前回の終わりに、帰納法を適用するに当たってカラスとカードでは違いがありそうだという話をしました。さらに他の対象について考えてみましょう。
「全ての銅片の電気伝導度はαである」という命題を考えてみます。αはいくつかの銅片で確認された電気伝導度の値です。ある銅片での測定値がαだとわかるたびに、この命題の確実性は高くなります。もしもある実験でα以外の値が出たら、反例が見つかったとしてこの命題は反証され・・・たりはしません!? 測定の間違いか、不純物の混入か、はたまた・・・、となります。
しかしこれがカラスの場合だと、1羽くらい黒くないものが見つかっても「例外もいたな」くらいに考えるだけです。
実は我々は次のような原理を暗黙のうちに仮定していると考えられます。
原理M) 同一種の物質は、どれも全く同じ性質を持つ
原理B) 同一種の生物は、どの個体もほぼ共通の性質を持つ
原理Bは「ほぼ共通の性質」というだけなので、多くの個体とは違う性質を持つ例外的な個体の存在も認めています。しかし原理Mでは例外は認めていません。また、生物ではなくても同じ様な物質で出来た同じ様な形の物体にも原理Bのような例外を、我々は認めています。
実は銅片の電気伝導度に例外が見つかったとしたら、ことは銅片の性質にとどまらず、あらゆる物質に我々が認めている原理Mというものがひっくりかえることになります。
さて「カラスの逆説-6-(前回記事)」で提起した、「黒いカラスが見つかるだけで、白い鳥を調べなくても命題-1の確からしさが増すのはなぜか?」という問いの答えの一部は、上記の原理Bにあると考えられます。これがカードに書かれた言葉だと、「黒くて裏にカラスと書かれたカードがいくら見つかっても、白いカードの裏にもカラスという言葉がある可能性は減りそうにない」という考えは妥当に思えます。その理由は、原理Bが成り立つのは生物が親のコピーだからだ、ということを我々が知っているからではないでしょうか。同一種の生物集団とはコピーの集団なので、体型や体色、習性など親から子へコピーされる属性は各個体でほぼ同一になる、という理由があるのです。カードに書かれた言葉には、そのような同一であるべき強い理由がありません。
我々が帰納法を適用する対象というのは、その集合の各要素が似たもの同士であるはずだという強い理由を背景知識として知っている集合に限られているのかも知れません。
次回はスタンダードなベイズ統計による解決案について、少し詳しく述べたいと思います。
「全ての銅片の電気伝導度はαである」という命題を考えてみます。αはいくつかの銅片で確認された電気伝導度の値です。ある銅片での測定値がαだとわかるたびに、この命題の確実性は高くなります。もしもある実験でα以外の値が出たら、反例が見つかったとしてこの命題は反証され・・・たりはしません!? 測定の間違いか、不純物の混入か、はたまた・・・、となります。
しかしこれがカラスの場合だと、1羽くらい黒くないものが見つかっても「例外もいたな」くらいに考えるだけです。
実は我々は次のような原理を暗黙のうちに仮定していると考えられます。
原理M) 同一種の物質は、どれも全く同じ性質を持つ
原理B) 同一種の生物は、どの個体もほぼ共通の性質を持つ
原理Bは「ほぼ共通の性質」というだけなので、多くの個体とは違う性質を持つ例外的な個体の存在も認めています。しかし原理Mでは例外は認めていません。また、生物ではなくても同じ様な物質で出来た同じ様な形の物体にも原理Bのような例外を、我々は認めています。
実は銅片の電気伝導度に例外が見つかったとしたら、ことは銅片の性質にとどまらず、あらゆる物質に我々が認めている原理Mというものがひっくりかえることになります。
さて「カラスの逆説-6-(前回記事)」で提起した、「黒いカラスが見つかるだけで、白い鳥を調べなくても命題-1の確からしさが増すのはなぜか?」という問いの答えの一部は、上記の原理Bにあると考えられます。これがカードに書かれた言葉だと、「黒くて裏にカラスと書かれたカードがいくら見つかっても、白いカードの裏にもカラスという言葉がある可能性は減りそうにない」という考えは妥当に思えます。その理由は、原理Bが成り立つのは生物が親のコピーだからだ、ということを我々が知っているからではないでしょうか。同一種の生物集団とはコピーの集団なので、体型や体色、習性など親から子へコピーされる属性は各個体でほぼ同一になる、という理由があるのです。カードに書かれた言葉には、そのような同一であるべき強い理由がありません。
我々が帰納法を適用する対象というのは、その集合の各要素が似たもの同士であるはずだという強い理由を背景知識として知っている集合に限られているのかも知れません。
次回はスタンダードなベイズ統計による解決案について、少し詳しく述べたいと思います。
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