実りの秋は、ぼく達の愛情にも恵みがあるようだ
「きっと、このまま秋になってしまうのね」とイチ子さんが言ったのは、散歩の道すがら、球技場と植物園を隔てる小道から航空宇宙研究所裏のバス通りへと足を向けたときのことであった。 幾...
シナモンスティック
新しい朝が来る度、キャスルトンやチャモンの茶葉が薫る。 サンルームのテーブルにイチ子が片付け忘れ...
あたしには向いてないのかも
卒業アルバム制作委員のイチ子さんが、自分の写真を写しそびれているから撮って欲しいと、...
OH!!! 地中海ドリーム!
夏の終わりの風がイチ子のシャツには少し肌寒いのか
何年か前の晩夏。 陽が落ちはじめた旧イタリア大使館の桟橋の上。「冬の中禅寺湖に来たことある?」と水口イチ子。「子供ながらに凍結した華厳の滝を見上げた覚えはあるけど、冬に湖畔まで来...
そうか、土曜の夜か
そうか、土曜の夜か。 * きみのお気に入りのバーってある? ...
遅く起きた週末
『クロック・ムッシュ(Croque-monsieur)』や『クロック・マダム(Croque-madame)』、...
水口イチ子と焼け石に水の秋
秋色も次第に濃くなろうという十月最初の週末午後三時、母に頼まれて例大祭...
海の蜃気楼
金沢から能登半島の先端まで、随分長い時間をバスに揺られていたのを覚えている。 終点から岬を歩いて回ってたどり着いたのは、辺境のランプの宿 ...
ハッキリ思い出せる
部活帰り、銀杏坂の教会の鉄柵にトンボが停まっているのをイチ子さんが見つけて、「見て...」と指差す。 「トンボって昔ほど見なくなったよね。小学生の頃は、この辺にも沢山飛んで...