<S.Hさんより>
10月25日に行われた、安全保障法関連法に反対する学者の会主催のシンポジウムに参加しました。参加者は主催者発表で1300名。座席を追加しても立ち見が出る状況。また、会場に入れない人もいました。
安保法制が成立してから、私も少し運動から遠ざかっていたので、この会に行くのは正直少しおっくうでした。でも行って良かった。会場の熱さに、この夏のことを思い出しました。
SEALDsの学生の言葉は、なぜ胸を打つのだろうか?よく勉強して、知識に裏付けられたものだったり、自分や友達の直面している、時に困難な状況に根ざした実体験のこもった言葉だったりするからだと思う。私も、これからも学び続け、行動をしていきたいと思います。
以下、内容をご紹介します。
《基調報告とスピーチ》
●樋口陽一:“法の支配”は“法で支配”とは異なる。“法で支配”は人治国家。イギリスの裁判官のクックは王権に対抗した。専門知と市民知が支えあう関係を。我々は辱めを受けてはならぬ。「なめんなよ」。
●小林 節:大学で政治的発言をすることについて、自己規制がある(筆者注:立教大学でこの会の許可が下りなかったので、会場が法政大学になった)。学者は学問の知識で社会に貢献しなければならない。それが使命だ。
●SEALDs KANSAI 大澤茉実:この夏いろいろ変化した。自分の感覚や感情を頼りにすることが大切なのだとわかった。絶望というあたり前に慣れることは、もうやめる。安心して命をはぐくめるように。希望を語り、積み重ねることで、未来を作りたい。
●山口二郎:今回の運動の意味は、主体性のある能動的な市民が登場し、新しい政治文化が始まったこと。自由にとっての闘いの相手は、権力だけでなく、ヨコからの自由を放棄する社会の圧力もある。
●SEALDs TOUHOKU 久道:あまりこのようなことをしない東北地方だが、衆議院可決あたりから状況が変ってきた。東北でも活動の広がりやつながりができた。
●池内 了:軍学共同が近づいている。それとの闘い。軍事研究は秘密研究になる。学生の方が抵抗感が強い。大学も特定機密保護法の対象になる。“死の商人に大学が加担するのか”。我々の監視が必要。科学者の社会的責任・義務。
●SEALDs RYUKYU 豊島:今年の夏から政治に向き合い始めた。“民主主義ってなんだ”、“これだ!”を原発や基地問題でもやっていきたい。
●栗原 彬:戦後の人類史的な遺産として挙げられるのは、国連、EU、そして日本国憲法(特に9条)
●山岸良太:今回は、学者と弁護士が連帯した。言論統制「弾圧の民営化」が懸念。
●橋源一郎(ビデオ):知と言葉で武装しなければならない。
《報告とシンポジウム》
●佐藤 学:主権者としての市民運動が出てきたのは日本で初めて。
●長谷部恭男:市民が自分で判断し、自分で行動した。政治へのアプローチには、3つの動機がある。1つめは道理。今回の法案は道理が通らない。2つめは損得。今回の法案は何もメリットがない。3つめは力。安保環境の悪化について具体的な脅威は示されていない。もし脅威があるとするならば、原発はすぐにやめるべきだ。岩波新書の「検証 アベイズム」によれば、首相は好き嫌いで判断している節がある。
●中野晃一:私は一番に父親として動いている。どんな社会を子供に残すのか?“96条の会”の盛り上がりは予想以上で、「とんでもないことが起きている!」と感じた。2014年1月に立憲デモクラシーの会を立ち上げた。名前には市民社会にアピールしたいという思いをこめた。集団的自衛権容認の閣議決定の後、他団体と連絡会を持った。それが、後々の運動に効いてきた。6月の憲法審査会から潮目が変った。一人で立ち上がるのは勇気がいる。“場”を作ることが大切。それに専心したのが良かった。学者は、この運動に市民が賛同してくれたことに感動したのではないか。
●小熊英二:あえて遠いところから意味を考えたい。世界的な大衆運動の共通性と日本の特殊性について。まず共通性について。グローバル化・情報化・市場の浸透。選挙制度も含め20世紀の制度が合わなくなってきた。従来の“右”・“左”の対立ではなくなった。社会の両極化が進んでいる。右派的なアイデンティティを持つ者がグローバリズムへの変革を望んでいる。日本では、加えて“平和・民主主義・憲法”の価値と秩序を守る派と、そうでない派に分かれている。これまでの集団単位での動員型の運動から、個人単位の自由参加型の運動へ。運動が選挙結果に結びつきにくいという問題は、世界的なもの。
●SEALDs 千葉泰真:政治学を学び、学者を目指している。政治を汚された思いがする。政治に参加して声を上げないのなら、それは、今の政治を認めたということ。
●SEALDs 奥田愛基:理想と現実の政治には隔たりがある。デモも最初は人が来ず、壇上にいる先生方も冷淡だった。誰も教えてくれないので、デモの仕方は在特会のホームぺージで学んだ。それから「ガキ見直した」「私(学者)は知の給食おばさんになる」という言葉をいただいた。大多数の学生は無関心だが、それでも変化している。ポジティブに自分に言い聞かせている。“できる人ができることをやる“。その方針で今までやってきた。想像することは大事。ダメかどうか分からない。何が起こるか分からない。
(以下、発言者不詳)
●“立憲主義”という言葉が広がった。“憲法が政治権力を拘束する”のが最低限。“近代立憲主義”においては、異なる価値観を持っていてもフェアに扱われるという、多元的な価値観の尊重も含んでいる。「立憲主義を守れ」という運動は、(あたりまえなので)世界では少ない。
●国会の院内と院外で連携できたことが、今回の運動の特徴だった。
●代々木派と非代々木派などの市民運動が統一した。学生の運動の形態は、進化を続けている。一番すごいのは、勇気・気概。インスピレーションをもらっている。福山氏など国会議員もそうなのでは。今すぐ結果が出なくても、自分のすることを行うことが大事。
●野党の統一の機運。
●学者の会は、世界に例がなく世界から注目されている。学生と学者の連携がアジアの民主主義を作るのでは。各国の運動は互いに連携しあっている。世界中でデモクラシーの担い手は悩んでいる。
●“学生”というブランドが東アジアにはある。例えば、フリーターがデモをしても、ここまで話題にはならなかったろう。マスメディアの受けが良い。知的サービス産業の労働者が、社会運動に参加してきた。
●「特に女子学生のメンバーへのネット上の攻撃がひどい」と相談を受け、教員として声明を出す場があった。大学の教員としてバックアップしたのは良かった。“未熟な存在”の方が目をひく。女子学生のスピーチには、“平和主義”が出てくる。学び続ける姿勢に感銘を受ける。
●国際的にも日本の解釈改憲は、立憲主義の危機であると話題になっている。
《行動提起》
12月6日 日比谷~銀座パレード
3月 防衛庁包囲行動
2000万人署名
SEALDsの奥田さんのスピーチもよかったのですが、最も参加者の感銘を呼んだのは、SEALDs KANSAIの大澤さんのスピーチだったと思います。(中野先生も「号泣した」とおっしゃっていました)
報告文書では、全然伝わらないと思いますので、ぜひ動画でご覧いただければと存じます。動画は以下で視聴できます。
「安全保障関連法に反対する学者の会」のHP
(管理人より)
写真は東京カズちゃんさんが撮影したものをいただきました。
大澤茉実さんのスピーチの文字起こし情報を見つけたのでご紹介→こちら