今、品川区の原美術館で、とっても面白い展覧会が開かれています。アジア映画好きには絶対に見逃せない展覧会なんですが、この「ミン ウォン:ライフ オブ イミテーション」展を3回にわたって(!)ご紹介したいと思います。3回にもわたってしまうのは、この展覧会を見たとたん私のアジア映画オタク魂に火がついてしまい、「私にも言わせて!」バルブが全開になっちゃったからなんですね。そんなわけで、この項、かなり長くなります。
まずは原美術館ですが、静かな住宅街にあるので「あれ?」と思っていたら、1938年竣工の原邸を美術館に改装したものとかで、当時としてはモダンな邸宅がうまく現代美術の空間に生まれ変わっています。詳しいことはウィキの「原美術館」をどうぞ。原美術館の公式サイトはこちら。
今回の展覧会について、原美術館のプレスから引用します。(美術は専門でないため、自分の言葉で説明しようとすると難しくて....。手抜きでスミマセン)なお、映画の邦題は、プレスの別資料を見てこちらで付け加えました。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ シンガポールに生まれ、母国とベルリンを拠点に制作するミン ウォン(1971-)は、第53回ヴェネチア ビエンナーレ(2009年)において審査員特別表彰を受賞した、現在、国際的に最も注目の若手アーティストです。受賞展である「ライフ オブ イミテーション」は、その後、新たな展示デザインや展示物を加えてシンガポール美術館にて再現され、シアトル、タスマニアなどを巡回し、ますます高い評価を得ています。 原美術館では、本巡回展を当館の空間に合わせ再構成します。出品作品の中核を成すのは、マレー映画の父と称されるP. ラムリー(1929-73)の映画の数々と、ハリウッドにおいてメロドラマを量産したダグラス サーク(1897-1987)の『イミテーション オブ ライフ』(1959年/邦題:悲しみは空の彼方に)、ウォン カーウァイ(1958-)の香港映画『イン ザ ムード フォー ラヴ』(2000年/邦題:花様年華)を独自の視点で再演したビデオインスタレーションです。ミスキャストやモノマネなど、パフォーマンス性をベースとした滑稽とも言えるアプローチで、人種的・文化的アイデンティティや、ジェンダー、言語の問題などに言及しています。 さらに、シンガポール最後の映画看板絵師、ネオ チョン テクによるによる看板絵や、シンガポールの個人コレクター、ウォン ハン ミンの貴重な映画資料、往年の映画館建築を収めたインスタント写真などとともにシンガポール映画黄金時代(1950~60年代)を振り返り、様々な言語と文化が行き交ってきたシンガポール、ひいてはグローバル化が進む現代社会における人間のあり様を見つめます。 *本展は、第53回ヴェネチア ビエンナーレ(2009年、キュレーター:タン フー クエン)において発表された後、シンガポール美術館にて再現され、現在、世界各地を巡回している国際展です。
今回は、玄関を入ってすぐの部屋に展示されている、ウォン ハン ミン氏の映画資料コレクションをご紹介したいと思います。この部屋で、私のアジア映画オタク魂がすぐにビビッと反応してしまったんですねー。ウォン氏がインタビューに答えている映像もあり、彼がどうやってシンガポールの映画資料を集めたのか、ということが語られています。壊された建物から資料を救い出したこともあったようで、展示品の一部には火で焼けたあとがありありとわかるものもあります。
この部屋の一方の壁には、シンガポールで公開されたいろんな映画のポスターが貼ってあります。どんな映画のポスターがあるかというと、まずインド映画。日本でも上映されたことのあるラージ・カプール監督・主演作『私はピエロ』 (1970)です。
上はこの映画のLPジャケット(スキャナーが小さいので一部切れてます)ですが、展示されているポスターはさすがシンガポール公開版だけあって、中国語の説明も見えました。高い位置に貼ってあったのが残念至極で、もっと目の前でじっくり見たかったです~。このほか、マドゥバーラーの主演作『反逆者の兵士』 (1958/原題:Baghi Sipahi)のポスターもありました。
シンガポール製作のマレー語映画では、もちろんP.ラムリー主演作のポスターがずらり。タイトルを挙げてみると、これも日本上映済みの『ハン・トゥア』 (1956)、それからP.ラムリーの監督・主演作『父子』 (1966/原題:Anak Bapak)、『ド・レ・ミ』 (1966/原題:Do Re Mi)。これらの映画はちょうどVCDが手元にあったので、そのカヴァーを付けておきます。
このほか、ラムリー監督・主演作『しとしと降る雨』 (1968/原題:Gerimis)のポスターも。オマケとして、『ハン・トゥア』の剣士たちが歌い踊るシーンをどうぞ。今回の展覧会でもシアターのビデオ画面でクリップとして使われていたシーンで、ラムリーの甘い歌声が聞けます。サーモンピンクの衣裳を着ているのが、ハン・トゥアに扮したラムリーです。
さらに、シンガポールやマレーシアを舞台にした香港映画のポスターもありました。キャセイの作品で、李麗華(リー・リーホア)と嚴俊(ヤン・チュン)が主演した『牛車水(チャイナタウン)の風雨』 (1956/原題:風雨牛車水)と『ニョニャとババ』 (1956/原題:娘惹與峇峇)です。どちらも嚴俊の監督作で、キャセイの雑誌「國際電影」を見てみると、前者はシンガポールが舞台、後者はマレーシアが舞台で、1回のロケで両方とも撮ってしまったようです。「國際電影」の裏表紙についていた広告を、コピーですが付けておきます。
香港映画はこのほかにも、いわゆる”南洋もの”を中心にいろんな作品が登場していました。
ここに付けた画像はいまひとつのものばかりで申し訳ありませんが、これで大体のイメージをつかんで見に行っていただければと思います。コレクターのウォン ハン ミン氏は、来月来日の予定とか。ぜひお目にかかってみたいものです。次回は、ウォン ハン ミン氏の映画館コレクションに刺激された、私の星馬(シンガポール&マレーシア)映画館コレクションです。
ちょっとうろ覚えなのですが、2年前にインドネシア国立博物館でビエンナーレ(だったかな?)が開かれた時、ミン・ウォン氏の作品を見たかもしれません。映画をネタにした展示でした。あとでカタログで確認してみます。
インドネシアは「インドネシア映画カタログ」が出ていて、過去のインドネシア映画が網羅されているのでいいですね。映画資料もアーカイブで収集されていると思いますが、映画館や映画チケット半券、看板絵などはあっという間に消えてしまうので、誰か民間人のコレクターがいないと写真等も残らないかも。アハマドさん、いかがですか?