【書評】産経新聞上級専門委員、気仙英郎が読む『バルチック艦隊ヲ捕捉セヨ 海軍情報部の日露戦争』稲葉千晴著
薄いブックレットは講演の記録(後に所属大学の紀要に発表)の模様。
ブックレット記載のエピソードが単行本に生かされている。
当時の日本海軍の情報収集の徹底ぶりが描かれ、著者は現地に赴いてその足跡をたどった。
国家の存亡をかけた(負けたら本当に危ない)戦いを前に、出来得ることは何でもするのだとの意思統一が官民でできていたことがわかる。
<重箱の隅>
有名な伊集院信管のくだりで、「砲弾発射後に信管が自動的に外れる」との記載(ブックレット及び単行本共に)は、何事かと読者を驚かせる。
信管の安全装置が、であろう。(信管が外れてしまっては兵器にならない)
「砲弾が飛んでいるうちに、尾部のネジが回転して安全装置をはずすのが特徴」
「一方で、鋭敏すぎるため扱いが難しく暴発事故も多かったため、実際には厄介物扱いされていたという説もある」