平和をたくす紙芝居
―ふうちゃんのそら―
原 案 中峠 房江
脚本・画 よこみち けいこ
監 修 呉かみしばいのつどい
《創作の経緯》
ふうちゃんが7歳日本は戦争中でした。そして7月1日の呉大空襲で、大好きだった町も父も奪われ、命からがら生き延びたのです。
これまで自身の戦争体験を、まわりの方や小さい子どもたちに語ってこられました。
そして「空襲の体験を通して、平和な子どもの未来に希望をたくせる紙芝居を作りたい」という長年の思いを形にしたのが『ふうちゃんのそら』です。
脚本・画を担当した地元・呉市在住の紙芝居作家よこみちけいこさんと、呉かみしばいのつどいの仲間とで、何度も話しあい、演じあい作品が仕上がりました。
紙芝居は、花火大会の夜、おばあちゃんが孫に当時の体験を語る場面から始まります。
空襲の記憶から花火の音がこわいおばあちゃんの手を、孫がぎゅっと握りしめ「だいじょうぶよ」と寄り添う場面で終わります。
戦争の怖さや悲惨さを表現するだけでなく「引き継いでいくこと」と「命をつないでいくこと」を子どもから大人まで伝えられる作品になるよう、心をつくしました。
《地域への広がり》
昨年7月1日、ふうちゃんが逃げ込んだ防空壕跡地での慰霊祭で、紙芝居『ふうちゃんのそら』を演じました。
近所の保育園の子ども達も参加しました。その日から、保育所・幼稚園、小学校や児童会、大学、おはなし会や図書館、老人会や高齢者施設など約80カ所で演じる機会をいただいています。
(幼児から小学生は、約4,600人)
紙芝居『ふうちゃんのそら』は、2歳の子どもから観ることができます。
小さい子ども達は、紙芝居を観終わると中峠さんのところに来て「ほんまの話じゃったん?」と聞きにきます。
涙ぐみながら、一緒に観ていたお母さんが「子どもから戦争のことを教えてと言われて、どう話したらいいか悩んでいました。私達の住んでいる呉でも、空襲があったんですね。このお話しから、始められます」と話されました。
私達は、できれば子ども達だけでなく、若い世代のお父さんやお母さんにも、一緒に観てもらえるようお願いをしています。
小学6年生からは
「戦争は悲しみだけが生まれてしまうと思った。明日と未来が平和になるために、私もできることはなんでも頑張りとおし、みんなで世界を平和にしていきたい」と感想がありました。
中学生からは「私もいつか、この紙芝居を伝えていきたい」と、手紙が届きました。
高校の放送部は『ふうちゃんのそら』を題材に、ビデオメッセージを作成し全国大会に出場します。
高齢者の方々は、「初めて自分の話をするんじゃが…」と、呉空襲の体験を堰を切ったように話しはじめられ、「これを孫に観せたい」と言ってくださいます。
この紙芝居が、世代を超えて人と人とをつなぎ、次の世代へと手渡っていくことを願っています。
いつも あたりまえのように広がる空。
この空を みあげることすら こわくて こわくて、
いつも下を向いて ふるえている子どもたちが たくさんいた、
そんな時代がありました。
ふと 空を見上げて「ああ、きれいだなあ、きもちいいなあ」と思う、
このあたりまえのことが とても幸せな ことなのです。
(『ふうちゃんのそら』から抜粋)
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