電子機器の内部に多用されている。
コイルには、インダクタンスと言う電気特性が有り、単位はH(ヘンリー)を用いる。
さて、これらのコイルは直流的には抵抗を殆ど持たない、ただの線であるが交流的な世界になると不思議な動作をする。
不思議な動作の一つに、誘導リアクタンスと呼ばれる電気特性が有る。
これは、印加する信号の周波数によって抵抗値が変わると言う特性で、周波数が高くなるほど抵抗値が増える。すなわち可変抵抗器と化するのである。
電子機器の、ボリュームの様な働きと言ったらよいか。
この誘導リアクタンスを体感してみたくなり方策を検討していたが、ある程度結果が出たので、私の失敗談も交えて紹介することとした。

<まずは失敗談から>
考え方の基本は、下の回路図で説明する。

今回の測定実験に使用する部品は、3.3μHのインダクターと、1KΩの可変抵抗器である。
信号の周波数は、10.7MHzを基準として周波数の変化によるコイルの誘導リアクタンスの変化を測定しようと言う訳だ。
10.7MHzと言う周波数に対する3.3μHの誘導リアクタンスは、方程式によって約220Ωである事は分かっている。
どの様に測定するかと言うと、信号を入力して可変抵抗を変化させる。
①ー②間の電圧(電圧A)と、②ー③間の電圧(電圧B)が同じ値になった時の可変抵抗器の抵抗値が、その周波数に対する誘導リアクタンスである。
と、ここまでは良かったが、ここから間違った方向に考えを進めてしまった。
どの様な間違いかと言うと、電圧Aは単純に電圧Cの1/2だと思い、電圧Cの値を測定してから、その半分の値になる様に可変抵抗を変化させて測定したのである。
この時の、測定結果をグラフ化したものを紹介する。

周波数が高くなるに従い、理論値と実測値の差が広がっていく様子が分かる。

<何故この様な結果に・・>
電圧C=電圧A+電圧Bと言う考えが間違いで、単純な足し算で計算する事は出来ない。
電圧A~Cの関係を図で表すと、下図の様なベクトル図になる。

例えば、電圧Cの値を求める場合は三平方の定理によって、計算する事になる訳だ。

<では、どうすれば良いのか>
電圧Aと電圧Bが同じ値になる様に、可変抵抗器を調整する事に徹する事である。
もし、同じ事を試そうとするのであれば可変抵抗器は500Ωのものをお勧めする。
1KΩでは電圧の合わせ込みが、少々しんどく感じられたからだ。

ブレッドボードに部品を取り付けて測定している様子。
たったこれだけのものだが奥が深い。

こうして、測定方法を変えて測定した結果が下のグラフである。
最初のグラフと比較すると、かなり理論値に近づいた。

各測定値に50(Ω)を足せば、ほぼ理論値になりそうである。
これで漸くコイルが抵抗として作用している様子が体感できた。

この次は、コンデンサを使って容量リアクタンスの測定をしてみるつもりだ。
苦労はするが好奇心が有れば、前進できる。

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5 コメント

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Unknown (Unknown)
2021-11-19 09:15:46
50Ωはファンクションジェネレータの内部抵抗ですか?
返信する
内部抵抗 (bhf0hj)
2021-11-19 21:50:29
こんばんは

この実験から4年も経っていたとは驚きました。
つい昨日のことの様に思い出せるからです。
仰る通り、50Ωは信号発生器のインピーダンスです。
使用したのはパナソニック製のSSGで型名はVP-8179B10です。
出力インピーダンスが50Ω⇔75Ωの切り替え式です。
さて、75Ωにしたらどうなるのか?
試して見たくなりました。
大変貴重なコメントを頂き感謝申し上げます。
今後とも宜しくお願い致します。
返信する
久しぶりの電流の話 (onecat01)
2021-11-30 23:47:49
 bhf0hjさん。

 こんばんわ。久しぶりの、電流の話に感激しました。さすが、貴方です。相変わらずなんのことか、さっぱり分かりませんが、楽しい説明です。

 私のコメントは、貴重なものではありませんから、感謝されないと思いますが、電気の話になりますと、コメントせずにおれなくなります。

 一つには、電気や無線の話をするときの貴方は、元気があふれています。エネルギーが、千葉まで伝わってきます。

 「bhf0hjさんは、元気だな。よし ! 私も頑張ろう。」と、そんな気になるからです。

 海苔のご飯や、夢じいとし、こいしさんの話も懐かしくて楽しいのですが、私は電気の話が好きです。

 色々なことを知っている、楽しい奥様にもよろしくお伝えください。
返信する
貴重なコメント (bhf0hj)
2021-12-01 07:07:47
onecat01さん おはようございます

コメントを頂き、私も元気が出ました。
千葉までエネルギーが届いて嬉しいです。
また電気の話を書きたいとおもいます。

では、今日も一日元気でいきましょう。

貴重なコメントコメントをありがとうございました。
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お詫びと訂正 (bhf0hj)
2021-12-04 07:54:22
11月19日の私のコメントの内容に誤解を招く表現が有りましたので訂正します。
「仰る通り、50Ωは信号発生器のインピーダンスです。」の部分です。
理論値との差が信号発生器のインピーダンスに起因すると誤解を招きます。

使用した計測器の内部抵抗(インピーダンス)は50Ωでしたが理論値との差とは無関係です。
「信号発生器のインピーダンスは50Ωでした。」とするべきでした。

後日 続編の記事を投稿しますのでご覧いただければと思います。
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