ストーリーはとにかく面白いですよ.
状況が二転三転まさにジェットコースターのように物語が進展し,そのたびに「?」が増えていき,一気にクライマックスに向かっていきます.
思わずニヤリとしたのは,エラリークイーンでおなじみの「読者への挑戦状」があることです.
文体が平易で読みやすいので,エンタテイメントとして読む立場からはありがたいです.でも,わかりやすい文章を書くことは,実はとても難しいんです.文章の書き方として最も簡単なのは,思ったことをそのまま書き下すことですが,それでは,たいてい読みづらい文章になってしまいます.
文章に手を入れて行く作業を推敲といいますが,推敲には2つの立場があります.一つは作者の立場,つまり,いわんとすることをできるだけロジカルに(誤りが無いように)修正する立場.もう一つは読者の立場に立って,できるだけ読者の意識に滑らかに入り込むようにわかりやすく表現を変えてていく立場です.
推理小説では往々にして前者の立場をとることが多いような気がします.推理小説ではロジックが重要だからですね.でもこの本はあえて,読者の立場からわかり易さに徹しているような気がします.作者の自己満足でなく,読者を大事にする姿勢が現れているようでうれしいことだと思います.
この作者の作品はこれが初めてですので,後日,他の作品を読んでみたいと思っています.ただ,瀬名秀明氏の本を図書館で借りてしまったので,その後になりますけどね.