前回書いたように数量表現では単位の正確さも大切ですが、何のなん倍とかなん分の1とかいう場合に基準値を明確にすることも大切です。
今回の福島原発事故では「通常の○倍」という表現が出回っていますが、こういう不明確な表現をしている記事は信頼性が低いと考えるべきです。一体「通常の値」とは何を指しているのでしょうか? そんなもの書いた人にしかわかりません。専門分野で文脈によりわかる場合もありますが、それはその道の専門家ならわかるのであって素人には全くわかりません。つまり「通常の○倍」では「通常値」の定義も同時に知らせない限り情報伝達にはなっていないのです。そして定義も併記するくらいなら、「通常」という言葉の所にその定義を入れれば済むことです。
例1. 3/13に女川原子力発電所(宮城県女川町、石巻市)で、原子力災害対策特別措置法で定められた通報義務のある基準値の約4倍に達する放射線量(21μSv/hr)を検出した件の報道
朝日
女川原発で4倍の放射線観測
東北電力女川原発(宮城県石巻市、女川町)で12日午後9時ごろ、施設周辺の放射線を観測しているモニタリングポスト6台すべてが通常の4倍以上の放射線を観測した。
毎日
東日本大震災:宮城・女川原発でも基準値4倍の放射線量
日経
女川原発敷地で放射線量一時上昇
原子力災害対策特別措置法による通報基準値(1時間当たり5マイクロシーベルト)を上回ったため、
例2. 週刊ダイヤモンドの広瀬隆の記事
http://diamond.jp/articles/-/11514?page=4
(引用開始、前略)しかしもうすでに、事故解析の原稿を書いている段階は過ぎたようだ。15日昼頃には、敷地内での放射能が通常の350万倍に達した。テレビでは、コメンテーターも政府もみな、微量、微量と言い続けた。ここまでくれば、みな、おそるべき犯罪者たちである。(以下略)(引用終)
350万倍がどういう数値か理解に苦しみましたが、どうも以下の計算のようです。
たぶんこの観測値は各報道がなされていた「午前10時22分に3号機付近で検出された400mSv/hr」*1)のことだと思うのですが、その350万分の1は0.11μSv/hrです。これは1年間(=24×365hr)、にして1mSvとなり、これは「一般公衆が1年間にさらされてよい放射線の限度」です。私が「通常の」と聞くと日常生活で浴びているはずの自然放射能のことをまず連想しますが、それは2.4mSv/年であり0.26μSv/hrとなります。
まあ年当たりと時間当たりを換算したことは立派ですが、私が前回書いた敢えてミスリーディングな計算に近いことをやってしまったようですね。
広瀬隆の記事は有力経済誌に掲載されたこともありグーグル検索でも上位に出てきますが、上記の他にも典型的な妄想的陰謀論式トンデモ推論*2)を使っていたりしていて非常に人心を惑わす記事だと言って良いでしょう。
やはりグーグル検索でも上位に出てくる以下の記事を見て冷静になりましょう。でも長いし読みづらいかも。
http://bravenewclimate.files.wordpress.com/2011/03/fukushim_explained_japanese_translation.pdf
http://blog.livedoor.jp/lunarmodule7/archives/2406950.html
もうひとつ冷静な意見の表明を紹介します。
生存表明、ぷろどおむ(2011/03/13)
疑似科学である創造論の批判で有名な「忘却からの帰還」のサイトで、
マグニチュード速報値ベースの回数推移や国外の反響色々が連続して掲載されています。この人、こんなこともできるんだ。
-------------
*1) FNNニュース、読売、毎日、日経、AoL Video
なお地震から逃れて女川原発に避難している人達もいらっしゃいます。
中国新聞
「不安よりも寒さ」女川原発に330人避難 (2011/3/17)
毎日
東日本大震災:女川原発に330人避難 東北電力受け入れ
*2) http://diamond.jp/articles/-/11514
(引用開始、前略)原発事故が進んだために、「史上最大の地震」にしなければならない人間たちが数値を引き上げたのだと思う。(以下略)(引用終)
気象庁の人々が東京電力や経済産業省の意向を受けてマグニチュード訂正したという推測ですよ(^_^)。それほど緊密な情報交換(裏取引・談合)ができてるくらいなら伝言ゲームの参加者が多すぎなどと批判されたりしないでしょうね。
今回の福島原発事故では「通常の○倍」という表現が出回っていますが、こういう不明確な表現をしている記事は信頼性が低いと考えるべきです。一体「通常の値」とは何を指しているのでしょうか? そんなもの書いた人にしかわかりません。専門分野で文脈によりわかる場合もありますが、それはその道の専門家ならわかるのであって素人には全くわかりません。つまり「通常の○倍」では「通常値」の定義も同時に知らせない限り情報伝達にはなっていないのです。そして定義も併記するくらいなら、「通常」という言葉の所にその定義を入れれば済むことです。
例1. 3/13に女川原子力発電所(宮城県女川町、石巻市)で、原子力災害対策特別措置法で定められた通報義務のある基準値の約4倍に達する放射線量(21μSv/hr)を検出した件の報道
朝日
女川原発で4倍の放射線観測
東北電力女川原発(宮城県石巻市、女川町)で12日午後9時ごろ、施設周辺の放射線を観測しているモニタリングポスト6台すべてが通常の4倍以上の放射線を観測した。
毎日
東日本大震災:宮城・女川原発でも基準値4倍の放射線量
日経
女川原発敷地で放射線量一時上昇
原子力災害対策特別措置法による通報基準値(1時間当たり5マイクロシーベルト)を上回ったため、
例2. 週刊ダイヤモンドの広瀬隆の記事
http://diamond.jp/articles/-/11514?page=4
(引用開始、前略)しかしもうすでに、事故解析の原稿を書いている段階は過ぎたようだ。15日昼頃には、敷地内での放射能が通常の350万倍に達した。テレビでは、コメンテーターも政府もみな、微量、微量と言い続けた。ここまでくれば、みな、おそるべき犯罪者たちである。(以下略)(引用終)
350万倍がどういう数値か理解に苦しみましたが、どうも以下の計算のようです。
たぶんこの観測値は各報道がなされていた「午前10時22分に3号機付近で検出された400mSv/hr」*1)のことだと思うのですが、その350万分の1は0.11μSv/hrです。これは1年間(=24×365hr)、にして1mSvとなり、これは「一般公衆が1年間にさらされてよい放射線の限度」です。私が「通常の」と聞くと日常生活で浴びているはずの自然放射能のことをまず連想しますが、それは2.4mSv/年であり0.26μSv/hrとなります。
まあ年当たりと時間当たりを換算したことは立派ですが、私が前回書いた敢えてミスリーディングな計算に近いことをやってしまったようですね。
広瀬隆の記事は有力経済誌に掲載されたこともありグーグル検索でも上位に出てきますが、上記の他にも典型的な妄想的陰謀論式トンデモ推論*2)を使っていたりしていて非常に人心を惑わす記事だと言って良いでしょう。
やはりグーグル検索でも上位に出てくる以下の記事を見て冷静になりましょう。でも長いし読みづらいかも。
http://bravenewclimate.files.wordpress.com/2011/03/fukushim_explained_japanese_translation.pdf
http://blog.livedoor.jp/lunarmodule7/archives/2406950.html
もうひとつ冷静な意見の表明を紹介します。
生存表明、ぷろどおむ(2011/03/13)
疑似科学である創造論の批判で有名な「忘却からの帰還」のサイトで、
マグニチュード速報値ベースの回数推移や国外の反響色々が連続して掲載されています。この人、こんなこともできるんだ。
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*1) FNNニュース、読売、毎日、日経、AoL Video
なお地震から逃れて女川原発に避難している人達もいらっしゃいます。
中国新聞
「不安よりも寒さ」女川原発に330人避難 (2011/3/17)
毎日
東日本大震災:女川原発に330人避難 東北電力受け入れ
*2) http://diamond.jp/articles/-/11514
(引用開始、前略)原発事故が進んだために、「史上最大の地震」にしなければならない人間たちが数値を引き上げたのだと思う。(以下略)(引用終)
気象庁の人々が東京電力や経済産業省の意向を受けてマグニチュード訂正したという推測ですよ(^_^)。それほど緊密な情報交換(裏取引・談合)ができてるくらいなら伝言ゲームの参加者が多すぎなどと批判されたりしないでしょうね。
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