「感動する! 数学」桜井 進
数学ほど,多くの人に嫌われている学問はないでしょうね.
数学が好きと言えるために必要な関門が多すぎるのが原因だと思います.
第1関門は,計算ミス.
計算問題が不得意な人はまず,数学が好きにならない.その先の応用問題までたどり着かないのです.
第2関門は,応用問題(文章題)の問題の意味を読み取ること.
さらに,その先に思考力を問う上級問題となると,多くの人は興味を失っている.
しかし,この本を読むと,計算問題なんて数学でもなんでもないこと,そして数学の本当の魅力は,上級といわれている思考力を問う問題にこそあるのです.
数学を好きになるために最も重要なことは,「感動すること」ということです.
感動といっても,小説や映画のように物語から受ける感動ではなくて,「目から鱗」というと分かりやすいと思いますが,今まで想像もしなかった方法で,鮮やかに問題をとくことなのです.
例えば,次のような問題を見てください.
「総チーム数1837チームが参加する,草野球全国大会が開催される.試合形式は甲子園と同じようにトーナメントである.さて,優勝チームが決まるまで,全部で何試合あるか?」
1837なんて大きい数字も,中途半端な試合数も大変だし,試合の一覧表を書くだけでも相当大変な作業ですよね.
で,ひとつづつ試合数を数えようとすると...
想像するだけでウンザリです.
しかし,この問題には,鮮やかな解法があるのです.
1837チームの中で優勝チームが決まるためには,1836チームが敗れないといけないわけですね.
ここで考えてほしいのは,1チームが敗れるには1試合が必要だということなのです.
ということは,1836チームが敗れ去るためには1836試合あればいいわけです.
つまり答えは,1836試合.
計算は全く必要がない.
チーム数がNなら,トーナメント形式での試合数は N-1 なのです.
こういう発見的な手法こそ数学の感動の根源であり,複雑な計算問題は数学の喜びとは一切関係ない.そんなことはコンピューターにやらせておけばいいわけです.
上記は本書で延べられる感動の一端です.
この他にも,芸術,ドラマ,宇宙,,夢などのテーマごとに,あっという数学の魔術が繰り広げられます.
無理して数学を好きになってくれとは言いませんが,数学の魅力を知らないまま,嫌いになるのはもったいないなあ,という気持ちから,この本を推薦したいと思うのです.