アジア映画巡礼

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TIFF&FILMeX2022:ゲストに遭遇の日

2022-11-01 | アジア映画全般

FILMeXに行ったり、TIFFに行ったりの1日でした。FILMeXで見た作品は明日一緒にご紹介することにして、FILMeXではかつて仕事をいろいろさせていただいた雑誌「POP ASIA」の編集長関谷元子さんと、編集者&カメラウーマンだった沢島正子さんにバッタリ遭遇、再会を喜んでいたらそこに『石門』(2022)の監督夫妻ホアン・ジー(黄驥)さんと大塚竜治さんが現れて合流...というシーンになりました。写真は右から、関谷元編集長、大塚監督、ホアン・ジー監督、沢島さんです。

本日は『石門』の1回目の上映があったのですが、私は明後日のQ&Aがある上映で拝見する予定です。『卵と石』(2012)や『フーリッシュ・バード』(2017)が日本でも上映されているほか、自身を撮ったドキュメンタリー映画など、意欲的な作品をいろいろ発表しているお二人なので、今回の『石門』も楽しみです。

で、そこから続いては、丸の内TOEIであったアマン・サチデーワ監督の『アヘン』(2022)の上映とQ&Aの会場へ。字幕を担当した私ですが、スクリーンで見るのは初めてなのでちょっとドキドキ。『アヘン』は1人の監督による5話のオムニバス映画で、「宗教はアヘン」から取ったと思われるタイトルの下、宗教に絡むエピソードが語られていきます。

第1話「暴動」は北インドのどこかで起きた異なる集団間の争いの話、第2話「盲目」はこれも北インドの廃墟のような集合住宅で、本で目を塞がれ、監視し合いながら暮らしていく人々の話、第3話「木材」は、父の死を間近に控えたゴアのキリスト教徒男性が、いろんな宗教を損得で見ていく話、第4話「プラウ(焼き飯)」はムンバイに出てきてウーバー・イーツのような配達業で働き始めたイスラーム教徒の女性が、ベーコンサンドを配達することになって葛藤する話、そして最後の第5話「花びら」は、北方のヒルステーション(夏の間の避暑地)であるナイニータールの小学生2人が主人公の、牛糞探しをテーマにした話となっています。

上映後に登場したアマン・サチデーワ監督ですが、Q&Aに入る前に司会の石坂健治プログラミング・ディレクターの提案で、どのエピソードが一番よかったか、という拍手投票が行われました。その結果、どれもほぼ同数で、これには石坂ディレクターもちょっと意外だったようです。

質問は4人の方がなさったのですが、最初の方はこれが2回目の鑑賞だという熱心な方で、監督も驚いたようでした。実は『アヘン』にはプロデューサーとして『ジャッリカットゥ 牛の怒り』(2019)の監督リジョー・ジョーズ・ペッリシェーリの名前が挙がっているのですが、そのリジョー監督によるサウンドデザインに関するアドバイスがあったのでは、というご質問でした。監督もあとで「驚いた。いい質問だった」と言っていましたが、この日は2番目に質問なさった方もリジョー監督の影響について尋ねていたので、『ジャッリカットゥ』の方の字幕も担当した私としては、驚いたような嬉しいような気分でした。

アマン・サチデーワ監督は「リジョー監督とは長い付き合いなので、アイディアとかストーリーとかいろんなことを話し合いました。リジョー監督は自分で映画を作る時はワンマンなんですが、プロデューサーという立場になったら口を挟むことはせず、やりたいようにやらせてくれます」というようなことを言っていましたが、本当に仲がいいようです。また、2番目の方からは「監督の信じる宗教は?」というご質問も上がり、「私は申し訳ないですが宗教的な人間ではありません。無神論者と言ってもいいですね」とのお答えが。

3番目のご質問は、「今のインドのモーディー政権下ではヒンドゥー教徒が優遇されていると思いますが、そういった社会への批判として宗教をテーマにしたんですか?」というものでした。監督によると、本作は長い間考えを温めてきた作品で、政治的なアプローチと言うよりも人間的なアプローチで作った、とのこと。政治的な主張はしていないが、それが現れているとは思います、とのことでした。

4番目は女性の方で、マントー(インド・パキスタン分離独立期の作家)の影響があるのでは、という鋭いご指摘と、インド各地を舞台にしているのはなぜか、というご質問でした。さすがに通訳の方もマントーはご存じなかったようで、当初映画監督かと思われたようでしたが、アマン・サチデーワ監督の答えで気がつかれたようで、監督の言を訳す時に修正してらっしゃいました。マントーの影響は第1話にはあると思う、とのことで、後者のご質問に関しては、話の内容で自然と場所が決まったが、最後の「花びら」の場所をナイニータールにしたのは、自分がそこの寄宿学校に入っていたからだ、というお答えが。なるほど~。

そしてここで石坂さんから、第2話の「盲目」を撮る時いろいろ大変だったとか、という誘導質問?が入り、あの廃墟のような団地はなかなか撮影許可がおりず、3度目のアプローチでやっとOKしてもらえた、という話や、分厚い本を顔の前に貼り付けての撮影で、本には穴など一切空いていないため、あの格好でクリケットをやってもらったりするのが本当に大変だった、というお話がありました。上のポスターでも顔に本が押しつけられていますが、これを紐で頭に縛った状態で暮らす、という設定なので、異様さもいいとこのディストピアが描かれていくんですね。エピソードは、1話目から5話目に行く間に少しずつ希望が感じられる方向へ移行するよう考えられているそうです。

で、最後に皆さんへのメッセージは? と聞かれた監督からは、「来て下さって本当にありがとうございました」との御礼の言葉が。終了後の監督からは、「今日のQ&Aは充実していたよ」という感想がもれ、皆さんの熱心さが監督に感銘を与えたことが見て取れました。オムニバス映画なので日本公開は難しいかと思いますが、また別の作品を作って、日本に持ってきて下さいね。

 


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