多治見市モザイクタイルミュージアム。岐阜県多治見市笠原町。
2024年3月29日(金)。
土岐市美濃陶磁歴史館、可児市荒川豊蔵資料館を見学後、名古屋方面へ戻り、多治見市モザイクタイルミュージアムへ向かい、本日最後の見学地とした。
3年ほど前に知人から同館の写真を見せられて面白いと思った。調べたら、藤森照信の建築作品だったのは迂闊だった。多治見は自宅から車で1時間ほどなので、近隣の施設と併せて、日帰りや東濃周遊を企画してみたが実行に至らなかった。
15時30分ごろに到着後、外側を一周して外観を眺め、1階からエレベーターに乗り4階、階段を下って3階、2階の順に見て回った。
入口から外側広場へ。
入口広場から。トイレ棟。
藤森照信といえば、1980年代から日本近代建築史の学者として有名で、『日本の近代建築』(岩波新書、1993年)などの著作も読んできた。赤瀬川源平などとトマソン建築・看板建築などを見て回る建築探偵団の活動も話題になった。1991年には、諏訪大社の社家トップである神長官(じんちょうかん)を世襲してきた守矢(もりや)氏の史料を展示する神長官守矢史料館(じんちょうかん・もりやしりょうかん)を長野県茅野市に設計建築して建築家としてデビューし、自邸(タンポポハウス)などの建築作品を以後設計している。
2007年ごろに初めて神長官守矢史料館を見学し、2018年に滋賀県を周遊したさいに、バウムクーヘンなど和洋菓子を扱うたねやグループの施設「ラ コリーナ近江八幡」を見学した。木や草などをモチーフにした外観は、縄文様式、ガウディ、アールヌーボーなどの曲線美的な要素、植物の持つ生命エネルギー感を含んでおり、2007年ニュージーランド旅行時に見たホビットハウスにも似ている。作品群は、安藤忠雄よりも面白く、将来は重要文化財に指定されるだろう。
実際にタイルミュージアムを見てみると、屋根全般に草がなくて想像以下だったが、フォルムとしては面白かった。タイルミュージアムとしては愛知県常滑市にINAXミュージアムなどがあるし、モザイクタイルというならば、ローマ文化の遺品から紹介してほしかったので物足りない面はある。
多治見市モザイクタイルミュージアムは、旧笠原町役場跡地に2016年6月に開館した。最盛期の旧土岐郡笠原町には100以上のタイル工場が存在し、2018年時点でも生産量・シェアともに日本一である。タイルコレクションを中心に、地域で培われてきたタイルの情報や技術を発信する。
鉄筋コンクリート造4階建のミュージアムの設計は自然素材を取り入れた建築が特徴の藤森照信で、タイルの原料を掘り出す採土場をモチーフにしている。藤森は「街の中には土を採る場所がポコポコあり、それをイメージして外壁に土を塗り、タイルをはめ込んだ」としている。
藤森照信 建通新聞. 2019年11月14日
「美術館のテーマとなるモザイクタイルをどう建築として表現するかが難題だった。外壁にただ一面に貼ると普通の建物と化すし、かといってガウディのように造形的にやるわけにもいかない。そこで思いついたのは、タイルの原料である粘土と合わせて表現する方法だった。
現地を訪れるとそこここに、“土取り場”があり、粘土を含んだ土の崖がムキ出し、崖の上には赤松の木が顔を見せている。この光景を外観に使い、土を塗った壁の中に点々とタイルをはめ込んだ。
主要な展示品となるのは長年にわたって収集されてきた歴史的なモザイクタイルで、これらも土と組にして見せることにした。具体的には、土のトンネルを一階から四階まで通り抜けると、突如、大きな穴から外光の入る展示室が開け、そこには色とりどりのタイル絵やタイル製品が所狭ましと姿を現す。加えて、私が作り方を考案した“タイルのカーテン”もキラキラと輝いている。」
「なぜか、ふしぎな、うつくしさ。
施釉磁器モザイクタイル発祥の地にして、全国一の生産量を誇る多治見市笠原町に誕生したモザイクタイルミュージアムは、タイルについての情報が何でも揃い、新たな可能性を生み出すミュージアムです。
設計は、独創的な建築で世界的な評価の高い建築家、藤森照信氏。タイルの原料を掘り出す「粘土山」を思わせる外観は、地場産業のシンボルとして、なつかしいのに新鮮な、不思議な印象を与えます。
タイルは、単調な壁や床を彩り、楽しい景色を創り出すことで、ひとやまちを元気にします。その魅力を知っていただくために、膨大なタイルのコレクションを基盤に、この地域で培われてきたタイルの情報や知識、技術を発信。
さらに、訪れた方々がタイルの楽しさに触れ、タイルを介して交流して、モザイクタイルのように大きな新しい絵を描いていける、そんなミュージアムを目指します。」(多治見市モザイクタイルミュージアム)
1階は、ミュージアムショップや体験工房。
4階は、半屋外構造の吹き抜け。壁面には「富士山」、「マリリン・モンロー」、「笠原の風景」などのモザイクタイル画が展示されている。
3階は、タイルの製造工程や歴史がわかる資料コーナー。
2階は、最新のタイル情報を紹介する産業振興コーナー。