真似屋南面堂はね~述而不作

まねやなんめんどう。創業(屋号命名)1993年頃。開店2008年。長年のサラリーマン生活に区切り。述べて作らず

『海洋をめぐる世界と日本』改め、『海が日本の将来を決める』 (村田良平さん 2006年)

2010-11-08 | 読書-現代社会
故村田良平氏の著作を漁る。

1994年退官。1994年―2000年外務省顧問。
1995年―98年青山学院大学国際政治経済学部教授。
2000年―2005年日本財団特別顧問。

海が日本の将来を決める
村田 良平【著】
成山堂書店 (2006/01/28 出版)

"平成13年には
「海洋をめぐる世界と日本」を著しています。本書は、この本をベースにして近年の海洋における様々な変化を取り入れ、全面的に内容を改めたものです。"

じつは、読む前は、退官後に著者が在籍されていたという日本財団のスタッフが書いたものなんじゃあるまいかぁ?とも思っていたのだが、とーんでもない。
著者の深い学識と幅広いご経験が投入された労作とわかる。

「海洋をめぐる・・」(2001年)とも対照してみたのだが、同じ章・節でも(歴史上の出来事の説明などは同じだが、)その後の事態の展開等を踏まえてきめ細かく見直され、丹念に書き改められていることがわかる。
事態の重要性にかんがみて、より詳細に記述されたと考えられる事項もあり(竹島など)。

扱っている範囲が広いので、個々の記述はさらりとしたものになる傾向は当然であり、興味を持った読者は関連資料を漁る旅に出ればよい。
そのために参考図書リストもしっかり添付されている。

著者が長逝された現在となっては、もう再改定版が著されることはないのだと・・・。
著者の教えを受けた青山学院大の学生らは、十分にその教えを吸収したかな。

海洋をめぐる日本の戦略 講師 村田良平氏

村田良平大使を偲んで[桜H22/9/10]

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以下は細かい話であり、どうでもいい(本書の意義をいささかも損なうものではない)のだが、当店の過去エントリとの関係もあるもんで、えへへ・・。

1.1894年の豊島沖海戦で、清国兵を輸送中だった英船「高陞号」が「ジャーディン・マジソン」の所有と記載している件。
Mathesonを、マジソンとは読まないでしょう。

豊島沖海戦(ほうとうおきかいせん)
「高陞号」は、戦争準備行動として仁川に清国兵約1100名を輸送中であった。第1遊撃隊司令官の命により「浪速」艦長の東郷平八郎大佐は「高陞号」に停船を命じて臨検を行おうとしたが、清国兵が停船命令に従わないため、「高陞号」を撃沈した。この時、イギリス人船員ら3人を救助し、約50人の清国兵を捕虜とした。

Sinking of the Kow-shing
The Kow-shing was a 2,134-ton British merchant vessel owned by the Indochina Steam Navigation Company of London, commanded by Captain T. R. Galsworthy and crewed by 64 men. The ship was chartered by the Qing government to ferry troops to Korea; the Kow-shing was on her way to Asan to reinforce Chinese forces there: 1200 troops plus supplies and equipment were onboard the vessel. A German artillery officer, Major von Hanneken, acting as an advisor to the Chinese, was also aboard. The ship was due to arrive on 25 July.

で、そのインド‐チャイナ・スチーム・ナビゲーション社と、ジャーディン・マセソン社の関係。

Indo-China Steam Navigation Co.
(Operated by Jardine, Matheson & Co.)


当時の新聞記事(当初の、「日本はひどーい!」の時点):
SINKING OF THE KOW SHING; DENOUNCED IN ENGLAND AS A BARBARIC BUTCHERY.
1894.7.31付ニューヨークタイムズ
英国の新聞ではなく米国紙だが、ロンドンでの世論を紹介している。
(ボタンで切り抜きに飛ぶ)

以前、ジャーマン・マディソン商会という記述が某書籍中にあったが、ジョージ・マディソン商会も某サイトに登場していると知る。

「ジャーディン・マセソン」が現代日本で認識されていないことのあらわれというべきだろう、かな。
日本人にちゃんと呼んで(読んで)もらえない会社・・
ジャーディン・マセソン(Jardine Matheson Holdings Limited, 怡和控股有限公司)

もしかして、この印象が強い?
関係ないか(笑)。
-当初貼ったページがリンク切れのため、2011年12月差し替え-

2.クラカトア(またはクラカタウ)の19世紀の噴火を「1833年」と記載している件。
1883年である。

3と8の見間違え?
海洋・航海関係に詳しい日本財団および版元は、校正に万全を期すべきだ。
「海洋をめぐる・・」から、「海が・・」に改訂された際にも改まっていない(マディソン同様)。

クラカトア大噴火(6世紀?と19世紀)の著者そろい踏みのTV番組にコーフン?

ジャワ島のムラピ山はたいへんなことに。
"Mount Merapi" : AFPBB News - 記事検索

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