待望のアナゴ天丼セットを味わう ～石川町駅北口・佐久良屋～

中華街の開港道に面して「和楽園」という、超レトロであか抜けない蕎麦屋があった。ここは中国人が経営する日本蕎麦のお店として知られていたが、私はその佇まいが大好きだった。古～い和風の建築、薄暗い店内、ちぐはぐな照明器具、場末感漂う蕎麦…どれもが大好きだった。 　それが数年前解体され、現在は洗練されたスタイリッシュな蕎麦ダイニング「和楽」として蘇っている。かつては「麺房・栄屋」とか「末広」なんていう日本蕎麦屋があった中華街だが、今では蕎麦で一杯飲めるところといえば、この「和楽」と近くに新しくオープンした「青木亭」ぐらいしかない。 　と、いきなり中華街の日本蕎麦屋の話になってしまったが、ここでご紹介するのは中華街最寄り駅のＪＲ石川町駅北口横にある「佐久良屋」。看板には生蕎麦のほか会席料理、ふぐ、天ぷらを掲げている小奇麗な店だ。 　実はここも、以前はどこかあか抜けない雰囲気があったのだが、改装してからすっかりきれいになり、スマートで落ち着いた店に生まれ変わっている。 　先日、以前から気になっているランチ（８５０円）に“アナゴ丼＋蕎麦＋お楽しみ六角”というのが登場していた。これはもう、何を差し置いても行くっきゃない。幸い仕事のやり繰りがうまくいって、１１時２０分に入店することができた。 　これなら一番乗りだろうと思ってドアを開けると、すでに一人、客がいて例のランチを食べていた。歳のころは７０代、ヨロヨロした婆さんだったが、アナゴ丼にむしゃぶりついていた。すごいねぇ～。 　アナゴ天丼と聞いて、まず思い浮かぶのは本牧漁港の「加工直売所兼食堂の笹」。あれは巨大でドンブリから相当はみ出していたけれど、ここ「佐久良屋」のアナゴも負けてはいない。 　全長の２割ほどがドンブリの外に飛び出している。しかし、ここのはアナゴの大きさよりも、その肉質に特徴がある。見た目以上の厚み、柔らか～くてホコホコした歯ざわり、さっきまで生きていましたというような肉の旨み、そしてそれを包み込んでいる美味しいコロモ。 　甘辛のタレも多からず少なからずで、アナゴ本来の味を楽しむのに丁度いい分量である。天ぷらの上に乗っている細長い紐状のものは、アナゴの骨！　活きアナゴを使っている証である。 　これがまた香ばしくてポリポリと食べられる。日本酒の肴にピッタリだね。 　「笹」で出されるものは大衆的アナゴ丼。「佐久良屋」のは上品なアナゴ丼だ。 　ランチにセットされている蕎麦は、“もり”か“かけ”を選択できる。こういう場合、私は冷たい蕎麦ということに決めており、“もり”を注文。 　この店は本来が蕎麦屋なので、もり蕎麦も当然美味しい。かなりコシのある角のたった蕎麦。断面は正方形に近い。茹で溶けしていない端正な蕎麦だ。 　セットには、さらにお楽しみ六角という名の小鉢が付いてくる。中身は昆布の佃煮、はんぺん、蛍烏賊の酢味噌、それに漬物というラインナップ。これらをアナゴ丼の合間に頂くわけだが、どうもこれは日本酒がほしくなるお品で、現に、向かい側に座っているおじさんは酒を注文し、お楽しみ六角を肴に一杯飲んでいた。 　　 　店内を観察していると、お客の大半が常連客であることが分かった。おそらく夜もここで飲んでいるのであろう、店員と酒の肴の話なんかしている。 　11時20分から11時40分のわずか20分間で、一気にお客が入ってきた。どこのサラリーマンなのだろうかね、こんな早メシが許される会社って、いいなぁ… 　 　上の写真はテーブルに置かれていたメニュー。蕎麦のメニューが非常に限られていることが分かる。多種類用意している蕎麦屋があるけど、ここは品数を絞っているのだろうか。なんかこだわりがあるのかもしれない。　 　帰りがけ、ビルの入口で見かけた看板。なんと「新新茶房」とあるではないか。これは、あの伝説的な店となった、今はなき中華街の「新新茶房」なのだろうか。元祖ネギソバが旨かった、あの店なのか？ 　ビル内を探してみたが、「新新茶房」はなかった。店が撤退して看板だけが残っているのだろうね。 　それにしても、あの「新新茶房」はどうしているのだろう。誰かご存知の方いらしたら教えてください。もう一度、あのネギソバを食いたい！ ←素晴らしき横浜中華街にクリックしてね 「ハマる横浜中華街」ランチ情報はコチラ⇒