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先週土曜日は特に目的地を定めずにドライブに出かけました。
すこしずつ足をのばせる距離も長くなってきたこのごろ。
週末のお出かけが、お彼岸を過ぎてようやく「お出かけ」らしくなってきたかな?なんて思いながら。
運転しながら「道志道あたりでもちょっとドライブしよか」なんて話していたのだけど、何かを話しているうちにいくつも曲がり損ねた道があったらしく、クルマはなぜか相模湖の方へ。。。あれれ?なんでこういうことになるかな?でも、引き返すのもシャクだし。。。それで、前々からちょっとのぞいてみたいと思っていた「照手姫」にまつわる場所を思い出したので、これを機会に訪れてみました。
うろ覚えの記憶とカーナビの画面を照らし合わせてみると、それは旧相模湖町の底沢というところ。
「美女谷」と呼ばれている場所なのです。
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国道20号から小さな道に入ると、狭い道は谷に沿ってぐんぐん登っていきます。
小さな川だけど水の量は豊富で、谷には水音が響きわたっています。
クルマが行き違うのも難しいような道が続いて「対向車がきませんように」と助手席でさっちゃんがつぶやくのだけど、そんな心配はまったくありませんでした。
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上まで行くと集落があって、意外にもクルマを停めておけるような広い場所もある。
このあたりには温泉が湧いているらしく「美女谷温泉」の看板が。
ちょっと歩いてみることに。
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少し歩く間にも、道の脇から水がしみ出していたり、勢いよく流れ出しているようなところがすぐに見つかります。
台風が過ぎたからというのもあるのでしょうけど、この辺り一帯がもともと水の豊富な場所みたい。水の出るとこには蕗の葉っぱがまだ青々としています。
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目指す照手姫の水鏡「七つ淵」の目印は上の写真の大きな木の根があるところ。異様な存在感にちょっと驚きます。
照手姫はこの七つ淵で髪をあらっていた、という伝説にちなんだ作品のようだけど。。。ここが登り口。
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七つ淵の手前で、いくつもの倒木を相手に黙々と作業されている方々がいらっしゃいました。
地元の方々のようです。「この上にありますんで、どうぞ、どうぞ」と、ご挨拶をいただきました。
七つ淵への道をふさいでいた倒木はちょうど片付け終わった後のようです。
それにしても、この間の台風15号はいろんなところに爪痕を残していますね。
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大きな一枚岩の上を水が滑るように流れています。
そこに出来たいくつかの窪みが七つ淵。照手姫の「水鏡」。
長い髪をこの流れに解き放って。。。という姿を、昔の人は想像していたんですねぇ。
それにしても、傾斜が急なこの場所で、髪の毛を洗うという発想がすごい。
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照手姫が生まれたとされる場所には諸説あって、いったいどれくらいのバリエーションがあるのか?いまだに把握できないでいます。
残されている言い伝えの数ほどに、あちこちに散らばっているのですが、あちこちといってもだいたいは相模川流域に集中しています。かつて武蔵と相模の境をまたいで勢力を誇っていた「横山氏」の勢力範囲の中におさまっている、という構図。
相模原の横山丘陵緑地近辺に伝えられるところによれば、姥沢の水源から湧き出る清水を産湯に使ったとされています。
川を渡った対岸にも照手姫のお話が残されていたりもする。。。照手姫ときれいな水というのは切り離せない関係にあると考えると、しっくりきます。
説経節などでは「横山氏に生まれた娘」というのが照手姫出生に共通していることなのですが、どうもこれには「血」の理由があるらしい。横山氏、横山党と呼ばれる一派は、小野小町を生んだ血筋から分かれてきた、という話が根拠になって、「照手姫」という絶世の美女出現の確かな由縁ということになる、と。横山に伝わる伝説はこれに基づいている、と言えます。
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藤沢長生院に伝わる話が、おそらくは小栗判官と照手姫の話のプロトタイプに限りなく近いように考えられるのですが、こちら美女谷の言い伝えは「長生院(小栗堂)」の話とうまいぐあいにつながります。照手姫はある北面武士の娘という説。「横山氏の本当の娘ではない照手姫」に連なる言い伝えとうまく連絡するようなエピソードなのです。
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この日は目的地なきドライブをさらに西へと進めたのですけど、それはまた別の話ね。
リニア実験線
釈迦堂遺跡博物館
武田神社の狛犬
躑躅ヶ崎館