アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

IDE(インド大映画祭)@UPLINK吉祥寺に行って来ました

2021-12-22 | インド映画

IDEにIMW(インディアンムービーウィーク)2021パート3と、何かとインド映画上映が重なっている年末です。12月は中旬は朝日カルチャーセンターのオンライン講座と、その後に原稿の締切が2つ重なったため、どちらもなかなか行けなかったのですが、今朝最後の原稿を送付してからバタバタと行って来ましたUPLINK吉祥寺。がんばって、『カルナン -Karnan』(2021)と『スルターン -Sultan』(2021)の2本を見てきました。

Karnan 2021 poster.jpg

『カルナン』は『僕の名はパリエルム・ペルマール』(2018)のマーリ・セルヴァラージ監督の第2作です。同じように被差別カーストのカルナン(ダヌシュ)が主人公で、彼らの村と、中間カーストの隣村とが対立している構図が、パス停の有無を巡って明らかになっていきます。バスが彼らの村には停まってくれないため、カルナンの住むポディヤンクラム村の人たちは長い距離を歩き、隣村のバス停から乗るしかないのです。隣村の男たちのいやがらせを受けて、大学に入ったばかりの娘ポイラール(『'96』のゴウリ・G・キシャン)は通学をあきらめたりと、様々な不便が村に課せられていますが、彼らの訴えを取り上げてくれる所はありません。それどころか、警察の人間は彼らを目の敵にし、ヴァダマライヤン(ヨーギ・バーブ)ら村の指導者的立場の人間たち数人が警察署に呼び出されて、さんざん痛めつけられる始末です。ヴァダマライヤンとはあまり仲がよくないカルナンですが、彼の妹ドラゥパディ(ラジシャ・ヴィジャヤン)と恋仲になっていることもあって、警察署に彼らの救出に向かい奪い返したものの、それがきっかけとなり、村と警察との全面的闘いになってしまいます...。

『僕の名はパリエルム・ペルマール』では、被差別カーストの人々が受ける中間カーストからの激烈な差別を見事に描いて見せたマーリ・セルヴァラージ監督ですが、本作は少々完成度に欠ける作品となってしまいました。何よりも、主人公カルナンの魅力が描かれていないのが難点で、村人たちが彼を信頼し、彼のもとで闘おうと思わせるような求心力が見えてきません。カルナンの祖父の存在がその部分を補っている、と言えなくもありませんが、脚本が練られていない感じを受けました。それと、主人公がカルナン、その恋人がドラゥパディとくれば当然「マハーバーラタ」ですが、それも単に名前だけだった気がします。途中に『僕の名はパリエルム・ペルマール』にも登場したカラガーッタムの踊り子たちが出て来た時は、やはりセルヴァラージ監督と思ったものの、印象的な歌の使い方もあまり効果をあげていず、ちょっと残念でした。予告編を付けておきます。

Karnan Official Teaser | Dhanush | Mari Selvaraj | Santhosh Narayanan | V Creations

 

Sulthan 2021 poster.jpg

『スルターン』の方は、『囚人ディリ』(2019)のカールティが主演なので、どんな違った顔を見せてくれるかと楽しみでした。主人公はヤクザの親分を父に持ち、本名をヴィクラムと言うのですが、彼の誕生と引き換えに母が亡くなったため、気落ちした父は育児を放棄。代わりに100人ほどいる手下のリーダー、マンスール(『SAAHO/サーホー』のラール)が赤ん坊を「スルターン」と名付けて、手下全員で育てたのでした。今はムンバイでロボット工学を専攻する大学生となったスルターン(カールティ)が里帰りするというので、手下たちは大騒ぎで彼を迎えます。ですがその夜ピザ配達人に化けた敵が襲ってき、父は翌朝死亡してしまいます。その直前、父はある村から頼まれごとをし、村の救済を約束したため、スルターンと手下たちは村に出向くことに。そこで手下の1人”ポンコツ”(ヨーギ・バーブ)の見合いに立ち会ったスルターンは、見合い相手のルクマニ(ラシュミカ・マンダンナ)に一目惚れ。嫌がられても村長の娘である彼女にアタックを繰り返し、手下たちは農業に従事させるなど、すっかり村の生活に馴染んでしまうスルターンでしたが、村を狙っているヤクザからの攻撃や、手下のうちでスルターンに反発する者が出てくるなど、危機的状況が襲い始めます...。

キャラクターは悪役も含めてなかなかにいいのですが、コメディタッチも追求したいバーギャラージ・カンナン監督は、コメディとアクションとのバランスがいまひとつで、見ていて途中でダレました。終了後に会った友人は、「もっと切れますよね、この映画」と編集のまずさを指摘していましたが、私も同感です。ただ、『囚人ディリ』をほうふつさせるシーンが登場したりと、楽しめる点も多々あって、カールティの甘い方の顔もたっぷり拝ませてもらいました。この友人はヨーギ・バーブ主演の『マンデラ』(2021)を推薦してくれましたので、あと1本、吉祥寺通いができたらと思います。最後に、『スルターン』の予告編をどうぞ。

SULTHAN - Official Trailer (Tamil) | Karthi, Rashmika | Vivek - Mervin | Bakkiyaraj Kannan | 4K

 

実は1本目でも、亜細亜大学で教えている友人と偶然一緒になったのですが、あのあたりはUPLINK吉祥寺の恩恵をいっぱい受けていますねー(うらやましい)。あと、お正月前に大森方面や新宿にも行きたいし、インド映画で2021年は暮れそうです...。

 


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