<管理人より>
「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」より企画情報をいただいてご紹介した
「12.2シンポジウム——ICANのノーベル平和賞授賞式を前に——」の参加報告を、東京カズちゃんさんからご寄稿いただきました。以下にご紹介いたします。
【参加報告】12/2「パネルディスカッション “核兵器なくせ”にノーベル平和賞~世界を動かした被爆者の声と若い力をさらに~」
12/2(土)午後、「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」の主催するパネルディスカッション「"核兵器なくせ"にノーベル平和賞」へ参加した。
80人の参加で会場は熱気にあふれていた。年配者だけでなく、若い人もそれなりにいたのがよかった。
パネリストは川崎哲氏(ICAN国際運営委員、ピースボード共同代表)、直野章子氏(広島市立大学広島平和研究所教授)、木戸季市氏(日本原水爆被害者団体協議会事務局長)の3人で、最初にそれぞれ約15分ずつ発言をいただいた。主な発言は下記の通り。
川崎哲氏(ICAN国際運営委員、ピースボード共同代表)
・ICANのノーベル平和賞の受賞は被爆者が運動を切り拓いてきたことによるものだ。これは終着点ではなく、「ここから始めよう」というスタートに過ぎない。
・ピースボードもICANの構成団体の一つで、2008年から
「おりづるプロジェクト」で170人もの被爆者に乗船してもらっている。行く先々で現地の様々な人に話をしてもらうが、ベトナムでは枯葉剤の被害者に会ったりする。ただ、日本の被爆者の話を聞いてもらうだけでなく、お互いに何かを共有する運動にしていく必要がある。
・核兵器禁止条約に日本政府は反対しているが、2つの矛盾がある。1つは政府と被爆者の立場が対立していること。もう1つは国連での高校生のスピーチに横槍を入れたのは中国だった。日本が戦争中の加害者としての面に触れずに、原爆などの"被害者顔"を強調し過ぎていると考えている。日本はこれらを克服していかないといけない。
直野章子氏(広島市立大学広島平和研究所教授)
・私は米国に10年滞在していた。当時、
スミソニアンの展示問題が起こった。
・ICANの受賞は被爆者との共同受賞である。「あなたをヒバクシャにしたくない」という想いが動かした面がある。でも、被爆者はその体験を語るのが当たり前と思ってはいけない。地獄を見たというが実際はそれを超える惨状だったはずで、それは突然フラッシュバックやトラウマとして現れたりもする…。その体験について被爆者は敢えて語ることを選んだというべきだ。
・原爆の加害者は米国だったが、日本政府は戦争被害について受認論を求めてきた。その中で被爆者の運動は補償を求める形で戦争責任の追及を60年も続けてきたとも言える。
木戸季市氏(日本原水爆被害者団体協議会事務局長)
・私は長崎市の南の路上にて被爆した。自分が被爆者と知ったのは1952年になってからだ。「自分が被爆者だと語るな」と諭された。結婚などで差別されるから。
・日独で戦争被害の考え方が違う。日本は国と身分関係等があった人とその遺族だけを国家補償する。ドイツは軍人、市民、国籍に関係なく、すべての被害者に補償する。
・核戦争をさせない仕組みを作ることが、"自らを救う"ことになると思っている。
≪会場からの発言を受けて≫
Q: 影響力のある発言場所はどこか?
A 川崎氏:
12/10の受賞式で被爆者のサーロー・説子さんのスピーチはインパクトがあるかと思う。また、社会的な地位のある人が発言することで、こんなことを話してもいいんだという雰囲気が生まれる。例:LGBTや、MeToo(セクハラ告発)など。
Q: 現政権の政策をどう変えていくのか?
A 川崎氏:
核兵器禁止条約に日本政府が反対したこと等、まだまだ多くの国民に知られていない。「それはおかしい」という声が強まれば政府も無視できなくなる。ここに集まった人等はほんの一部、もっと多くの人へ拡がっていかないといけない。
A 直野氏:
ローカルで動くことも必要。地方自治体の首長が核禁条約へ賛成してくれることもある。
≪まとめ≫
木戸氏:
空襲被害者などを含めた戦争被害者補償法の検討を法曹関係者にしてもらいたい。また、若い人から茶話会など呼ばれれば被爆者は語りをしたい。
直野氏:
核戦争を拒否する権利として私たちは核禁条約へ加入することを要求できるはずだ。
川崎氏:
12/10のイベントへ向けてお祝いアクションなどの取り組みは大事だ。日本で条約へ反対しているのは政府だけで、被爆者や市民は12/10の受賞はよかったねという声を大きくしていきたい。若い人が原爆資料館などのガイドとして案内できる層を増やさないといけない。
ドイツではホロコーストを若い人が継承することに成功している。また、20年前にできた国際刑事裁判所にて核戦争は違法でその遂行者は戦争犯罪人とするよう新たに要求していくことも必要だ。
※写真は、東京カズちゃんさん撮影分を2点、K.Mさん撮影分を3点掲載しました。
※朝日新聞デジタル2017年12月2日23時36分配信の記事はこちら=
ICAN委員や被爆者ら集会 核禁条約反対「いいのか」
※
2015/12/19の「ヒロシマ・ナガサキを語り受け継ぐつどい」でも川崎哲さんに30分の報告をいただいています。
その時の記事はこちら です。