偶然見かけて、
何となく見始めて、
気付けば最後まで観ていた。
フィンランド・ヘルシンキが舞台らしいことはわかった。
確か解説にあった。
でも、映像にそれらしさはなく、
地味で、
美男美女は出ず、
難民と高齢者離婚を背景にした真面目な作品だった。
石炭に埋もれて密入国したアレッポは、シリア難民。言葉にも不自由している様子。フィンランドに来たのは全くの偶然で、追われて隠れた貨物船がヘルシンキ行きだったのだ。
一方、冴えない中年男ヴィクストロムは、鍵と指輪を女の前に置いて、家を出る。
女は黙って酒を飲み、指輪は灰皿に捨てる。
ずっと無言だ。
なのに状況がわかってしまうのが、すごい。
2人の男に、はじめ接点はなく並行して描かれるが、シリア難民の方が行き場をなくしてゴミ捨て場を寝ぐらにしようとし、ヴィクストロムと出会う。
彼も含め、フィンランドの人たちは地味に暖かい。
難民を突き放さない。
過度に甘やかしもしない。
その空気感がよくて、気付けば癒されていた。
シリア難民のアレッポは、ネオナチの男に襲われるし、警察は杓子定規だし、決して優しい国ではないのに。
いいところも悪いところも描いて、淡々としている感じがいかにもフィンランド的だと思った。
見終えた後にアキ・カウリスマキ監督と知る。
兄のミカ・カウリスマキの『世界で一番しあわせな食堂』もフィンランド的善良さの溢れる作品だった。
どこか時代遅れで、洗練されていなくて、気取らなくて、普通に生きる。
なかなかそれが難しいと最近思うから、余計心に沁みたのかもしれない。
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