真似屋南面堂はね~述而不作

まねやなんめんどう。創業(屋号命名)1993年頃。開店2008年。長年のサラリーマン生活に区切り。述べて作らず

歴史は嘘だ。本当のことを知っている人は話さない~甘粕正彦 乱心の曠野

2008-10-26 | 読書-2008
『甘粕正彦 乱心の曠野』佐野眞一2008年

ようやく図書館の順番が回ってきた(笑)。
甘粕事件?大杉事件?
巨匠は当然、大杉事件と記すわね。

甘粕のご長男から詳細な資料提供や証言を得た事が大きい(あとがき記載の通り)。
真実に迫ろうとする巨匠の迫力、人間的魅力がご長男の信頼を勝ち得たのだろう。

驚異の取材力に裏打ちされた圧倒的な迫力!
関係者の縁者らを突き止めようとどこまでも追いかけてゆく、優秀な猟犬のようなアシスタントがついているんだろうな(取材スタッフはあとがきで掲名)。

読者は一緒に謎解きに参加しているような気持ちになる。
たとえば:
大杉事件の罪をかぶって服役した刑務所から仮出獄した甘粕。
憲兵の護衛つきで温泉に潜伏していたのだが、マスコミ各社の取材合戦は過熱。
ついに甘粕の所在を突き止めて単独インタビューに成功した新聞記者は、湯治客を装うために子供を同行していた。
記者の子供を膝に乗せてインタビューに応じる甘粕の写真を載せたA新聞の大スクープ!

大正15年に数え年4歳だった記者の長男、生きていれば80代半ばになるはずだが・・・。
その記者の縁者の筋から、ついに健在の長男の所在を突き止め、インタビューに成功する。
巨匠のチームが大先輩の新聞記者への尊敬をもっていて、記者が甘粕のインタビューにかけた情熱に負けない執念で記者の子のインタビューに成功する、のだね。

巨匠の取材ターゲットになると、永年の胸のつかえがすっきりしたり、親の生涯に関して持っていた疑問が解けたり、関係者を驚嘆させる名探偵のような場面もあるな。
「お話しすることはありませんから、ありません」とのスタンスを崩さない人もいるが、まあ皆さんそれぞれですから。

それにしても、満州でぶいぶい言わせておった人々は、さぞ面白かった事だろう。
(地元住民は塗炭の苦しみ・・・、はあっただろう。それはひとまず措くとして、だが)

進駐軍として戦後日本に乗り込んで仕切っていた連中も、同様にさぞ面白かっただろうと思うが。
与えた憲法を一切いじらずに不磨の大典?のように大事に大事にしたのは予想外?(笑)

あわせて読みたい(以前読んだぞ):
阿片王―満州の夜と霧―
2005年(文庫2008年)
ところでさ、活動中の作家の作品を紹介するのに「最高傑作」と言ってしまうのは如何なものか。
「いや、自分が担当したこの本が出た時点では、ということですから、わっはっは」と言い逃れられてしまうかな。

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