イ・ビョンホンと、ハン・ヒョジュという女優さん主演の映画「王になった男」
以前観たけれどあまり覚えていませんでした。
あれと同じなのか否かとずっと訝っていて
タイトルを見てもスルーしていた韓国ドラマ「王になった男」
映画にはなかったラブストーリーも盛り込まれた同名のドラマです。
Amazonのプライムビデオ見放題で観ました。
宮廷の奸臣たちが貧しい民から税を搾り取り、王は良いように傀儡されて
派閥が横行し陰謀にまみれている宮廷。
現代の韓国でも日本でも、国で上に立つ輩の気質はあまり変わらないようです。
民のための宮廷にするべく理想を掲げ、ひそかに改革を考えていた
王の側近・都承旨(トスンジ)のイ・ギュは
王を利用して実権を握ろうとする奸臣
左議政(チャイジョン)シン・チスの派閥が横行する宮廷と
大麻に犯されて廃人さながらの王の現状を憂慮し、王をお寺で養生させています。
今の王では、理想の宮廷の実現などは無理だと考えていたところ
町で偶然、王とそっくりな顔の大道芸人の道化ハソンをみつけ
この道化を王の影武者にして、王として教育していこうと実行しだします。

画像をお借りしました。上は道化、下は大麻に侵されてうつろな王。
ドラマの初っぱなで、病で逝去する場面の、世子の父親は
カメオ出演した、時代劇ドラマでも第一人者のチャン・ヒョク。
ほんの一瞬の出演でした。
すぐチャン・ヒョクだとわかるほど、その声と芝居で存在感がありました。

カメオ出演とは、監督や原作者、作品のモデルになった人物など
作品に所縁のある人物が、短い時間だけ映画やドラマなどの作品に
端役で出演することを意味します。
道化のハソンという庶民の男と、架空の王様イ・ホンという王様との
一人二役のヨ・ジング。
病的でうつろな表情の、突然狂気的な恐怖の言動をする王の
神がかったような芝居に鳥肌が立ちます。
それとは対照的な、妹思いで優しくて、明るく生きる
男前な道化との二役を、ヨ・ジングが見事に演じ分けていて
NHKBSで観た「太陽を抱く月」での子役の頃も芝居が上手で
大人になってもその才能の凄さに改めて感服して観ました。

王妃ユ・ソウンを演じるイ・セヨンという女優さん。
ほんとにほんとに、透明感のある清楚な美しい王妃で
主役の男女どちらもが綺麗で、観ていて目の保養と癒しになりました。

都承旨(トスンジ)役は
ハングルを作って有名な王様、ドラマ「大王世宗[テワンセジョン]」の
世宗大王役だったキム・サンギョン。
トスンジとは、いわば秘書室長みたいな役職。
王のお世話役 チョ内官(かん官)役はチャン・グァン。
宦官は、ご存じのかたも多いでしょうが
宮女のような仕事をする、去勢した男性ですね。
この俳優さんも色々なドラマで、悪徳な社長役やおとぼけなおじいさんなど多才。
私服を肥やす悪人・左議政(チャイジョン)のシン・チス役に
「冬のソナタ」で主人公 ミニョン(カン・ジュンサン)が代表の会社の
キム次長役をした、インパクトのあるお顔でよく見かける
いろんなドラマに出演するクォン・へヒョというベテラン男優さん。
左議政(チャイジョン)とは、政府の副総理みたいな役職。
右議政(ウイジョン)と二人います。
この俳優さんは、先日観た「恋愛ワードを入力してください」にも出演でした。
「王になった男」では最後まで極悪非道な臣下役。
影武者として連れてこられて王に成り済ますハソンには
宮廷の人物にある傲慢さはなく、人懐こく温かく優しい。
それまでの狂気じみていた王と、少し距離を置いていた王妃は
ある時から、優しく思いやりのある王に惹かれていきます。
道化のハソンも、美しく聡明で気品のある王妃に惹かれていき
二人の恋は進展していくのです。
ハソンにとっては初恋。本来ならば王と王妃で問題はないのですが、、、。
王妃が登場する二人の場面では
いつもシューベルトの「セレナーデ(小夜曲)」が流れ
二人が散歩する宮廷の美しい庭園での場面が多く、ある時の
月が照らす夜の庭園の、湖面に蛍が飛び交う景色の中での逢瀬は
なんとも美しくロマンチック。
BGMは柔らかいヴァイオリンのセレナーデで
時代劇なのに違和感はなく、この曲をこういう風に挿入する韓国ドラマの
作り手のいつもながらその演出に感心してしまいます。

偽の王ではありましたが、元々庶民のハソンは、いつも民の方に向いていて
民のことを一番に考える人間。
腐った宮廷の実情が見えてきて、徐々に自らも王としての自覚が芽生え
本当の王様のような風格も身についてきます。
人は富と権力を手にすると、知らず知らずに奢りが出てきて
初心を忘れていくものだけれど
ハソンは、トスンジ イ・ギュが初めて見つけた時の純粋な心は変わらず
イ・ギュを信じて疑わない。
その心と、彼の本来の人間性に感動したイ・ギュはそこで初めて
これまでのハソンに対する不敬を詫び、彼を本当の王様として敬い
二人で理想の実現に向かうことを誓います。
隣国明との関係、近隣の部族との諍い、宮廷の派閥争いへと
ドラマはこれから、波乱万丈で目まぐるしい展開へと移っていきます。
王と王妃の恋路はどう進んでいくのか、結末は?
先日観た、一目ぼれのロウン君主演の「恋慕」に
勝るとも劣らないラブロマンス史劇です。