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竜が変える歴史:『テメレア戦記(Temeraire)』より

2022-11-26 19:15:44 | 架空世界
 さて『テメレア戦記1気高き王家の翼 下』では有名なトラファルガーの海戦が起きるので、我々の歴史と同じなら1805年となるのですが、『テメレア戦記 4 象牙の帝国 上』の冒頭で年が明記されます。
 (p28)テメレアが卵から孵ったのは1805年、まだ去年の初めだった。

 まずは物語前後の実際の出来事をいくつか年表にしてみましょう。

1799/11/09 ナポレオン・ボナパルトがエジプト遠征から帰還し第一執政に就任。以後、フランス革命戦争ナポレオン戦争と呼ばれる。
1801/02/09 リュネヴィルの和約。オーストリアとフランス。
1802/03/25 アミアンの和約。イギリスとフランス。
1803/05/16 イギリスは和約を破棄し再度フランスへ宣戦した。
1804/05/28 ナポレオン帝政宣言、戴冠式(12/02)
1805/09/25 ウルム戦役(09/25-10/20)、オーストリア軍降伏
1805/10/21 トラファルガーの海戦。ネルソン提督は勝利するも戦死。
  『1.気高き王家の翼 下』11.ナポレオンの策謀、12.すさまじい咆哮とともに
1805/12/02 アウステルリッツの戦い;フランス軍が、ロシア・オーストリア連合軍を破った戦い
1806/10/14 イエナ・アウエルシュタットの戦い; フランス軍がプロシアを破った戦い。
  『3.黒雲の彼方へ 下』第二部、第三部

 結論から言うと、トラファルガーの海戦までは日付も含めて実際の歴史と同じ進行ですが、まずここでネルソン提督が大怪我をするも生き延びるという改変がなされます。そして、ほぼ海戦直後にナポレオンの反撃があり「ドーヴァーの戦い」と呼ばれることになります。まあ反撃というよりは・・・、海戦での英国の勝利が実は・・・。なにせ航空戦力がありますから・・・。

 そして『テメレア戦記 2 翡翠の玉座 上』から『テメレア戦記 3 黒雲の彼方へ 下』までの物語では、中国訪問から中央アジアを通ってプロシア(Prussia)/プロイセン(Preußen)まで旅するという大旅行になります。そこでテメレア達は上記のイエナ・アウエルシュタットの戦いに遭遇し参戦します。

 まずトラファルガーの海戦に至るまでですが、戦況を理解するためには次の地名の地理的位置を把握しておいた方が理解が深まります。
 ドーヴァー(Dover)カレー
 ブレストイギリス海峡の北方入り口。ブルターニュ半島(Bretagne)の突端。
 カディス:地中海の出口、スペイン。
 イエナ(Jena)
 ワルシャワ

 さて『テメレア戦記1気高き王家の翼 下』の記載を時系列で示します。
  10章p112: テメレアが生後8ヶ月足らず
  11章p127: 10月まであとわずか1日
  11章p130; ほぼ二週間で持ち帰った知らせ。
  11章p144; 待機の1週間が過ぎて。日曜の夜。
  11章p145; 4日後に海戦勝利の知らせ。日曜の朝、フランス艦隊が港から出て、翌日に戦い。
 ここで1805年のカレンダーを見てみると10月の日曜日は10/06/13,/20が該当し、史実と同じ10/21にトラファルガーの海戦があったことは間違いないでしょう。さらに「テメレアが生後8ヶ月足らず」だったのは9月になりますから、テメレアの孵化は1805年の1-2月になります。

 この後『テメレア戦記 2 翡翠の玉座 上』に入ります。
  01章p009: 11月とは思えぬ暖かな日
  02章p089: 出発を今月の23日に決定
 つまり、中国へ向けた出港が1805/11末です。

 それから『テメレア戦記 3 黒雲の彼方へ 下』までアジアでの大冒険が続き、旅の最後にイエナ・アウエルシュタットの戦いに遭遇しますが、この旅がほぼ1年間に及んだことが以下の記載からわかります。
 『テメレア戦記 4 象牙の帝国 上』01章p25-28:「1年の長きにわたって故国を離れ」「テメレアが卵から孵ったのは1805年、まだ去年の初めだった。」
 つまり、イエナ・アウエルシュタットの戦いが史実通りの1806/10/14だったとして矛盾はありません

 しかし『象牙の帝国』に至り、世界史を変える大事件が起こります。というか、実は密かに世界史が変わりつつあったことが明らかとなります。それもドラゴンの存在ゆえに。15章p171,181にさらっと書いてあるのですが、詳しくはネタバレになるのでいくつかのキーワードだけ書いておきましょう。
 アメリカのロアノーク植民地の完全なる消失(実史1587)。
 インド、マイソール惨禍(実史1767-1769)。
 あの伝説的な幾多の黄金都市。(実史は調べて見てね)。

 こうなるともはや「太陽の沈まない大英帝国」は実現しないのかも。あれっ、主人公達の国だし、敵役のナポレオンはフランスでは英雄でも、共和制から帝政に戻してしまった独裁者には違いないし、現時点では英国の方が領土を侵略されようとしている側だし、読者としては心情的には英国側に立ってしまうのですが・・。もしかしてこの先の歴史は、実史では世界征服にほぼ成功してしまった悪の帝国グレートブリテンが野望を潰されるという話になるのでしょうか?? 物語ではいかにも世界征服を企む悪の帝国がやりそうな恐ろしい悪巧みをしてますしねえ。うーむ、真の悪役は祖国だったなんて、なんというどんでん返し。本当にそうなるかどうかは、この先を読んでみてのお楽しみですね。

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