朝飲むウコン「モーニングレスキュー」の狙いと課題を読み解く/金森 努(INSIGHT NOW!) - goo ニュース
最近、「歳」を感じたのもあるのだが、会食の前には、必ずと言って良いほど、「ウコンの力」を1本飲んでいる。
そんな「ウコンの力」シリーズに、新しい商品が開発されたらしい。
*****************************************
「ウコンの力」のハウス食品から、朝に飲む「ウコンの力 モーニングレスキュー」が発売される。しかし、朝から一杯引っかける前に飲むのではないようだ。そのマーケティング的な狙いと課題を読み解いてみよう。
<ハウス「ウコンの力 モーニングレスキュー」9月27日から全国のコンビニエンスストア・駅売店で発売~「ウコンの力」シリーズに、ペットボトル入りのウコンウォーター新登場!~>(9月13日・同社ニュースリリース)
タイトルにもあるように、ドリンク剤タイプの小型ボトルではなく、500ml入りペットボトルで、悪酔い防止ではなく、リリースにあるように<シトラスミックス味(無果汁)のハイポトニック飲料なので、朝からおいしく素早く水分補給ができます>と、いわゆるスポーツドリンクタイプの飲料であることがわかる。
スポーツドリンクならば、大塚製薬の「ポカリスエット」や、日本コカ・コーラの「アクエリアス」の競合となるわけだが、特に水分吸収だけでなく、プラスアルファの機能性を訴求している点は「アクエリアス デイ スタート」が最大のライバルとなる。同商品は<カルシウムを1日の不足分170mg、ビタミンCを1日の必要分100mg配合>した<朝のコンディショニング飲料>(日本コカ・コーラ製品紹介Webサイトより)であるという。
飲料の「喉の渇きをうるおす・水分を補給する」という中核価値を、スポーツドリンクは「スムーズな吸収」という実体価値で実現する。それに何らかの付随機能が付け加えられているのは、もはや製品カテゴリーが成熟期に達していることを表している。
「ウコンの力 モーニングレスキュー」の付随機能は何だろうか。同社のリリース以上に日経新聞9月14日の消費面「New Face」の製品紹介の方が詳しい。
<肝機能を高めるとされる「クルクミン」や3種のビタミン、4種のミネラルを配合>とある。そして、飲用シーンとしては<お酒を飲んだ翌日に水分補給を兼ねて飲む場合に適している>とある。「アクエリアス デイ スタート」同様に、付随機能をウリにした高水分吸収・スポーツドリンクタイプの飲料であるが、ポジショニングを明確にしていることがわかる。
お酒を飲む前にはコンビニに寄って「ウコンの力」を飲むというのが、昨今、オトナの習慣になっているともいえるが、そもそも、なぜ、ウコンの力が夜の世界を離れて、朝の光の中に進出を企てたのであろうか。
マクロ的な大きな理由は、「飲酒機会の減少」だ。Political(政治・規制)の影響要因では、2002年6月に道路交通法が改正され、飲酒運転が厳罰化された。Economical(経済的)影響要因では、何より長引くデフレ不況に2008年秋の世界的な経済危機がとどめを刺した。筆者の事務所は新橋にあるが、さすがの飲兵衛の街でも客足が途絶えがちで、各店の客の争奪戦が激化している状況だ。Social(社会的)影響としては、経済的な理由以外にも、若年層の飲酒離れも昨今よく指摘されるとおりである。つまり、飲酒をする機会も、飲酒をする消費者数も減少の一途を辿っている状況は、基本的には酒が飲まれなければ必要とされない「ウコンの力」にとっても危機的状況であるのは間違いない。
そんなマクロ環境下で、競合環境はどうなっているのだろうか。Customer(市場の環境・顧客のニーズ)で考えれば、縮小する飲酒市場において、顧客を奪い合うCompetitor(競合)は、ロッテグループのロッテ健康産業が2009年11月からウコン飲料「飲みとも」の発売を開始した。タレント・みのもんたをキャラクターとして、ウコンの力の向こうを張る派手なCMを大量に投下して一気に消費者のアテンションを高めたことは記憶に新しい。さらに、ウコン系以外でも、味の素が得意のアミノ酸を使ったサプリメント「ノ・ミカタ」を、今年4月からドリンクタイプでも投入した。縮む市場に競合が参入し、コンビニ店頭では熾烈な戦いが繰り広げられることとなったのである。
限られた市場のパイ、ターゲット顧客を獲得するために、ハウス食品は自社の技術を使って新たなウコン飲料を製品(Product)化したわけであるが、前掲の日経の紹介にある<お酒を飲んだ翌日に水分補給を兼ねて飲む>という製品価値を訴求している。商品名に「レスキュー」とあるので、お酒を飲んだ翌朝に、ビミョーに、もしくは激しくやっちゃった体調を何とかしたいとポカリやアクエリアスに手を伸ばすターゲットニーズの取り込みを狙っていることが明らかだ。
そう考えると、価格(Price)の設定は絶妙だ。通常の500ml飲料は店頭販売で147円(税込み・自販機は150円)。それに対し、日経の記事では<オープン価格だが店頭想定は158円>とある。特保飲料であれば、花王「ヘルシア緑茶」が189円、サントリー「黒烏龍茶」が178円とプレミアムが上乗せされているのは珍しくない。それ以外で10円分のプレミアムは、例えば高濃度で酸素を溶かし込んでいるミネラルウォーターのアサヒ「スーパーH2O」や、コラーゲン入りヨーグルト飲料のサントリー「コラーゲンホワイト」などの例がある。つまり、特保のお墨付きではないが、何らかの期待効果を消費者が感じられる場合のプライシングだ。「レスキュー」して欲しい場合、10円程度のプレミアムは惜しくない。
広告(Promotion)は、リリースで<SMAPの中居正広さんを起用したテレビコマーシャルを投下><大いにアピールしてまいります>とある。既存の契約タレントを使って効率的なプロモーションを展開し、既存製品との関連を明確にして信頼感を高めることもできるだろう。
そうなると、最大の難所は販路・チャネル(Place)である。ハウス食品は飲料に関しては、1983年の発売以来、四半世紀を経たロングセラー商品である「六甲のおいしい水」を今年5月に53億円でアサヒ飲料に事業譲渡したばかりだ。縮小するミネラルウォーター市場と、他の飲料製品を扱っていないため事業効率が悪いという理由からだ。現在、「ウコンの力」がコンビニでは、いわゆる「エンド」といわれる棚に直角に据えられたコーナーに各種ドリンク剤などと共に置かれている。500mlペットボトル飲料だと、一般の飲料棚を確保するしかない。飲料棚の確保は熾烈な戦いだ。各飲料カテゴリーのトップブランドから優先されて置かれ、販売不振であればすぐに外される。特に新発売の次のロットの発注が各店舗オーナーからされることはまずない。それだけに、初期段階、そしてその後も棚の好位置を確保することが欠かせないのである。
コンビニ以上に重要になると思われるのが、もう一つの販路である駅売店だ。エキナカの売店・コンビニ・自販機は圧倒的に朝の利用が多いという。そのためJR東日本管内で自販機と売店で飲料を展開するJR東日本ウォータービジネス社は、伊藤園「朝の茶事」、アサヒ飲料「WONDA朝のカフェオレ」など、飲料メーカーと共同で朝の需要に対応した商品を開発している。そのエキナカで売店を中心としてどれだけ需要を確保できるかが大きな課題となるだろう。
人口減少、景気の低迷、消費者の行動や嗜好の変化。今日の日本の消費者市場は、様々な縮小要因が存在する。黙っていたら、自社の存在も縮小・消滅の渦に巻き込まれかねないのは誰しも同じ。自らの強みを活かして、どのように新たなチャンスを見つけていくのか。「ウコンの力 モーニングレスキュー」が、「ウコンの力」ブランドをレスキューできるのかに注目したい。
*****************************************
この商品、「健康・福祉」という面と、「経済・社会」という両面で、大変興味深い。
記事にある様に、500mLペットボトルサイズ規格での販売となると、既存のペッボトル飲料の「パイ」を奪って「置き場を確保」する必要がある。
この規格のヒット商品との激しい競争を強いられるのだが、果たして「勝算」があるのか…。
メーカー側の消費者ニーズの「読み」がヒットしているのか…。
そういった事が試されるという面で、注目したい。
私自身の「身体のケア」という面でも、興味はそそられる。
ウコンは、その主成分クルクミンに肝機能維持の効能は確かにあり、芳香性健胃として使用される生薬である。飲酒の前の方が効能を発揮しやすいという事も判っている。
しかし、私が学生当時は、その産地によって、成分濃度にも違いがあって、品質管理が大変難しいという問題があった。
しかしながら、ここまで庶民に浸透し、化学合成は十分可能な構造だから、その問題は特に気にしなくても良い時代になったのかもしれない。
実際、会食前に「ウコンの力」を飲むのと飲まないのでは、確かに違う。
「復帰」が早いし、変な酒の飲み方をして「悪酔い確実だな」と思っても、平気だったりする事もあるから不思議だ。
会食の機会の激減となると、「活躍の場」は失われてしまうのかもしれないが、ヒットした理由は、私自身が体験してよくわかった。
なにしろ、新しいもの好きだし、実際に試して、その効果たるやを体験しないと納得できないので、とにかくこの新商品にも飛びついてみようとは思う。
最近、「歳」を感じたのもあるのだが、会食の前には、必ずと言って良いほど、「ウコンの力」を1本飲んでいる。
そんな「ウコンの力」シリーズに、新しい商品が開発されたらしい。
*****************************************
「ウコンの力」のハウス食品から、朝に飲む「ウコンの力 モーニングレスキュー」が発売される。しかし、朝から一杯引っかける前に飲むのではないようだ。そのマーケティング的な狙いと課題を読み解いてみよう。
<ハウス「ウコンの力 モーニングレスキュー」9月27日から全国のコンビニエンスストア・駅売店で発売~「ウコンの力」シリーズに、ペットボトル入りのウコンウォーター新登場!~>(9月13日・同社ニュースリリース)
タイトルにもあるように、ドリンク剤タイプの小型ボトルではなく、500ml入りペットボトルで、悪酔い防止ではなく、リリースにあるように<シトラスミックス味(無果汁)のハイポトニック飲料なので、朝からおいしく素早く水分補給ができます>と、いわゆるスポーツドリンクタイプの飲料であることがわかる。
スポーツドリンクならば、大塚製薬の「ポカリスエット」や、日本コカ・コーラの「アクエリアス」の競合となるわけだが、特に水分吸収だけでなく、プラスアルファの機能性を訴求している点は「アクエリアス デイ スタート」が最大のライバルとなる。同商品は<カルシウムを1日の不足分170mg、ビタミンCを1日の必要分100mg配合>した<朝のコンディショニング飲料>(日本コカ・コーラ製品紹介Webサイトより)であるという。
飲料の「喉の渇きをうるおす・水分を補給する」という中核価値を、スポーツドリンクは「スムーズな吸収」という実体価値で実現する。それに何らかの付随機能が付け加えられているのは、もはや製品カテゴリーが成熟期に達していることを表している。
「ウコンの力 モーニングレスキュー」の付随機能は何だろうか。同社のリリース以上に日経新聞9月14日の消費面「New Face」の製品紹介の方が詳しい。
<肝機能を高めるとされる「クルクミン」や3種のビタミン、4種のミネラルを配合>とある。そして、飲用シーンとしては<お酒を飲んだ翌日に水分補給を兼ねて飲む場合に適している>とある。「アクエリアス デイ スタート」同様に、付随機能をウリにした高水分吸収・スポーツドリンクタイプの飲料であるが、ポジショニングを明確にしていることがわかる。
お酒を飲む前にはコンビニに寄って「ウコンの力」を飲むというのが、昨今、オトナの習慣になっているともいえるが、そもそも、なぜ、ウコンの力が夜の世界を離れて、朝の光の中に進出を企てたのであろうか。
マクロ的な大きな理由は、「飲酒機会の減少」だ。Political(政治・規制)の影響要因では、2002年6月に道路交通法が改正され、飲酒運転が厳罰化された。Economical(経済的)影響要因では、何より長引くデフレ不況に2008年秋の世界的な経済危機がとどめを刺した。筆者の事務所は新橋にあるが、さすがの飲兵衛の街でも客足が途絶えがちで、各店の客の争奪戦が激化している状況だ。Social(社会的)影響としては、経済的な理由以外にも、若年層の飲酒離れも昨今よく指摘されるとおりである。つまり、飲酒をする機会も、飲酒をする消費者数も減少の一途を辿っている状況は、基本的には酒が飲まれなければ必要とされない「ウコンの力」にとっても危機的状況であるのは間違いない。
そんなマクロ環境下で、競合環境はどうなっているのだろうか。Customer(市場の環境・顧客のニーズ)で考えれば、縮小する飲酒市場において、顧客を奪い合うCompetitor(競合)は、ロッテグループのロッテ健康産業が2009年11月からウコン飲料「飲みとも」の発売を開始した。タレント・みのもんたをキャラクターとして、ウコンの力の向こうを張る派手なCMを大量に投下して一気に消費者のアテンションを高めたことは記憶に新しい。さらに、ウコン系以外でも、味の素が得意のアミノ酸を使ったサプリメント「ノ・ミカタ」を、今年4月からドリンクタイプでも投入した。縮む市場に競合が参入し、コンビニ店頭では熾烈な戦いが繰り広げられることとなったのである。
限られた市場のパイ、ターゲット顧客を獲得するために、ハウス食品は自社の技術を使って新たなウコン飲料を製品(Product)化したわけであるが、前掲の日経の紹介にある<お酒を飲んだ翌日に水分補給を兼ねて飲む>という製品価値を訴求している。商品名に「レスキュー」とあるので、お酒を飲んだ翌朝に、ビミョーに、もしくは激しくやっちゃった体調を何とかしたいとポカリやアクエリアスに手を伸ばすターゲットニーズの取り込みを狙っていることが明らかだ。
そう考えると、価格(Price)の設定は絶妙だ。通常の500ml飲料は店頭販売で147円(税込み・自販機は150円)。それに対し、日経の記事では<オープン価格だが店頭想定は158円>とある。特保飲料であれば、花王「ヘルシア緑茶」が189円、サントリー「黒烏龍茶」が178円とプレミアムが上乗せされているのは珍しくない。それ以外で10円分のプレミアムは、例えば高濃度で酸素を溶かし込んでいるミネラルウォーターのアサヒ「スーパーH2O」や、コラーゲン入りヨーグルト飲料のサントリー「コラーゲンホワイト」などの例がある。つまり、特保のお墨付きではないが、何らかの期待効果を消費者が感じられる場合のプライシングだ。「レスキュー」して欲しい場合、10円程度のプレミアムは惜しくない。
広告(Promotion)は、リリースで<SMAPの中居正広さんを起用したテレビコマーシャルを投下><大いにアピールしてまいります>とある。既存の契約タレントを使って効率的なプロモーションを展開し、既存製品との関連を明確にして信頼感を高めることもできるだろう。
そうなると、最大の難所は販路・チャネル(Place)である。ハウス食品は飲料に関しては、1983年の発売以来、四半世紀を経たロングセラー商品である「六甲のおいしい水」を今年5月に53億円でアサヒ飲料に事業譲渡したばかりだ。縮小するミネラルウォーター市場と、他の飲料製品を扱っていないため事業効率が悪いという理由からだ。現在、「ウコンの力」がコンビニでは、いわゆる「エンド」といわれる棚に直角に据えられたコーナーに各種ドリンク剤などと共に置かれている。500mlペットボトル飲料だと、一般の飲料棚を確保するしかない。飲料棚の確保は熾烈な戦いだ。各飲料カテゴリーのトップブランドから優先されて置かれ、販売不振であればすぐに外される。特に新発売の次のロットの発注が各店舗オーナーからされることはまずない。それだけに、初期段階、そしてその後も棚の好位置を確保することが欠かせないのである。
コンビニ以上に重要になると思われるのが、もう一つの販路である駅売店だ。エキナカの売店・コンビニ・自販機は圧倒的に朝の利用が多いという。そのためJR東日本管内で自販機と売店で飲料を展開するJR東日本ウォータービジネス社は、伊藤園「朝の茶事」、アサヒ飲料「WONDA朝のカフェオレ」など、飲料メーカーと共同で朝の需要に対応した商品を開発している。そのエキナカで売店を中心としてどれだけ需要を確保できるかが大きな課題となるだろう。
人口減少、景気の低迷、消費者の行動や嗜好の変化。今日の日本の消費者市場は、様々な縮小要因が存在する。黙っていたら、自社の存在も縮小・消滅の渦に巻き込まれかねないのは誰しも同じ。自らの強みを活かして、どのように新たなチャンスを見つけていくのか。「ウコンの力 モーニングレスキュー」が、「ウコンの力」ブランドをレスキューできるのかに注目したい。
*****************************************
この商品、「健康・福祉」という面と、「経済・社会」という両面で、大変興味深い。
記事にある様に、500mLペットボトルサイズ規格での販売となると、既存のペッボトル飲料の「パイ」を奪って「置き場を確保」する必要がある。
この規格のヒット商品との激しい競争を強いられるのだが、果たして「勝算」があるのか…。
メーカー側の消費者ニーズの「読み」がヒットしているのか…。
そういった事が試されるという面で、注目したい。
私自身の「身体のケア」という面でも、興味はそそられる。
ウコンは、その主成分クルクミンに肝機能維持の効能は確かにあり、芳香性健胃として使用される生薬である。飲酒の前の方が効能を発揮しやすいという事も判っている。
しかし、私が学生当時は、その産地によって、成分濃度にも違いがあって、品質管理が大変難しいという問題があった。
しかしながら、ここまで庶民に浸透し、化学合成は十分可能な構造だから、その問題は特に気にしなくても良い時代になったのかもしれない。
実際、会食前に「ウコンの力」を飲むのと飲まないのでは、確かに違う。
「復帰」が早いし、変な酒の飲み方をして「悪酔い確実だな」と思っても、平気だったりする事もあるから不思議だ。
会食の機会の激減となると、「活躍の場」は失われてしまうのかもしれないが、ヒットした理由は、私自身が体験してよくわかった。
なにしろ、新しいもの好きだし、実際に試して、その効果たるやを体験しないと納得できないので、とにかくこの新商品にも飛びついてみようとは思う。