京の昼寝~♪

なんとなく漠然と日々流されるのではなく、少し立ち止まり、自身の「言の葉」をしたためてみようと・・・そんなMy Blogに

「告白」/湊かなえ

2010-04-28 | Book

「告白」/湊かなえ(双葉文庫刊)

 

 

 

今までにないタッチの文体と進行。
ただただ一人称の世界が、“娘”というキーワードの下に
あまりに淡々と語らせて、どんどん深みに落ち込んでいく。
嫌がおうにも次のページを捲っている自分に気付く・・・。

文庫本になったので、かみさんが買って来てくれたのだが、
ページを開くと、びっちり埋められた漢字練習帳のように
余白が殆どないページに、恐れることなく溺れていく。
ほぼ一人称の世界で綴られていくこの作品は
摩訶不思議なテンポと浮遊感を感じながら、
まるで底なしの泥沼に腰までずっぽり嵌まりぬけられないまま
他人の心を覗き見たい野次馬な自分と対峙する。

“娘”というキーワードの奥に、
例えばTVで残虐なニュースを見たときのような、
客観的洞察ではない直接的感情移入が始まる。

一つの事件には加害者と被害者。
その中心になる人物像を互いの目から別々にこの事件を見て
話が進行する様は、まるで謎解きを楽しんでいるかのよう。

作家と言うのは恐ろしいものだと感じるのは、
まるで自身が主人公で同じ体験をしたように書けること。

悲惨な事件が起こったあとに、当事者が、
二度とこういう悲惨な事件が起こらないように・・・だとか、
もう娘は戻って来ないのだから・・・とか、
異口同音のインタビューを目にする。

だけど・・・
本心はこの本の中に語られているような気がする。
この物語のクライマックスがその“本心”そのもの。



巻末にこの小説を映画化する中島監督へのインタビューがあった。
何故、主人公森口悠子が松たか子だったのかが語られている。
そう、この森口悠子こそが映画の軸になるわけで、
非常に難しい役だけれど、彼女の女優としての器量と、
映画、TV、舞台、音楽とマルチな才能を発揮する彼女の
新たな女優として、“人間”しての一面を見せてくれることを期待したい。

中島監督っ、
この森口悠子役に中谷美紀を選ばなかったのは正解です(by 松子)。



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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは♪ (SOAR)
2010-04-29 15:29:09
一日20分程度の読書時間を持つように努めていますが、これは読み始めたとたん止まらなくなってしまいました。
複数人物たちそれぞれが一人称で語っていく形態ですが、手紙もあれば電話もありで読み応えがありますね。
中島監督がこの作品を撮ったことに何より興味を感じてます。あとは松たか子が森口教諭をどう演じるか、これも注目ですね。
返信する
映画化 (NAO)
2010-04-29 17:17:43
こんにちは~cyazさん。
私は、これハード本で出たと同時に買い、一気に読んでしまいました。
びっしり書いてあるのにも関わらず、気になってとまらない・・・。^^;
それぞれの視点から「娘」というキーワードで
話が進む構成はおもしろいですよね。
最後のあの終わり方は、ほんとショッキングでした。
この森口教諭を演技派で今ノッている松たか子さんがどう演じるか、注目&期待したいです。
返信する
森口像~ (cyaz)
2010-04-30 08:51:42
SOARさん、コメント、ありがとうございますm(__)m

>一日20分程度の読書時間を持つように努めていますが、これは読み始めたとたん止まらなくなってしまいました。
ホント、先が読みたくて読みたくて仕方がなかったです^^

>複数人物たちそれぞれが一人称で語っていく形態ですが、手紙もあれば電話もありで読み応えがありますね。
でしたね! 登場人物も限られていてその分感情移入しやすかったです。

>中島監督がこの作品を撮ったことに何より興味を感じてます。あとは松たか子が森口教諭をどう演じるか、これも注目ですね。
映画、楽しみです!
特に松たか子がどんな森口像を仕上げるのかが^^
返信する
ワクワク~ (cyaz)
2010-04-30 08:54:38
NAOさん、コメント、ありがとうございますm(__)m

>私は、これハード本で出たと同時に買い、一気に読んでしまいました。びっしり書いてあるのにも関わらず、気になってとまらない・・・。^^;
ホント、ワクワクドキドキでしたね^^

>それぞれの視点から「娘」というキーワードで話が進む構成はおもしろいですよね。
最後のあの終わり方は、ほんとショッキングでした。
あの立場に立たされた人間の持つ本心が如実に描かれていたように思います。
ゆえに湊かなえさんは恐ろしい(笑)

>この森口教諭を演技派で今ノッている松たか子さんがどう演じるか、注目&期待したいです。
ホントホント^^
ご覧になられたらまた感想待ってますね~♪
返信する
持ってます♪ (じゅぼん)
2010-05-03 23:25:37
この本、ハードカバーで買って読みました。
夜勤中に読んで正解でした。
あまりの衝撃のラストに、水道から滴り落ちる水滴の音に過剰に反応。
それくらい鳥肌も立って、興奮してしまいました。
自宅なら眠れない夜を脅えながら過ごした所でした。

この作品から彼女の作品は全て買って読んでます。
毎度毎度、色んな意味で驚かされます。

映画6/5~公開ですね。絶対に観に行きます!
返信する
ミートゥ~ (cyaz)
2010-05-09 09:49:34
じゅぼんさん、コメントありがとうございますm(__)m

>あまりの衝撃のラストに、水道から滴り落ちる水滴の音に過剰に反応。それくらい鳥肌も立って、興奮してしまいました。
ショッキングでしたよねぇ~

>自宅なら眠れない夜を脅えながら過ごした所でした。
そうかもしれませんね・・・。一人だと。

>この作品から彼女の作品は全て買って読んでます。毎度毎度、色んな意味で驚かされます。
僕はまだこれだけなんですよ。

>映画6/5~公開ですね。絶対に観に行きます!
ミートゥーです(笑)
返信する
Unknown (Ageha)
2010-05-12 00:36:36
金八先生だったり、夜回り先生だったり
ヤンキー先生だったり・・・
幾分シニカルにそれっぽいのが出てきて苦笑。
第一章の展開というか、先生の語りは
鳥肌もんでした。
ワタシはココが一番面白かったかな。

面白いという表現が不謹慎な小説ではありますが。

実は一番コワイのは先生だったような・・・。


先生という職業にどうも聖職者を求めがちですが
先生だって迷える人間で
人の子の親で
こうあるべき姿と本音のジレンマをかかえて
子供と接しているはずで
どうしようもない保護者と向き合っているはずで。
・・・フツウなら見ることの出来ない内面を
むっちゃむき出しにしてくれた気がしました。
こんだけ皮肉に淡々としゃべられると
ゾワゾワっとします。

スタッフブログのほうでも書きましたが
もともとはここまでで終わるはずだった短編だったそうです・・・。
それはそれで読者の想像にまかせる結末になったと思いますがどうですか?
返信する
イマジネーション~ (cyaz)
2010-05-12 12:37:58
Agehaさん、コメント、ありがとうございますm(__)m

>第一章の展開というか、先生の語りは鳥肌もんでした。ワタシはココが一番面白かったかな。
確かにこの件は凄かったっ!!

>面白いという表現が不謹慎な小説ではありますが。
それも言える。

>先生という職業にどうも聖職者を求めがちですが先生だって迷える人間で人の子の親で
こうあるべき姿と本音のジレンマをかかえて
子供と接しているはずでどうしようもない保護者と向き合っているはずで。
今は保護者が何より怖いと現在中学の校長をしている友人が言ってました(笑)
(だから薄くなったのか、おまえは・・・。)

>フツウなら見ることの出来ない内面をむっちゃむき出しにしてくれた気がしました。こんだけ皮肉に淡々としゃべられるとゾワゾワっとします。
まさしく小説らしい小説でしょうね!

>スタッフブログのほうでも書きましたがもともとはここまでで終わるはずだった短編だったそうです・・・。それはそれで読者の想像にまかせる結末になったと思いますがどうですか?
でもあのオチは他でも類似したものがあったので、
安易に想像できる内容ではないかと。
想像にまかせると危ない(何がっ)?!
返信する
怖い! (kino)
2010-06-05 00:40:54
TBありがとうございました!
文庫になった!と楽しみに読みましたが
怖い小説でした・・・。
再読したくないくらいです。
でも、映画のCMを観ると中島監督っぽくて
観てみたい気もします。怖いけど。
映画の感想、楽しみにしています。
返信する
怖くて暗い~ (cyaz)
2010-06-05 12:40:45
kinoさん、TB&コメント、ありがとうございますm(__)m

>文庫になった!と楽しみに読みましたが
怖い小説でした・・・。
確かにそうですね^^
でもなぜかのめり込む物語でした。

>でも、映画のCMを観ると中島監督っぽくて
観てみたい気もします。怖いけど。
どんな感じに仕上がっているのか楽しみです。
でも結構暗いとか(笑)?!
返信する

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