「カンランシャ」/伊藤たかみ(光文社)
とある新聞の書評に取上げられていたので図書館で借りて来た。
世界中に、いや日本中にどれだけの数の観覧車が存在するのかわからない。
それこそ、デパートの屋上にある小さい子供用の観覧車も入れれば相当な数になるのかもしれない。
僕は昔から観覧車が好きだ。 自分が乗った観覧車の数以上に、観覧車に纏わる想い出がたくさん残っている。 そのひとつひとつが、その時の観覧車から見た風景とともにしっかりと脳裏に浮かぶ。
この小説は、不動産会社に勤める妻と別居中の瀬尾隆一、隆一の大学時代の先輩である蛭間直樹とその妻・いずみ。 隆一といずみ、直樹とその愛人の愛(つぐみ)は、それぞれがW不倫の関係。
夫婦なんて観覧車のようなものなのか。 一度カプセルに入ると今まで住んでいた世界とは別世界のような世界が眼下に広がる。 出会いと別れ、それは
世間によくあるドロドロした関係ではなく、ある意味近くて距離のある、恋愛物としたら、特段斬新な面白さもないのだが、同じ月日の流れと時間の経過を、それぞれの登場人物が、その前後の各自の立場と心の動きを、個人の内面的な表情や想いを炙り出していく。 それはまるで映画やTVドラマの台本にあるような感じで。
小説の面白さより、この人の表現方法(手法)が」ユニークで面白く、また小さな発見もあったりして。 そういう面で久々に言葉の面白さを感じた作品だ。 ここ暫くの間に読んだ本の中では、表現方法が斬新で軽いカルチャーショックを覚える、また言葉の面白さを感じた作品だ。
筆者は1971年生まれで、恋愛経験や人生経験は僕の方が長いが、男女の機微を切り取った写真のように表現するその上手さには脱帽した。 但し、その恋愛のオチは通り一遍だったかもしれないなぁ。 最後に作者独特の表現で落として欲しかったのが残念・・・。
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