りゅういちの心象風景現像所

これでもきままな日記のつもり

大切な椅子

2019-09-08 09:14:27 |   本  

別冊太陽 デンマーク家具

 

 

 

家具はすてきなものばかりだし、眺めているだけでも楽しい1冊。

大好き!って言い切れる椅子がいくつもいくつも載っていて、見ていてまったく飽きない。

 

こと「椅子」に関してなら、掲載されている椅子のほとんどに腰掛けたことがある。

読みながら「座り心地がありありと思い出される」というのは、個人的にはとても面白い。

本と感覚がつながる。

若い頃にあこがれに似た気持ちと、「この椅子って、本当はどうなんだろ?」という好奇心とで

こういう本をさんざん眺めていた。

なんでもそうなんだけど、「見ただけでわかる」ためにはそれ相応の経験が不可欠なもので、

ただ座りさえすればよいはずの「椅子」だって、この「ただ座る」を実際に試してみなくちゃ

どうしたってわかりようがない。

で、あちこち出かけた先で「お!」と気付けば、気になっていた「座り心地」を

必ず確かめてきた。

これをひたすらに続けていると、あこがれや好奇心とはまったく違う感覚で、

「椅子」を見ることになる。

いったいぜんたい、「見る」ということの概念は「経験」のそれと同じく、発狂している。

 

というわけで、読んでいると、「あぁ、この椅子はあの家具屋で座ったなぁ」とか、

「この椅子はあの美術館にずらりと並んでいたなぁ」とか、

「そういえば、あいつはこれを気に入っていて、勢いで買いやがったな。。。」とか。。。

思い出されるエピソードがいろいろある。

その向こうには誰かの顔まで見えてきたりもする。

 

たかが椅子、されど椅子。

 

「椅子」にまつわるエピソードは、ささやかな話から大げさな話まで、

僕の中にあっては、ほとんど宝石ばりにキラキラしている。

 

デンマークの椅子はもちろんステキなのだけど、「椅子」は次から次へと、

別の「椅子」のことを思い出させる。

僕はこれを眺めながら本当に思い出深いある椅子のことを思い出した。

 

マジョレルの椅子のこと。

それも2人掛けの。

いつか、あの椅子を置けるような暮らしがしたいなぁと思いつつも、

全然果たせていない。。。

けれど、マジョレルの椅子に腰掛けながら本当にいろんな話をした、

あの大切な時間のことを鮮明に思い出した。

それは「あこがれ」と「好奇心」の塊だったころの自分を思い出すのに等しい。

 

その一点だけで、この本の価値はこの上なく高まってしまった。

 

この本を作った人たちに感謝を。

本当に、ありがとう。

 

 

 

 

 

 

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