数ある『アッコちゃん』の傑作エピソードの中でも、筆者イチ推しの珠玉の一編が、「カン吉くんときよしこの夜」(64年12月号)である。
アッコとモコは、クリスマスになると、プレゼントを交換し合うことが毎年の決まり事になっていた。
アッコとモコは、お互いのプレゼントを買い求めに来た商店街で、サンタクロースの格好をした一人のおじいさんと出会う。
おじいさんは、年老いた身でありながら、おもちゃ屋さんでアルバイトをして生計を立て、父と母を幼くして亡くした孫娘の光子と二人、慎ましい生活を送っていた。
貧しさから、光子にプレゼントさえ贈れない。
光子と友達であるカン吉は、おじいさんと光子の、そんな苦渋の想いと複雑な内情を汲み取り、自らのセーターを毛玉の玉へとほどき、光子に差し出す。
おじいさんは、雪降る中、手袋をなくしたため、かじかんだ手で、お店の看板を持っていた。
カン吉は、そんなおじいさんの為に、セーターの毛玉で手袋を作ってあげるよう、光子に伝え、光子もカン吉の言う通り、その毛玉で手袋を編み、おじいさんにプレゼントする。
そんなやり取りを一部始終見ていたアッコとモコは、それぞれのプレゼントであるオルゴールと人形を光子に贈ることに決める。
そして、魔法の鏡で天使に姿を変えたアッコは、イブの夜、光子の家に現れ、二人からのプレゼントを光子に手渡す。
ピュアな感情をふわりと包み込むアッコとモコ、そして、カン吉の天真爛漫な優しさが、手に届くような幸福の奇跡を引き起こす感動のクリスマス・ファンタジー。
聖なる一夜を告げる教会の鐘の音と光瞬く神秘的な聖夜の雪景色を景観とする、審美眼に裏打ちされた精妙なシチュエーションも、感慨をそそる見所の一つだ。