2005年の記録
北京オリンピック(2008年)以前の中国の記録を順不同でご紹介する「人民中国の残像」シリーズ。いずれもフィルムカメラで、1枚1枚丁寧にシャッターをきっている。
僕の住んでいた金都大酒店から工場や火車站(鉄道駅)と逆方向に紅旗大街を街はずれまで行ったところに蓋州鼓楼がある。
蓋州鼓楼は、明代の洪武時代に建てられたもので、周辺の古城(旧市街)を歩いていると、明代にタイムスリップしたのではないかと錯覚する。明代は1368年から1644年まで、日本だと室町時代から江戸時代前期に該当する。明代に電動輪タクが走っている訳ないので、あくまでも個人的なイメージの話である。
蓋州には、日本にもある店舗型の書店もあるが、地べたに本を並べて売っている露店の本屋もある。中国の識字率(95.1%)は、ユネスコ基準と比較するとかなり怪しい。字面の通り、自分と家族の名前、住所が書ければ、識字にカウントされる。
※識字率ユネスコ基準:日常生活で用いられる簡単で短い文章を理解して読み書きできる
蓋州のような片田舎にも「ドキッ!」とするようなポスターがある。
蓋州市内には、数えきれないほどの電動輪タクが走る。4輪のタクシーに乗るために路肩に立つと、瞬く間に4~5台の輪タクに囲まれてしまう。圧倒的な供給過剰、クルマと違って免許もいらない、車両を借りれば、誰でも即日に商売をはじめられるためだろう。市内一律3元。(当時のレート換算36円ほど)
中国の何処に行ってもウイグル人はいる。彼らは漢族と違って、陽気で人懐こく、撮影に応じてくれると言うより、「撮ってくれ、撮ってくれ」とポーズしてくれる。
街には露店が溢れている。飲食店も含め小綺麗な店は稀だが、僕が不便に思うことはなかった。中国的脂っこさに馴染めない日本人の健さんと一緒に夕食を摂る店は、金都大酒店前の海鮮火鍋店と決まっていた。
最低気温が氷点下になり、寒くなってきたが、ホテルの客室は暖かい。スチーム配管の全館暖房が整っているからだ。その熱源は、石炭である。ホテル裏には、ボイラ棟があり、トレーラーで大量の石炭が持ち込まれていた。
【回想録】
僕が中国の国有企業に駐在した目的は、納期管理である。当時の中国は、3年後の北京オリンピックに繋がる高度経済成長真っ只中。ハッキリ言って、「日本向けの面倒くさい仕事など、やっていられない」 というのが、現場の本音。集団公司トップが決めた合作事業も、その例外ではない。それ故、現場に潜って納期管理をすることが僕のミッションだった。
「日本からの支給部品の入荷が遅れる」といった噂が中国側に流れていた。噂ではなく、事実だったのだが、それを認めてしまうと、生産にブレーキが掛かってしまう。
「我々には、世界の〇〇(合作事業に参加している総合商社)がついている。何も心配することなく、日々の生産を続けてくれ!」
工程進捗会議の席上で、真顔で堂々と僕は言っていた、まるで中国人、日本人じゃできないよな。(笑)
それでも、遅延が確定する日が来た。「良かったなぁZhen」と声を掛けてくれたのは、中国側連絡員の国さんだった。嫌味ではない。文革世代の国さんの思考回路では、「Zhenのミッションは、納期遵守である。⇒納期遅延となれば、責任を問われる。⇒日本からの支給部品の遅延が、生産遅延の原因である。⇒納期遵守の責任から解放される。」である。中国の国有企業では、通用するロジックだが、日本企業では通用しない。支給部品の納入遅延の影響を工程やり繰りでミニマム化しようと四苦八苦する僕を見た国さんは、「理解できない!」とばかりに首を傾げていた。
【Just Now】
東電管内の電力需給逼迫、どうにか最悪の事態は避けられそうだ。店舗も照明を一段落とし、家庭では使っていない照明を消している・・・・・。その話を大阪人の先輩に話すと、「大阪人が使っていない所の電気を消すのは、環境より電気代のそろばん勘定だよ。電力需給逼迫になったからって、急に使用量は落ちないんじゃないかな」 関東とは、ちょっと違う感じがする。関東の場合、純粋にブラックアウトを回避したい気持ちもあるが、一種の世間体、同調圧力みたいな空気を感じる。
電力需給逼迫のそもそもの原因は、カーボンニュートラルへの急激な傾斜だ。メインの石炭火力発電は罪みたいな風潮のため、設備更新を凍結したからだ。ゼロコロナ政策と同様、過激、急進な政策には、副作用がある。
酷暑の原因が地球温暖化で、その対策のために電力使用量(二酸化炭素発生量)を抑制しなくてはならないが、エアコンは迷わず使いましょう、というのは、苦渋の施策だ。電力消費量は、照明よりエアコンの方が圧倒的に大きいだろうな。半導体が不足して半導体製造装置が製造できず、半導体不足が解消しないのと、何だか似てきた。ヤレヤレ、である。
旅は続く
お邪魔します。
たとえ錯覚でも、明代への時間旅行が味わえるほどの旧市街。
歴史の重み、降り積もった「膨大な時の量」が窺えます。
写真を拝見していても伝わるくらいですから、
そこに身を置いたらさぞや、でしょうね。
もう今は、この光景はLost Chinaなのでしょうか?
だとすれば、ますます貴重な記録だと思います。
国有企業でのやり取りを拝読し、
小説「大地の子」を思い出しました。
文革後間もない日中共同一大プロジェクト、
製鉄所建設をめぐる日中双方のすれ違い。
プロジェクトを政争の具にする中国首脳の内紛。
翻弄される現場責任者たち---。
詳細はうろ覚えですが、そんな場面があったように思います。
Zhenさんの納期管理ミッション、
さぞインポッシブルな側面があったのではと推測します。
電力需給ひっ迫、
気象的な要因だけじゃなく、電力インフラの構造的要因も。
おっしゃる通りですね。
地球温暖化に歯止めをかけるのは避けられない流れ。
一方、人類が創り出した温暖化へ向かう流れは、
生半可ではない。
そんなところでしょうか。
では、また。
蓋州の旧市街は、2010年に再訪していますが、その時は、2005年当時とあまり変わっていませんでしたね。
2019年の写真をネットで見つけましたが、旧市街のそのものは変わってないようでしたが、猥雑さがなく浄化された感じがしました。
国有企業での経験は、何ものにも代えがたい僕の宝になっています。異なる組織に属しながらも毎日同じ場所で、1つのプロジェクトを遂行するのですから人間対人間の激しい交流があった訳です。
地球温暖化は、CO2排出だけが理由ではなく、地球の周期的変化だと言う人もいます。しかし、理由は何であれ、温暖化が進み、エアコンなしでは、生命を維持できなくなりつつあるということ。そして、空気を冷やすのは、今のところ間接的にCO2を排出するしかないってことですね。
では、また。
どうしようもない 俺のせいじゃない。。。
そんな考え方ですね。
そこで 思考回路が止まってしまうので 厄介ですよねぇ~
電気が足りない となれば みんなで協力する日本のやり方
素晴らしいとは思いますが、それに甘え過ぎている気もします。
コッチは、平気で、足りなくなりそうなら供給ストップされますが・・・
文革のときは、組織の目的よりも自身の保身が優先、そうしないと抹殺されちゃうのだからしょうがないですね。
Maruさんもご存知のように中国では、子供の面倒は祖父母がみるケースが多い。つまり文革世代の祖父母に育てられた子供が、すでに社会にでているってことですね。どのように文革的発想が伝播しているのでしょうか。Maruさんの目か見て、どうなのでしょうか?
中国の電力供給は、国有企業ですから、石炭の消費を減らせ、CO2排出量を減らせ、と指示されれば、その結果、停電になることなど二の次ですよね。ともかく指示を守ること、視野を狭くしないと出世できませんから。
では、また。