韓国での「出稼ぎ売春」摘発、安くて貧しい国・ニッポンの女性たちを待ち受ける過酷な未来
Yahooニュース2024/5/17(金) ダイヤモンド・オンライン ノンフィクションライター窪田順生
(🍓「サンダカン八番娼館」「からゆきさん」時代の3等国に逆戻り)
- 韓国で日本人が「出稼ぎ売春」、低賃金より問題なのは……
今、テレビでは盛んに「外国人観光客が称賛する日本人の○○」とか「世界が認めた日本の○○」という、“日本スゴイ”コンテンツが流れている。しかし、あと数年もしたら「日本の出稼ぎ売春に世界が困惑」なんて不名誉なニュースがあふれているかもしれない……。
アメリカ、オーストラリア当局などが頭を悩ます、日本人女性の「出稼ぎ売春問題」が、ついにお隣・韓国でも発覚したのである。
5月11日、韓国で日本人女性の組織売春が摘発された。売春をあっせんしていたサイトはその名もズバリ、「列島の少女たち」。サイトには、セーラー服姿の少女たちの萌え系イラストがイメージ画像として並んでいた。このグループで逮捕されたのは、韓国人の経営者ら4人と20歳代の日本人女性3人だが、ほかにも10人以上の日本人女性が売春をしたとみて現地警察が行方を追っているという。
……というニュースを聞いても「日本をおとしめるための反日フェイクニュースだ」とかなんとか言って、現実を直視できない人もいるだろう。日本人は韓国と複雑な歴史問題があるため、なにかとこの国を「下」に見る人が多いからだ。日本で韓国の売春組織が摘発されたという話ならいざ知らず、その「逆」などとても受け入れられないのである。
ただ、現実は厳しい。いくら目を背けても今や我々は、韓国から「下」に見られるところまで転落している。それは、この事件を報じた韓国メディアからも読み取れる。
《日本人女性が韓国に来て売春行為をすることは、最近の韓日の所得や為替レートと関連があるとみられる。日本の大卒新入社員の月給は22万円(約193万ウォン)で、韓国の最低賃金(206万ウォン)より少ない》(朝鮮日報日本語版、5月11日)
では、なぜ韓国の最低賃金はここまで高くなったのか。世界各国の政府や自治体が当たり前にやっている「物価上昇に伴って最低賃金を段階的に引き上げていく」ということをやっただけなのだ。
わかりやすいのは文在寅政権が2018年、19年と2年連続で最低賃金を16%、10%と大幅に引き上げたことだ。この時、筆者は『最低賃金を引き上げても日本経済が韓国の二の舞にならない理由』という記事で、日本も韓国のように最低賃金を引き上げていくべきだと提言をさせていただいたが、「サヨクは黙れ」「そんなに韓国がよければ日本から出ていけ」とボロカスに叩かれた。
なぜかというと、日本の著名なエコノミストやマスコミが、韓国の最低賃金引き上げを「愚策」とバッサリ切り捨てて、「小さな会社が大量に倒産をして、失業者が街にあふれて韓国経済はボロボロだ!」なんて、ふれまわっていたからだ。
しかし、あれから5年が経過して、ボロボロになったのは日本経済の方だった。
「新しい資本主義」「異次元の少子化対策」なんて勇ましいスローガンが掲げられるだけで、日本経済の低迷は止まらず、平均給与、1人あたりGDP(国内総生産)、労働生産性など次々と韓国経済に追い抜かれてしまった。
- 日本の女性が「豊かな国」へシフトするのは当たり前
ここまでわかりやすく国が衰退すれば、国内で売春をしている女性たちも、日本人相手から豊かな国の男性相手にシフトしていくというのは当然だろう。
実際、「列島の少女たち」の日本人女性たちが受け取った報酬は、最高で155万ウォン(約18万円)。一方、日本国内の風俗求人情報サイトでソープランドの募集要項を見てみると、「日給10万円以上可」「120分で4万円バッグ」などの文言が並んでいる。つまり、渡航・滞在費用を抜いても、韓国人男性相手のセックスワーカーの方がはるかに稼げる現実があるのだ。
実際、アメリカやオーストラリアで日本人女性に売春をあっせんしていたグループが4月に逮捕されたが、彼らが運営していた風俗求人サイト「国内海外出稼ぎシャルム」には、「アメリカ出稼ぎ 短期1週間100万円以上!!」「台湾出稼ぎ 月収1000万円以上」「カナダ出稼ぎ 月収500万以上!!」など、日本ではあり得ない好条件が並んでいた。
つまり、ホストに貢いで借金を背負った女性が風俗店に沈められる、というのはもはや過去の話で、2024年現在、こういった女性を「観光目的と偽って海外へ飛ばす」というのが、地下経済のスタンダードになりつつあるというワケだ。
そして、このような日本人女性の売春は、今後さらに世界に広がっていくおそれがある。ベトナムやタイなど成長著しいASEAN、あるいは結婚できない男性が数億人レベルでいて、日本人女性も人気が高い中国など、新興国でも日本人女性の組織売春が活発になっていく可能性があるのだ。
なぜそんなことが言えるのかというと、日本の賃金が上がる見込みがないからだ。
- 賃金は上がらない!海外に行く「出稼ぎ女性」も増える未来
エコノミストやマスコミは「この夏くらいから賃上げ効果が波及」と盛んにふれまわっているが、これはかなり怪しい。「過去最高の賃上げ幅」とバカ騒ぎしている根拠は、今年の「春闘」の結果だが、実は日本企業の99.7%、350万社は中小企業で日本人の7割もここで働いている。
つまり、大多数の日本人は労働組合も春闘などと無縁の賃金体系で働いているのだ。
「春闘で賃上げムードが高まれば、労組のない中小企業も経営者が自発的に賃上げをしていくのだ」とかいうへりくつもあるが、これも冷静に考えるとかなりおかしな話だ。
日本の労働組合は、現在2万2789組合で、ほとんどは大企業で、「従業員29人以下」になると21組合しかない(2023年労働組合基礎調査)。マスコミやエコノミストは、この21組合の春闘で大幅な賃上げがあったので、「中小企業にも賃上げが波及!」と騒いでいるのだが、先ほど申し上げたように、中小企業は350万社だ。アメリカの爆撃機に竹やりで挑んだ戦時中の精神論を思わせる、あまりにぶっ飛んだロジックだ。
では、350万社の中小企業を賃上げするためには本来、何をすべきかというと、世界では平等にボトムアップをするのが主流だ。つまり、最低賃金の引き上げだ。
しかし、ご存じのように日本では、これは難しい。「最低賃金の前に消費税をゼロにしろ」とか、いまだに「最低賃金を引き上げたら韓国のように経済がボロボロになる」と騒ぐ人が多いということもあるが、一番のネックは「政治」である。
最低賃金の引き上げに後ろ向きな中小企業経営者の業界団体「日本商工会議所」は、自民党の有力支持団体で、献金はもちろんのこと、全国ネットワークで弱い自民候補者の選挙を支えてやっている。つまり、日本の労働者がいくら低賃金で苦しもうと、こうした団体に支えられている自民党政権が続いていく限り、他国のような勢いで最低賃金の引き上げは行われないのだ。
これは詰将棋にたとえれば、完全に「詰み」という状態だ。だから、韓国にも抜かれる。これからは台湾やASEANにも抜かれる。それでも日本は春闘による大企業賃上げと、バラマキでごまかしながら「安いニッポン」を継続していくしかない。それは、海外で売春をする日本人女性も雪だるま式に増えていくということでもある。
- 「売春」していない日本人女性が海外で差別される可能性
では、そういうシビアな現実を踏まえて、これからの日本でどんな問題が起きていくのかを考えていきたい。まず、我々が覚悟をしなくてはいけないのは、日本人女性への差別と身の危険だ。
既にアメリカ本土やハワイで日本人女性が入国を断られるというケースが増えている。観光目的でやってきたのに、売春が目的ではないかと疑われて、税関職員から侮辱的な質問もされた人もいる。
日本人女性による「出稼ぎ売春」が増えていけば当然、このような偏見も強まっていくので、普通に観光をしているだけなのに「日本人娼婦だろ?いくら?」なんて声をかけられてしまうこともあるだろう。
また、世界の中では宗教や秩序維持の観点から、セックスワーカーを汚らわしい人々だとさげすむだけではなく、どんなひどい仕打ちをしてもいい存在だと迫害するような国もある。知識不足からそういう国で売春をして、犯罪やトラブルに巻き込まれる日本人女性も出てくるだろう。
そして、日本という国として直面するのは、他国による「反日キャンペーン」への利用だ。
中国や韓国、北朝鮮の政治家は、内政問題への国民の目を逸らさせるためにも、定期的に反日感情を扇動する必要がある。「歴史問題」はその代表的なものだが、これからは「日本人女性の売春」も攻撃材料にされるおそれがある。
と言っても、叩くのは売春をする日本人女性ではない。彼女たちを搾取して売春させるように追いやる「日本人男性」や、日本社会だ。
海外で「出稼ぎ売春」をする日本人女性の動機はさまざまで、「夢のためにお金をためる」「生活が苦しいのでバイト」という人もいる。しかし、やはり多いのは「ホストに貢いで莫大な借金を抱えたので返済のため」というパターンだ。
- ホストクラブやアダルトビデオへの注目が「反日」につながる!?
このような「ホストにハマって風俗で働く女性」は実は今、中国や韓国でも注目を集めている。
実は近年、中国や韓国の女性の間でも「日本のホストクラブ」の人気が高まっている関係で、ホストに貢ぐために多くの男性から金をだまし取った「頂き女子りりちゃん」事件が、これらの国でも大きく報じられた。23年末には、中国人女性がホストに金をだまし取られたとSNSに投稿をして、中国で大きな話題にもなった。
つまり、中国や韓国では「海外で売春する日本人女性=ホストにハマって借金を背負った女性=性的搾取された被害者」というイメージが定着しつつあるのだ。これを反日キャンペーンに利用しない手はないだろう。
実際、同じく一部から「女性を性的搾取している」と批判のある日本のアダルトビデオ(AV)に関しては、既にそういうイメージの訴求が始まっている。
実は韓国で「列島の少女たち」が摘発される少し前、日本のAV女優が参加することで話題になっていた「アダルトフェスティバル(2024 KXF The Fashion)」の開催が中止された。
女性団体が「性売買を擁護する文化を拡散させる」と強く反対したことを受けて、ソウル市などの自治体が続々とイベント開催不許可あるいは禁止の意向を表明したからだ。その中で「日本の性的搾取」がやり玉に挙げられている。
《坡州市のキム・ギョンイル市長は5日、イベント禁止の意向を明らかした文書で、「日本のAVは女性の身体を過度に露出させ、強制わいせつや強姦などを助長する動画を生産したりもしており、俳優が制作会社から金銭的に搾取され、身体・精神的虐待にあった事例もある」と指摘した。》(ハンギョレ、4月20日)
- 「性的搾取」議論は「慰安婦問題」を再燃できる格好のネタ
ここまで言えば、筆者が何を心配しているのかお気づきだろう。
今、海外で増えている「日本人女性の出稼ぎ売春」というのは、日本のアダルトビデオや「ホストにハマって風俗で働く女性」という国内外から「性的搾取の被害者」と批判されるものと容易に結びつけられる。
そして、この「性的搾取の被害者」というのは、中国系や韓国系の市民団体が、世界各国で続けている「慰安婦像設置キャンペーン」を蒸し返す格好のネタでもある。
もし筆者がこれらの国で反日キャンペーンを仕掛ける側だったら、「出稼ぎ売春」をする日本人女性たちが摘発された時に、「日本の性的搾取の被害者を我が国が保護した」というストーリーを国内外に発信するだろう。そして、国際社会に対して、日本という国がいかに人権意識が低く、女性を虐げているのかということを吹聴して「過去を清算していないからだ」とか言って、慰安婦問題を再びフィーチャーする。
「日本の賃金を上げないとヤバいことになる」という主張をしていると、「確かに給料は安いけれど、物価も安いし、安全だし民度も高いのでこんな住みやすい国はない」なんて反論する人たちがいる。
ただ、それは「安いニッポン」の本当に恐ろしさをわかっていない。国民が貧しくなるだけではなく、あらゆる日本人が海外から安く買い叩かれることで、日本人の誇りや尊厳までが踏みにじられてしまうのだ。
テレビにあふれる「日本スゴイ」で現実逃避をしたい気持ちもわかるが、いい加減そろそろ「日本ヤバい」の現実と向き合った方がいい。