国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

昭和33年10月7日 第30回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号から抜粋 第4話

2023-06-25 22:45:15 | 国鉄関連_国会審議

かなり間が空いてしまいましたが、再開したいと思います。
郵政でも、全逓(国労共々総評の労働運動を引っ張っていた存在であり、そうした意味では国労と切り離して考えることは出来ない組合であり、実際に昭和30年代から40年代にかけて過激な運動を繰り返していた組合でもありました。

この記事では、ILO87号条約、「結社の自由及び団結権の保護に関する条約」を批准させることで、公労法四条三項が削除されるのではないかと言うことで、政府も批准には慎重になっていたわけですが。
公労法四条三項とは、どのような法律なのでしょうか。

その前に、公労法第4条の条文をまず見ていただこうと思います。

(職員の団結権)
第四条
1 職員は、労働組合を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。
2 委員会は、職員が結成し、又は加入する労働組合(以下「組合」という。)について、職員のうち労働組合法第二条第一号に規定する者の範囲を認定して告示するものとする。
3 前項の規定による委員会の事務の処理には、委員会の公益を代表する委員のみが参与する。
4 前条第二項及び第三項の規定は、前項に規定する事務の処理について準用する。

まずこれだけ見ても、わかりにくいのですが。

公労法第4条第二項で、「労働組合法第二条第一号に規定する者の範囲を認定」としてあるのですが、労働組合法第2条は、以下のように記されています。(但し、以降は省略)

第二条 この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体を
いう。

とされており、ここでの職員の範囲を郵政職員と限定しているわけですが、ILO87号条約では、「労使団体(連合体も含む)は、規約を作り、完全な自由のもとにその代表者を選び、管理・活動を決めることができる。行政機関はこれらの権利を制限したり、その合法的な行使を妨げたり、また、労使団体を解散したり、活動を停止させたりしない。」と書かれています。

仮に、87号条約が批准されてしまえば、全逓は(国労も同じですが)、解雇者を委員長として据えること事態が合法になると言うことで、これを避けようと言うことで、当局もかなり抵抗したと言うことになるわけです。

全逓は最近ILO条約87号、これの批准促進運動をあっちこっちでやっておるわけでありますが、これが促進されて、それに伴って公労法四条三項も削除されるというような法律改正がやがてなされるであろう。従って現在の違法状態をそのまま続けて無期限定時退庁の戦術を続けておって、結局法律改正を待って、今までの違法行為を合法的なものにする、そういう作戦もあるやに伝えられておる。こういったことは一応考えられそうなことであります。どうも世の中では悪いことをしてやがて、次の皇太子様の御結婚等によって大赦や特赦を願うというような不心得者もあるのでございますが、こういう犯行者と、これは一思理が通じておるもののように思われるのであります。従ってこういうことは私は許すべきではないと思います。

当局、政府共に全逓の暴走を一番気にしていることになる訳ですが、これに対して労働大臣は一定の理解示しつ当局の対応を支持しています。

倉石国務大臣 全逓労組に対しての郵政当局の態度はりっぱだと思っております。
 87号条約の批准につきましては、この前本会議でも申し上げました通りでありまして、私どもは現存しておる法律を国民が守る義務があるということは、法治国家として当然のことであります。そこで特に違法な行為をやっておられるということについてはまことに遺憾に存じておるのでありますが、ただいまお話のように公労法の適用を受けておる労働組合で、わざわざ藤林あっせんというふうなもので国労がああいう態度をとって、正常化に協力しておられるときに、全く違った態度をとられるものが、同じ公労協内にあるということについては、私どもはまことに遺憾に存ずるのでありまして、一日も早く法律を守って、国民に安心をさせてもらいたいと考えておりますが、そういうような現在の段階では、それに関係のありますILO条約の87号の批准ということを論議すべき段階ではない。このように政府は考えております。

ここで、藤林あっせん案という言葉が出てきたのですが、この時の藤林あっせん案というのが、労使関係 の正常化 のために、解雇処分を受けた者以外を指名することを示したもので、国労はその斡旋を受け入れる事になる訳ですが、この国労の対応(斡旋案を受け入れ、解雇者を委員長などの要職に就かせないこと)を評価しているわけです。

これで見る限りでは、当時の全逓は国労以上に強固に労働運動に浸っていたと言える反面、国労の方は民同左派が徐々に強く左傾化していく中で、辛うじてバランスを保っていたようにも見受けられます。

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以下は、議事録から抜粋したものです。

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 ただ世上言われているところでは、全逓は最近ILO条約87号、これの批准促進運動をあっちこっちでやっておるわけでありますが、これが促進されて、それに伴って公労法四条三項も削除されるというような法律改正がやがてなされるであろう。従って現在の違法状態をそのまま続けて無期限定時退庁の戦術を続けておって、結局法律改正を待って、今までの違法行為を合法的なものにする、そういう作戦もあるやに伝えられておる。こういったことは一応考えられそうなことであります。どうも世の中では悪いことをしてやがて、次の皇太子様の御結婚等によって大赦や特赦を願うというような不心得者もあるのでございますが、こういう犯行者と、これは一思理が通じておるもののように思われるのであります。従ってこういうことは私は許すべきではないと思います。これは労働大臣にお伺いいたしますが、先般の本会議の席上で一応この問題については滝井先生の御質問にお答えになったのでありますが、ここでもう一ぺん、私はそういうように思うのでありますが、そういう大赦、特赦を待つ犯行者と同じような心理を持つことに力をかすようなことにならぬようにしなければならぬと思うのであります。ILO条約、これは従来から倉石労働大臣もそうでございましたし、前の石田大田もそうでございましたが、ILO条約87号の批准については、労働問題懇談会の結論待ちだということが言われております。その小委員会が一応結論を出して、公労法四条三項はILO条約87号に抵触するようだという結論を出したようでありますが、それが新聞紙上に発表されましたがために、もうすぐにでもILO条約は批准され、四条三項は削除されなければならぬ、やがて削除されるであろう、こういう感じを持っておる者が国内に相当あったのではないか、そういう期待を今のような大赦、特赦待ちのような人たちが持っておるのではないか、こういうふうに思うのでありますが、この点について重ねてでありますが、労働大臣の御見解を伺いたいと思います。
○倉石国務大臣 全逓労組に対しての郵政当局の態度はりっぱだと思っております。
 87号条約の批准につきましては、この前本会議でも申し上げました通りでありまして、私どもは現存しておる法律を国民が守る義務があるということは、法治国家として当然のことであります。そこで特に違法な行為をやっておられるということについてはまことに遺憾に存じておるのでありますが、ただいまお話のように公労法の適用を受けておる労働組合で、わざわざ藤林あっせんというふうなもので国労がああいう態度をとって、正常化に協力しておられるときに、全く違った態度をとられるものが、同じ公労協内にあるということについては、私どもはまことに遺憾に存ずるのでありまして、一日も早く法律を守って、国民に安心をさせてもらいたいと考えておりますが、そういうような現在の段階では、それに関係のありますILO条約の87号の批准ということを論議すべき段階ではない。このように政府は考えております。
○大坪委員 これで終りますが、今の労働大臣の御答弁を伺って、そうでなければならぬと思います。特に現在のわが国の国内の諸情勢を見てみますと、労働慣行がまだやっぱり成熟せずと言われておる。法律無視あるいは集団の威力による圧力のかけ方、いわゆる実力行使、そういうものでまた特に政治的目的を達する、そういうことを、その目的、行動を労働組合がもう忌憚なくとっておる。力をもて、法と秩序を乱すということを、日常茶飯事のごとく心得て実行しておる組合のある現状においては、法律秩序、公共の福祉を守る上から、軽々にILO条約を批准するというようなことによって彼らの非違を遂げさせるようなことがあってはならぬ、かように考えるわけであります。私は全逓について先刻要望的な意見を述べましたが、ほんとうに全逓の諸君が総評の幹部の顔ばかり見ないで、国民全部の顔を見て良識を発揮されんことを私は念願してやみません。私がいろいろ今申し上げましたのも、どうか日本の労働運動が、先刻もたびたび申しましたように、国民も納得し、世界の良識ある人々も了承するような正常な状態に早く返って、国内の秩序を保つとともに、国の生産を高める、そういうことによって国民全体の福祉の向上に寄与するようにあってもらいたい。せめて全労会議の線に一つ、これは総評の諸君にはお気の毒でありますけれども、その程度の良識を持った労働組合に一つ成長をしてもらいたいという念願を持ちますがために申し上げた次第でございます。
 いろいろ要望も申し上げましたが、私どもは倉石労働大臣に期待することがきわめて多いのでありますから、どうか一つ十分に御検討のほど願い上げます。
 私の質問を終ります。
○五島委員 大坪委員の貴重ないろいろの質問について、われわれは非常に勉強になるのですが、ここに出席された委員の顔ぶれを見ると、自民党五名、社会党六名というようなことで、議事規則の運営通りに正常化されていないというように思うわけです。これから慎重に真剣に重要法案を審議するに当って、こういうような出席ではどうもおかしいと思うのです。そこで今後はできるだけたくさん、やはり二十名以上の出席をとれるようにしなければならないと思うのです。この間の理事会でもよく相談し理解し合った通りで、ほんとうに慎重に勉強しなければならぬ。そこでたくさんの者が出席して審議に参画する、こういうようなことですが、きょうは大坪さんがせっかくいい質問をされておる過程において、四名とか三名とか、御婦人が二人で、自民党の男性の方が一名、こういうことではさびしい。それで今後はたくさん出席されなければこういう委員会が進行されないと思うのです。この点について委員長は十分努力してもらいたいと思います。
○園田委員長 委員各位の御精励を望みます。
 午前中の質疑はこの程度にとどめます。午後は本会議散会直後、約二時半と予定いたします。二時半まで休憩をして、小林進君の質問から始めます。
    午後一時五分休憩

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