Being on the Road ~僕たちは旅の中で生きている~

日常の中にも旅があり、旅の中にも日常がある。僕たちは、いつも旅の途上。

中国縦断 / 南通・烟台

2023-05-27 15:01:37 | 旅行

2023年の記録

3年ぶりの中国出張、上海から再び北上し、大連へ向かう道中の記録。

 

 

何となく煤ぼけているのは、PM2.5の大気汚染のためではない、ただの窓ガラスの汚れ。中国では、航空機、列車、ビルの窓とも概して汚い。窓を掃除することなど滅多にないのだと思う。商品のパッケージも同様で、実質(中身)以外のことには無頓着なのだ。

 

 

上海から南通、烟台、大連へと北上。

別に偉くなった訳ではないが、現地法人のスタッフ、元部下が、リレー方式でアテンドしてくれたので、チケット手配など面倒もなく楽ちんだった。(笑)

 

 

上海市郊外(浦東新区、旧南匯区)の建設が途中でストップしたショッピングモール。鉄骨組みのまま放置されている。いずれ風化して、解体か?

 

 

上海から長江を渡った対岸にある南通新市街のホテルからの眺め。中国全土にある新市街の高層ホテルからの眺めは、ほぼこれと同じ。人民中国配給時代から連なる“画一性”が、中国の強みであり、薄っぺらさでもある。

 

 

烟台空港、実は、以前に1度来ている。泰安から上海に出張した帰り、雷雨のため上海虹橋空港の出発が遅延した。目的地は、烟台空港ではなく済南空港である。僕は済南空港に白タクを待たせていたので、「これ以上遅延したら帰っていいよ、済南でホテルを手配する程度は自分でできるから。」とドライバーの栗さんに伝えていた。それでも、3時間ほどの遅れで上海虹橋空港を離陸したので一安心。ところが、済南空港に近づいたころ、再び雷雨のため済南空港に着陸できず、烟台空港に着陸、機内で1時間ほど待たされて、目的地の済南空港へ到着したのは、定刻の8時間ほど遅れ。空港の到着ロビーには、ドライバーの栗さんがいたのには驚いた。とても、僕にはいつ着くともわからない客を8時間も待つことなどできない。敢えて書くと、彼らの時間間隔って、そんなものなのだ。

 

さらっと、書いたけれど、烟台空港着陸前の機内アナウンスで、烟台に着陸し、降りたければ、降りても良いようなことを伝えられたので、隣りに座っていた中国人のおじさんに「あんた、どーするの?」と訊ねると、「この飛行機は、済南行きだよ、何を寝ぼけているんだ」とあしらわれてしまった。ところが、飛行機が着陸し「烟台机場」のネオンを見たおじさんの焦りは、逆に笑えた。(似たような乗客が多数いた) ほとんどの乗客は機内に残り、再離陸を待つのだが、「腹が減った」と騒ぐ乗客がいて、2個目のハンバーガーが配られたのには、僕も助けられた。何を隠そう、僕も腹を空かしていたのである。

 

 

【やさしい経済のはなし】

仕事で中国の取引先を訪問しても、繁華街を歩いていても、中国景気の低迷をひしひしと感じる。肌感覚では、ピークの6~7割か。かつて、「アメリカがクシャミをすると、日本は風邪をひく」と言われていたが、今では、「中国が咳をすると、世界は酸素吸入器を用意しろ!」と言いたい。中国が計画経済体制というのは建前で、景気の浮き沈みが激しい。それは、経済が実需ではなく、投資主導で廻っているからじゃないかな。

 

ところで、僕が足繁く中国に行く理由は、ひと言に集約すると「安さに魅かれて」だ。(細かいことを書くと、必ずしもそんな単純な話ではない) 実際、日本で販売されている実用品の多くが、依然としてMade in China だ。「なぜ安いのか?」というと、かつては人件費が安かったからだが、今では、必ずしもそうではない。ひと言で説明すると、ものづくりのシステムが違うからだ。

 

例えば、樹脂製のふた、月産50個の作り方は、樹脂板を切ったり、削ったりして作ったパーツを接着して作る。それが、月産500個、1000個になりると、射出成型機で作るようになると、一気にコストは、10分の1、50分の1になる。日本と中国では、人口、市場規模が違い、実際にこのようなことが起きているのである。また、工作機械などの生産設備も自国で作り、それ自体が、既述したスケールメリットを活かした作り方をしているので、日本の生産設備の半値で購入できる。その結果、その設備を使って作ったものも、安くなるのである。

 

もう1つの違いは、職能の専門化だ。例えば、天ぷらの調理で、「衣をつけて揚げる」、「皿に盛りつける」の2工程を1人の職人がやっていると、店舗を2倍に拡大するとき、「揚げ」のできる職人をもう1人雇い、2倍の人件費が発生する。しかし、中国では、「盛りつけ」しかできない人を雇う。あたりまえのこととして、「揚げ」のできる職人より賃金は低いので、人件費は2倍にならず“安く”なる。しかし、客の入りが悪く、店舗を元の規模に戻そうとしても、「揚げ」のできる職人が、「盛りつけ」をやらないと、元の人件費に戻らないが、実際、職人は、誰でもできる「盛りつけ」をやりたがらない。オーナーは、店舗を閉じるか、さらに価格を下げて、元の規模を維持しようとするので、景気の下降時は、加速度的に景気が悪くなる。

 

まぁ、実際は、こんなに単純な話ではないので、リアルな現実を知っている人の突っ込みどころ満載の解説だが、やさしく説明すると、こんな感じなのだ。

 

 

旅は続く



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6 コメント

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Unknown (marurobo36)
2023-05-27 15:55:02
わかりやすい説明 ありがとうございます。
まさにそんな感じですよね。だから小さく出来ず、生産量も落とす事が出来なくなって
首絞めてしまう部分も有りますよね。

かなりの距離の移動 お疲れ様です。
おまけに 遅延と寄り道 大変でしたね。。。
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Unknown (lunta_november)
2023-05-27 17:37:29
中国の飛行機って問題があるとすぐに食べ物が出てくる気がします。
何か食べさせておけば客はおとなしくしている、って実際そうなんですかね。
国全体が貧しくなって食べるのに窮するようになったらまた革命が起きるのかしら。
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Unknown (Zhen)
2023-05-27 21:53:24
Maruさんへ

リアルな中国の製造現場て奮闘していらっしゃるMaru兄さんに同意いただき嬉しいです。
その辺の現実を理解することなしに日本の多能工化を中国に押しつける経営者には疑問を持ちますね。それでも、多勢に無勢、日系企業でこれを言うと袋叩きですが。(笑)

では、また。
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Unknown (Zhen)
2023-05-27 22:08:54
Luntaさんへ

確かに中国の人の食に対する拘りは、日本人の比じゃないですね。中国の工場で、社員食堂がダメだと離職率があがります。基本的に個人負担はないので、ワーカー向けには、美味しくて、肉が豊富ならばGoodです。

富裕層は、腕の良い料理人を雇えば解決しますが、庶民は、自身の腕をあげることで、美味しい食事にありつけるようします。だから中国から日本に来る人は、誰でも中華料理人として在留資格が得らます。僕のアクティブな友人は、中国の片田舎に行くと、自ら厨房に押し入り、料理しちゃいますし、日本製の炊飯器をクルマに常備していますよ。(笑)

では、また。
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Unknown (りくすけ)
2023-05-29 09:34:36
Zhen様へ。

お邪魔します。
やさしい経済のはなし、勉強になりました。
リアルな現実を長々と書き連ねるよりも、
例え話を交えて簡潔に面白く書くのは、
書き手のセンスと力量がいると考えます。
素晴らしい!

8時間待ったドライバーの栗さんのエピソードから、
「ゴルゴ13」初期の一幕を思い出しました。

中国統一戦線情報部なる組織から依頼をうけ、
ヨーロッパ山岳地を走る高速列車の車内にいる標的を、
スポーツカー乗って追いかけながら狙撃することに。
チャンスは1回、一瞬だけ。
無茶ぶりですがミッションインポッシブルを実現するため、
ゴルゴは依頼主と一緒に何百回も練習を重ねます。
その飽きることなく繰り返される過程で半ばあきれたように
『まったく中国人は世界一気が長い民族というのは本当だ。
 4000年の歴史は伊達じゃない』
といったニュアンスの台詞を言います。
それを読んだ僕は、そうか、中国の人は長い歴史に裏打ちされた時間感覚を持っているんだ!
などと思ったものです。

個人的な述懐、長文失礼しました。
では、また。
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Unknown (Zhen)
2023-05-29 20:55:30
りくすけさんへ

「やさしい経済のはなし」、お褒め頂き嬉しいです。

やはり時間感覚の違いって、ありますね。
中国で仕事をしていた時のボスが、「何世代にも亘り、朝、明るくなったら働き始め、暗くなったら仕事を終えてきた人たちに朝8時だとか8時半だとか・・・・言っても、そんなにキッチリ守る訳ないよ。」話していたのを思い出しました。

その一方で、上海ではタクシーやDiDiをすぐに捕まえられない、その後も交通渋滞。会食の時間に30分遅れは、完全に誤差範囲・・・。

では、また。
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