文化遺産としての赤塚不二夫論 今明かされる赤塚ワールドの全貌

赤塚不二夫を文化遺産として遺すべく、赤塚ワールド全般について論及したブログです。主著「赤塚不二夫大先生を読む」ほか多数。

青年コミック誌掲載版『アッコちゃん』

2020-04-27 00:03:30 | 第3章

少女誌を媒体としていた『アッコちゃん』だが、青年コミック誌掲載版も一作のみだが、特別企画として描かれたことも、最後に補記しておく。

創刊間もない「ヤングマガジン」の「巨匠ゲストシリーズ」として、石ノ森章太郎、藤子不二雄Ⓐらとリレー形式で掲載された『ヤング版ひみつのアッコちゃん』(81年2号)という読み切りがそれだ。

この物語は、アッコが鬱屈したロストバージン願望を胸に秘めたる、ウブでネンネな高校三年生という設定で、モコと同じ男子生徒を好きになってしまったアッコの、友情と恋心の狭間で揺れ動く思春期特有のときめきと苦悩が、軽快なラブコメ・タッチで描かれている好短編ではあったが、扇情的な恋愛要素や、魔法のコンパクトを素材に日常から飛躍したマジカルなドラマ的展開といった刺激性が希薄で、セクシャルな興奮と過剰な恥態シーンに貫かれたアダルトコミックの過激さのみならず、『アッコちゃん』本来のファンシーな世界観からも背離するインプレッションを纏った、どっち付かずの後日談となってしまった。

雑誌媒体の相違から、ファンタジー&メルヘンに主眼を置いた従来の『アッコちゃん』の既定路線とは異質のドラマがいみじくも引き出された展開となったが、名だたる自作キャラを汚れ役も厭わないシチュエーションでゲスト出演させ、かつての栄光はいずこ、とばかりに露骨なドサ廻りを転々流浪させることも少なくなかった80年代の青年向け赤塚作品において、アドレセンス期を既に迎えた設定年齢にしてなお、アッコにだけ純情可憐な乙女を演じさせるその過保護ぶりは、赤塚にとって如何にアッコが我が愛娘の如く愛おしく、また他のどのキャラクターよりも大切で、想い出深いヒロインであったかを実証する根拠となって余りある、と言説を強めるのは、些か極論過ぎと言えようか……。