日本は今日が敗戦後70年の終戦記念日でしたが、シンガポールはつい先日、8月9日(日)に独立50周年を祝ったばかり。しかしシンガポールの場合、いわばマレーシアから追い出される形での分離独立だったため、その後の道も険しいものでした。1957年にイギリスからマラヤ連邦が独立、シンガポールはその後1959年にイギリスの自治領となり、1963年にはマラヤ連邦やボルネオ島地区と共にマレーシア連邦を結成することになります。ところが、中国系住民(華人)が多数を占めるシンガポールと、マレー人が多数を占める他地域とでは常に意見の対立が起き、それが暴力事件へと発展していく結果に。こうしたことから、マレーシア連邦のトゥンク-・アブドゥル・ラーマン首相と、シンガポールのリー・クアンユー人民行動党党首が話し合い、シンガポールがマレーシア連邦から出ることになったのです。
シンガポール映画『1956』(予告編はこちら)は、リー・クアンユー首相がテレビ会見で分離独立を宣言する場から始まります。ところがそれは意気軒昂とした独立宣言ではなく、途中でリー首相が落涙したり言いよどんだりして会見がストップするという、苦渋に満ち満ちたものでした。その時の実際の映像がこちらで、映画ではこのシーンを忠実に再現してあります。当時のリー首相の心境は、「これからどうなるかわからないが、何とかシンガポールという国家を生き延びさせていかなければ」という悲壮なものだったのではと思います。
その後映画では、華人とマレー人との対立と暴動が描かれていくのですが、主人公になるのが警察の副署長である、まだ若い警部チェン(戚玉武/チー・ユーウー)。彼は妻と5歳ぐらいの娘小雲、そして母親や弟と共に暮らしています。学生である弟は反マレー人運動にのめり込んでいき、恋人である喫茶店の娘の心配はつのるばかり。ある時暴動が起こり、チェンたち署員は出動しますが、その場には署に入ったばかりのマレー人警官アディの母親と幼い弟もいました。暴動に巻き込まれたアディの弟を見て、母親はチェンに「助けて下さい!」とマレー語で懇願するのですが、チェンは混乱のただ中でその声が頭に入ってきません。結局弟は死亡し、母親はチェンを許せないと怒ります。その怒りがきっかけとなり、チェンの娘を誘拐して復讐する計画が実行に移されて、小雲は行方不明に...。
監督はランディン・アンとダニエル・ユン。どちらも知らない名前なのですが、「50年前にこんな苦難の歴史があった」ということを、誠実に描こうとしています。時代考証などもきちんとしてあるようで、1965年の雰囲気がよく出ていました。ただ、やはりシンガポール人に見せるための映画、という作り方で、外国の観客には映画祭上映であってもいまひとつ胸に迫ってこないかも知れません。
ところでこの映画は、中心部のサンテック・シティというショッピングモールにあるゴールデン・ヴィレッジ(上写真)で見たのですが、ここはチケットにQRコードがついていて、それを自働入場機にかざして入場するようになっています。というわけで、入り口は無人。これが困った時には仇になり、この時もなぜか隣のスクリーンの扉前で2ドル札2枚を拾ってしまい、係員に届けるのに大苦労をしてしまいました。自働入場機から係員のいるカウンターまでは遠くて、いくら声を掛けても来てくれません。シネコンだと出口は別であるため、そんな所から出ようとする客がいるなど想定外なんですねー。
映画料金は今、平日昼間だと9.5シンガポールドル(約800円)、平日夜や休日だと12.5シンガポールドル(約1,100円)が相場。今回はシンガポールドルが高くなり、1ドルが88.2円もします。今日もスーパーマーケット「マーケットプレイス」でお買い物したのですが、サーモンのおさしみに13ドル(約1,150円)なんていう値段がついていて、えー、と思いました。庶民的なお店では一食500円ぐらいで食べられますが、ショッピングモールのレストランだとあっという間に何千円も飛んでいってしまいます。皆さん、よく暮らしていけるなあ、と賑わうショッピングモールで思ってしまいました。
庶民的なお店といえば、ホテルの近くに潮州料理の食堂があるのを発見。毎食お昼はここで食べています。手前に写っているオムレツが美味です。
ほかのお料理もおいしくて、昼ご飯どきはいろんな人が食べに来たり、お弁当を買いに来たり。今日見た人はインド系の青年でしたが、東坡肉(トンポーロー)みたいな豚肉を頼んでいてちょっとびっくり。下の3品おかず+ご飯で4.5シンガポールドル(約400円)なので、安いですよね。
滞在中に全メニューを試してみたいのですが、ちょっと無理だろうなあ...。シンガポールの旅は、もうちょっと続きます。