1972年
父の本箱で見つけた。
私が20歳の時の作品だ。社会現象にもなり、ボケ老人のことを〈恍惚の人〉と呼んだものだ。
当時も読んだはずだが、内容は殆ど忘れている。
間違いないのは、介護する側としては読んでも、される側の自覚はなかったこと。
それから50年、今やこちらは70歳を過ぎた。
4人の親は、みな介護されることなく他界した。なので、今ひとつ実感が湧かない。
いずれわが身であるということ、に。
あまり考えないようにしよう。
なるようにしかならないし、ボケて困るのは近親者、当人は至って気楽なのだ。
ボケ気味の夫が羨ましいくらいだ。
死の近い老人が見上げる泰山木の白い花。
ふと、6月に会った友人が、新幹線の車窓で、大きな白い花を見かけたと言っていたことを思い出す。
きっとこの花だ。
そんな連想しか浮かばないのは、まだボケることが身近なことではない証と思うことにしよう。
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