「グレイヴディッガー」高野和明
「十三階段」「ジェノサイド」に続いて,高野和明さんの作品を読むのは三冊目.
う~む.すごい.
"Page Turner"の名にふさわしい,ノンストップクライムサスペンス.
まさに,ページをめくる手が止まらない.
後半の100ページは「ハラハラドキドキ」の連続.
残虐なイギリスの墓堀人伝説と日本の腐敗した政治家の世界とをつなぐ悪の世界観と,白血病を救う骨髄バンクの自己犠牲の世界感の対比が分かりやすい.
その対比の中で,白血病に苦しむ少女の命を救うために,警察と悪の組織の両方から追われながら決死の逃避行を続ける主人公八神俊彦.
彼の目的はなんとか生き延びて自分の骨髄を薄幸の少女に与える事なのだ.
物語自体はかなり複雑だが,長編小説の良いところは少しずつ物語が進むので,わかりにくさは全く無い.むしろシンプルにさえ感じる.
しかし,いざ一言で説明しようとすると,とたんに難しくなる.
これは,高野さんの描写力がいかにすぐれているかという証拠でもある.
緊張感溢れる小説だが,主人公八神が端々に見せるユーモアとちょっとした哲学は巧妙なスパイスとなって物語の厚みを増してくる.
いずれにしても超1級のサスペンスだ.
ミステリ好きの方だけでなく,フラストレーションがたまっている人にもカタルシスを与えてくれるだろう.
ただし,これから読もうと言う人にひとつ忠告がある.
忙しい時にこの本を読んでは行けない.
本が手放せなくなって,仕事が遅れてしまうこと請け合いだからだ.